6-499 名前: 1+1≠2(にられば) [sage] 投稿日: 2007/05/05(土) 01:45:31 ID:pQv9/Do6

直樹の背中は先程からタラタラと汗が垂れ流れている。
何時も通りの笑顔を向ける保奈美。
今現在、保健室に居るのは直樹、保奈美、文緒、三人の担任とこの部屋の主の計五人。
開け放たれた窓の外は暗闇に支配されている。
「ゴメンなさい、秋山さん」
そう言ったのは保奈美だった。
「え、え、で、でも………その………こちらこそゴメンなさい」
罪悪感でいっぱいの文緒は逆に保奈美に謝られたので困ってしまう。
「ごめんなさい、秋山さん」
「ごめんねぇ、秋山。こうなる事を承知で、久住の手伝いさせちゃたの」
俯きつつ誤る結に対し、あっけらかんと言い放つ恭子。
「本当にゴメンなさい。恭子に迫られたら断りきれなくて………」
「何よ。あんただって最終的には賛成したくせに………」
「………どうして私に言ってくれなかったんですか?」
保奈美が凸凹教師を見る。
「ん〜それを言われるとなんと答えていいのか………」
悩む恭子。
ただ悩んでいる振りをしているだけかもしれない。
「ただ、なんとなくってところかしら?」
「………………………」
「………………………」
「………………………」
「………………………」
直樹、保奈美、文緒のみならず結も呆れ顔で恭子を見つめる。
「や、やあねぇ………冗談だってばっ」
流石にばつが悪そうな恭子。
「秋山が久住の事、好きだなって分かったからよ」
「えっ」
今更ながらポッと赤くなる文緒。
「秋山さん………」
「ご、ゴメンなさい、藤枝さん………」
改めて反省する文緒。
(直樹、久住君との事はこれで終わりにしよう)
でもその時、今朝から気になっている事があったのを思い出す。
どうせ質問するなら今をおいて他には無いだろう。
「あの、久住君って藤枝さん以外の女の子達とも仲が良いの?
うちのクラスだと天ヶ崎さんでしょ。それから従姉妹の渋垣さんに、その同級生の橘さん。
その三人とも仲が良いよう見えるんだけど………」
文緒にはあっさりとばれてしまった。
これ以上、最早隠す必要は無い。
「うん、実はね………」
保奈美の口から真実が語られる。
「えっ」
改めて直樹を見る文緒。
実際結構ショックみたいだ。
自分の好きな人が恋人の他に愛人?がいたのだから無理も無い。
しかも、愛人の一人はクラスメートである。
そして正妻も………
文緒はなんとも非現実的な世界へ足を踏み入れてしまった。
気付いたらカオスの中心地に居たようなものだ。
そしてさらにそこへ文緒の頭を混乱させるような一言が耳に飛び込んでくる。
「じゃあ、今週の週末から秋山さんも参加しない?」
この一言で文緒も保奈美公認の愛人?になってしまった。
さらに今回の一件に関しての詳細を聞くにあたって、『オペレーションサンクチュアリ』だの
『時空転送』だの『未来人』だのとサイエンスフィクションな話を聞かされて、何が何やら分からなくなってしまう文緒。
ただ、分かっている事は自分が直樹の恋人の一人になった事だけだった。