0-763 名前: 副作用は淫行で………(にられば) [sage] 投稿日: 2005/11/17(木) 22:59:57 ID:aMddC2Lc

未だ誰も来ていない。
屋上は直樹と茉理の二人だけだ。
「はい、直樹」
茉理から二段式の弁当箱を渡される。
そして直樹はご飯の入っている上の弁当箱を開けようと手を掛ける。
視線を感じ、ふと見ると茉理が照れた面持ちでこちらを見ている。
「ど、どうした茉理」
「なんでもない」
幸せ全開の笑顔で応える茉理。
「早くしないとまたあいつらが来るぞ」
そして直樹は弁当箱の蓋に手を掛けた。


昼休み、直樹と茉理は屋上で昼食を取る。
カフェテリアだと落ち着かないというのもあったがなるべく二人だけで過ごしたかったからだ。
だが、やはり何処でも邪魔者が現れるのが世の常である。
「あー、そのウィンナー美味しそう。ちょうだい、久住君」
「マツリンのお弁当かわいい」
「やめなよ、柚香」
「茉理ちゃん、私のお弁当とおかず取り変えっこしよう」
「精力付きそうなモノばかりね。今夜くらいは控えなさい」
「それよりプリンはありませんか?」
いつの間にか昼食時には見知った顔が周りに集まるようになっていたのだ。

「だー!!」
食事中の直樹がいきなり叫ぶ。
「どうしてお前らがここに居るんだ!」
「だって、久住君のお弁当何時も美味しそうなんだもん!」
「お前には二度と分けてやらん」
「そ、そんなぁ」
と打ち拉がれる美琴。
「次、保奈美!」
「私は茉理ちゃんのお料理の先生だもん」
「ただ単に冷やかしに来てるだけじゃ………」
「そんな事言うなら、なおくんにはノート見せてあげない」
「ゴメンナサイ」
やはり保奈美には敵わなかった。
その後、何事もなかったかのように茉理とおかずの交換を始める保奈美だった。
何となく嬉々として待っていた様な柚香。
「先輩とマツリンのバッカプルぶりを今後の参考に………」
「俺はお前と妹の監視だ」
「弘司、お前いたのか?」
「おいおい………」
いつも通りに呆れる天文部部長。
「あ、あの、その」
「あ〜〜ちひろちゃんはいいから………」
ある意味一番の被害者が一番申し訳なさそうだ。
「で先生は何用ですか?」
チラッと二人を見やる直樹。
「ふふふ、見たわよ久住」
「見てしまいました………お弁当のご飯」
赤面している結を尻目に恭子が直樹の耳元で囁く。
「ハートマーク」
その時、直樹は自分が不覚を取った事を知った。
まさか、敷き詰められた銀シャリの上に在ったハートマークの入ったそぼろご飯を見られるとは………
出来る限り早食いして皆が来ないうちに食べた筈だった。
久住直樹、まさに一生の不覚であった。