0-733 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2005/11/10(木) 07:06:23 ID:QUbn8e2I


ある日の放課後
直樹がカフェテリアに入り、いつもの天文席に座った。
まだ弘司と美琴は来ていないようだ。

「いらっしゃいませ」
食堂運営委員がオーダーを取りに来た。

だが、いつもならここで聞こえるのは茉理の声のはずなのだが、
そんなことを思い、委員の方に振り向くと、



…誰もいない?
「あれ?声は聞こえたんだが…?」
「久住くん、ひどいですよ〜」
と言われて視線を下へ…(この声…まさか…)

「こんにちは、久住くん」
「結先生!?」
「もう〜気づかないなんて酷いです〜」

担任であり天文部顧問でもある結先生だった。
どうやら水を持ってきたようだが…

「で、その格好は何ですか?」
「もちろん、カフェテリアの制服ですよ。」

と言いながら結先生は胸を張った…ように見えた。

「…結先生?」
「結先生、何やってるんですか?」
「あ、広瀬くん、天ヶ崎さん、いらっしゃい」



結先生の姿を見て、弘司と美琴も一瞬硬直したようだ。
それはそうだろう、自分のクラスの担任がウェイトレスの格好をしているんだから。

「えーとですね、渋垣さんにお願いしまして、1日体験と言う事で
カフェテリアで働くことになったんですよ。」
「茉理に?」

まだ1年の茉理にそんな権限があったのかと考えていると

「いらっしゃいませ〜」

他のテーブルへオーダーを届けた茉理がやってきた。

「結先生、オーダーはもう受けました?」
「いえ、まだこれからです。」
「もー直樹ってば何ぐずぐずしてるのよ、せっかく
結先生がオーダー取りに来たって言うのに」
「俺が悪いのか?」
「当たり前でしょ、結先生がここで働くのは今日だけなんだから、
時間がもったいないじゃない。」

「じゃあ俺はレモンティー」
「わたしは杏仁豆腐で」

両隣に座っている弘司と美琴が早々とオーダーを告げる。

「ほら直樹も」
「分かったよ、じゃコーヒーで」
「レモンティーと杏仁豆腐とコーヒーですね
少々お待ちくださいね」

オーダーを確認した結先生はとてとてと厨房へ駆けて行った。



「ところでなんであんな小さいウェイトレス服があるんだ?」

結先生が厨房に消えた後、近くにいた茉理に聞いた。

「ああ、あれ? 学園祭の時に希望する人に着てもらうためにあるの。
 小さい子供も来るから…」
「ということは小学生用かよ…さすが結先生…」
「あはは…そういうこと…」

話している内に結先生がトレイに注文したモノを乗せて戻ってきた。
…トレイが結先生には大きすぎて危なっかしいが見なかったことにする。

「お待たせしました〜よいしょっと。」
いつの間にか用意された台に上って
「はい、天ヶ崎さんには杏仁豆腐、広瀬くんはレモンティー、久住くんはコーヒーですね」
教師だからだろうか、意外とテキパキと配り終える。
「それでは、ごゆっくりどうぞ」
「ごゆっくり〜」
結先生に続いて茉理も次の仕事に向かっていった。

「あ、久住くん。 明日職員室に来てもらえますか? 渡したいものがありますので…」
「わかりました」

こちらに振り向いて告げた結先生に返事をして、天文部の面々の方に向き直った。

「結先生、かわいい〜〜」
「たしかに似合ってたね」
「しかしトレイがちょっと大きいのが気にな…」
  ガチャン! 「す、すいません〜」
「早速転んでるし…」

「またやってしまいました…」と言いながら他の委員に
良い子良い子されている結先生を視界の端に捉えながら
まったりとした放課後が過ぎていった…