0-608 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2005/10/07(金) 03:00:11 ID:17G201ND

「お姉ちゃん遅いねー」
雑誌を読んでいる麻衣がこういうのも無理はない、
現在の時刻は午前2時。
いつもだったらすでに達哉もベッドに入っている時間だ
「そうだな…まぁカレンさんがいるから大丈夫だろ」
姉であるさやかが、連絡無しで帰りが遅くなるときは
大体、仕事仲間であるカレンと飲んでいることが多い。
その事は達哉と麻衣もわかっているが、
それにしても今日は帰りが遅すぎる。
いくらカレンが頼りになるといっても、
不安は時間と共に増していくばかりだった。
「麻衣はもう寝てていいぞ、明日部活だろ?」
明日は日曜日だが、舞衣の所属する吹奏楽部は休日にも練習を行っている
「ん〜、そうする…ごめんね兄ちゃん、おやすみ」
「ん、おやすみ」
舞衣が部屋に戻ったのを確認すると、
(ふぅ)とため息をついて達哉はまたテレビを見始めた
(舞衣に余計な心配はかけさせたくないしな…)






麻衣が自分の部屋に戻ってから一時間程過ぎただろうか、
明日が休みだとはいえ、さすがにそろそろ寝なければと思い始めた頃、
タイミングよく玄関のチャイムの音がした。
「やれやれ、やっと帰ってきたのか…」
さすがに遅すぎるので二人(内一人泥酔者であろう)に
一言くらい注意でもしよう思い、達哉がドアを開けると、
そこ立っていたのはいつもの二人ではなく黒服だった
黒服は一礼とともに
「夜分申し訳ございません、御二人がかなり酔っていたのでとりあえずこちらにと…」
と言った、さらに、状況がつかめていない達也を尻目に
もう一人の黒服がその'二人'を連れてきた。
(二人?まさか…)
達哉の予感は的中した
一人はいつもどおり床に座り込んでいるさやかと
頬を赤く染め、うつむいているカレンだった



黒服は二人をリビングまで運び終えると
「それでは、失礼します」
と、言って、そそくさと去っていった
「さて…どうしようか……」
ソファですでに寝息を立てているさやかと
座り込んで、恥ずかしそうにしているカレン
達哉はとりあえず意識のありそうなカレンを
少し前までフィーナが暮らしていた部屋まで運ぶことにした。
一応、まだ布団は敷いてあったはずだ。
「カレンさん?起きてます?」
達也の問いかけに、カレンは首をコクンと縦に振った
「歩けますか?」
と言うと、首をフルフルと横に振る
その仕草が普段とのギャップを感じさせて
達哉は可愛らしさすら覚えた。
「じゃあ肩貸しますんで」
そういうとカレンは素直に達也に体を預けてきた
今夜はワインを飲んでいたのだろうか、カレンから
ワインのにおいと共に女性の甘い香りが達哉の鼻をつく
(うあ…なんか…変になるかも……)
達哉は必死に理性を保ちつつ、カレンを連れてリビングを出た。






最初のうちは上手く歩いていたカレンだったが、階段を上り終えたあたりで
とうとう完全に達哉に体を預ける形になってしまった。
「カレンさん?ちょっと…歩けないんですけど…?」
問いかけにカレンの反応は無い、こうなると運ぶ方法は限られてくるのだが…
(………誰も見てないしな)
達哉は俗に言うお姫様抱っこの形で
カレンをフィーナの部屋まで運んでいくことにした
(うわっ!軽っ!)
それが達哉がカレンを抱きかかえた第一印象だった
カレンの体は、普段の気丈なイメージからは考えられないほど
とても華奢だった。腰も力を入れれば折れてしまいそうなくらいである。
そして腕の中でカレンがもぞもぞと動くたび
やわらかい体が達也の腕や体にに当たり、カレンを一人の女性と強調する
(うあ…マジで変な気分になりそうだ……)
ワインのにおいと共に漂う甘い香り、そしてやわらかい体
この状況で、達哉の中のカレン・クラヴィウスは凛々しい武官ではなく
美しく、可愛らしい女性になっていた。