5b-360 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/08/09(木) 17:58:12 ID:QW+8sye8

 小さなお茶会が終わり、達哉は去った。
 ひとりになったとたんエステルの心臓が早鐘を打ち、頬が紅潮している。
(達哉……やっぱり、見てた)
 先ほどしてしまった大胆な行為を思い出し、脈拍がさらに跳ねあがる。ボン
という音が鳴ってもおかしくないほど赤面している。
 達哉の真ん前でお茶を味わっていて、脚を組みかえようとしたとき、どうし
たことか脚の上下は変わらずゆるんだだけになった。滑らかさの欠けた動きが、
スカートの裾をめくってしまった。
 脚の肌が露わになったのにすぐ気づいた。達哉の激しいまたたきにも気づい
た。気づいたけれど、気づかないふりをしていた。
 またたいた男の瞳は下へ、だらしない脚のあいだへ。露出した太ももよりも
先まで覗いていた。
 奥まで見られているのを意識して息を小さく呑んだが、努めて冷静にする。
 お茶を飲みながら達哉の目線は下に行って戻って、また下を向く。こっちは
知らぬふりを決めこんで、おしゃべりに興じる。しかし実際は、エステルだっ
て達哉以上にどきどきしていたのだ。
(達哉だって、私を見るだけでなくて……し、したいのよね)
 男がなにをしたいのか。エステルはちゃんと知っている。固く見られる司祭
様だって年頃の女の子。性に対する興味は人並みにある。いや、達哉に恋した
ことで、人並み以上に性への興味を持ってしまっている。
(ここを、見ていた……達哉が)
 ひとりになってもっと大胆に、スカートをたくしあげ、純白ショーツを露わ
にする。浅く腰かけ脚を左右に開き、恥ずかしい丘をせり出させた。
 ここまで見せたら、彼はどんな目をするだろう。思い返した視線をさらに熱
く想像しながら秘丘へ指を近づけ、陰阜の盛りあがりを撫でる。ショーツ越し
の弱々しい刺激でも、ピリッと鮮烈な電気が流れる。
(見ているだけなの、達哉? 男って、もっともっとしたいのでしょう。こ、
こんなふうに)
 悩ましげな息を吐きながら、細くしなやかな指でショーツをなぞりつづける。
「あふっ……ふ、ふうぅん」
 性感の高まりがそのまま色っぽい声になる。
 達哉と知りあうよりずっと前からエステルは、己れの法衣に刺さってくる男
の視線を意識していた。そのときは、イヤらしさにまみれた視線を心から軽蔑
していた。
 しかし達哉と出会い、好きになって、好きな男に見られる幸せを知った。見
られて、嬉しい。もっと私を、私だけを見てほしい。
 自慰を覚えたのも、達哉のせい。離れて想っているうちに体のほてりを意識
し、自然にまさぐったのがはじまり。今ではすっかり、肉体をまさぐるのが習
慣になり、たどたどしかった手遣いがスムーズになっている。
 達哉は時折り熱い視線を胸にぶつけてくる。女だけが持つふくらみに男の視
線が刺さったとき、甘い痺れが生まれてくる。
(……胸だって、見るだけじゃなくて)
 左手が法衣に沿って登り、形の良い丘を包む。
「んっ」
 悩ましい声をあげ、握ったりゆるめたりを繰りかえす。股布をいじる指の先
はカギのように曲がって、引っかくように刺激している。
 達哉と出会って変わりつつあるものの、エステルは男に甘えるのがまだまだ
下手。キスする関係になっても固さが抜けていない。しかしエステル本人には
自覚がないから、固い彼女に気後れして未だ積極的になれない達哉に不満を抱
いてしまう。
「はふっ!」
 指が肉丘のてっぺんからずれ、快楽の豆を引っかいた。あまりにも強烈な快
美パルスで身が痙攣し、淫らな自慰の時間が終了となる。
「……達哉」
 ゆっくりとまぶたを持ちあげる。誰にも見せたことのない、情感にうるんだ
瞳をきらめかせながらエステルはずっと想い人の像を追いかけていた。


(完)