6-465 名前: 1+1≠2(にられば) [sage] 投稿日: 2007/04/25(水) 01:14:00 ID:nBbJlSvD

朝の教室はごった返した様な喧騒に包まれている。
「怪しい………」
そう密かに呟いたのは文緒だった。
確かに保奈美は何時に増して肌が美しい。
そして直樹がゲッソリしている。
(そ、それってやっぱり恋人同士だから………)
とついつい妄想してしまう文緒。
一瞬、カーッと赤くなって手で顔を押さえる。
が、しかし、やはり腑に落ちない事が有る。
(でも、渋垣さんの肌も藤枝さんみたいに………まさかっ)
直樹が実は二股を………と考えてしまう。
(でも、藤枝さんは人一倍勘が鋭いから二股なんて………)
実際には公認とはいえ、二股どころかその倍なのだが………
文緒にはそんな非常識な発想力は備わっていないので予測出来る訳も無い。
ガラガラ
遅刻ギリギリの時間に誰かが駆け込んできた。
無論、委員長としてそれを咎める為にも顔を拝見しようと振り向く。
「ま、間に合った………」
(う、あ、あ、天ヶ崎さんまで………)
そして彼女の疑念は確信へと変わる。
しかし、これはあくまでも久住直樹のプライベートな事柄である。
(やっぱり、久住君に言ったほうが………)
(それとも、藤枝さんに………)
保奈美に言おうにもなんと言えば良いのか?
そんな事を考えているうちに放課後になった。
弓道場で部活に励むが身が入らない。
今日は早めにあがる事にした。
そんな文緒は、何故かカフェテリアに来ていた。
店内に入るとあまり人はいない。
そんな片隅で一つの集団を見つける。
天文部御一行様だった。
そこから距離を置いた場所に座る文緒。
すると間も無く、部長が去って直樹と美琴の二人きりになる。
そんな二人をボーっと眺めているその時だった。
「先輩、秋山先輩」
呼ばれている事に気付いてハッとする文緒。
そこにはウエイトレス姿で注文を取りに来た茉理がいた。
「ご、ごめんなさい、ついボーっとしちゃって………」
「疲れてるんですよ、きっと。だって直樹のクラスの委員長なんですから」
注文を終えるとフゥッとため息を吐く。
(何故だろう………この前、久住君と勉強した時の事を思い出しちゃうなんて………)
何故だか心臓が高鳴っていくのが分かる。
「アイスコーヒー、お待たせしました」
「………ねぇ、渋垣さん………」
アイスコーヒーの入ったグラスを掴む。
「渋垣さんって………今、恋してる?」
ついつい聞いてしまった。
それは保奈美のあの言葉を思い出したから………
(ふふ、恋してるからかなっ)
それに対して茉理の答えは曖昧だった。
「そ、そうですねぇ、し、してるような、してないような………」
「それって、相手は久住君?」
「そ、そんな事無いですよっ、す、すいません、他のお客さんの所に行くので失礼しますっ」
ピューンと駆け去っていく茉理。
(やはり、何かあるわね………)



翌日の放課後の事。
「すいません、秋山さん」
HRが終わった教室で結に呼び止められる文緒。
「しおりの作成をお願いしたいのですけど………」
「分かりました」
「それで場所なんですけど、保健室に用意がしてありますのでお願いしますね」
条件反射的に返答を返す文緒。
「そういえば、何のしおりだか聞くの忘れてた………まっいっか………」
コンコン
早速、保健室にやってきた。
「失礼します」
ドアを開けて入ってみると部屋には直樹がいる。
他には誰も居ない。
直樹と二人っきりである。
実はこれ、この部屋の主と二人の担任とがグルになって画策した罠だったのだ。
そんな事、無論、直樹も文緒も気付いている筈が無い。
何故なら、保奈美ですら知らないのだから………