6-412 名前: 1+1≠2(にられば) [sage] 投稿日: 2007/03/30(金) 17:08:29 ID:QqlZEbOD

さて、無事にディナーが終わり洗い物が始まる。
そこでも直樹は手伝わせてもらえなかった。
渋垣家のキッチンは男子禁制になってしまっている。
と言っても先程のように四人で食器洗いをするわけにもいかないので茉理
と美琴の二人で流しに向かっている。
目を向けるとリビングでは直樹と保奈美、ちひろが談笑している。
「美琴さん、その、さっきの話の事なんですけど………」
「え、何だったっけ?」
「その、直樹の………愛人にって………」
「それは本気だよ」
躊躇いも無く答える美琴。
「それにね………」
照れて朱に染まった顔で語る。
「美琴さん、まさか………」
美琴を見て茉理は理解した。
直樹との関係についても………
それが保奈美の許可を得ている事も………
(ずるい)
それが正直な茉理の考えだった。
直樹とは一番身近な所にいたのだ。
それだけに自分に声が掛かっていないが悔しかった。
そしてその悔しさは直樹自身に向けられる。

その後、食器洗いを終えた二人がリビングに合流しトランプが始まった。
まずはババ抜きに始まり七並べ、神経衰弱等定番のゲームで遊んでいく。
そんな中でも、先程からずっと直樹に視線を送り続けている茉理。
とはいっても食事中と違って柔らかな表情だ。
しかも熱に侵されたようにボーっとこちらを眺めている。
茉理も既に直樹が自分の視線に気付いている事を知っていた。
今更、視線を逸らしてもしょうがない。
正面から行くしかない。
美琴の様に。
「どうした茉理、熱でもあるのか?ボーっとこっちを見てるけど………」
彼女の表情に険しいものが無いのでつい、冗談を言いたくなってしまう。
「もしかして………俺に惚れたのか」
「………………………うん、そうみたい」
「ははは、やっぱり………………………え?」
「えっ………ってなおくん、気付いてなかったの?」
「うわぁ、直樹って最悪………」
「久住先輩がそんな人だったなんて………」
「いつもそうなんです、うぅっしくしくしく」
調子に乗って何時もの茉理に戻る。
「じゃあ、トランプはそれまで」
保奈美が声を掛ける。
「これから各自、着替えて茉理ちゃんの部屋に集合してね」
「俺も?」
「うん、色々と準備が掛かるから部屋で待ってて。用意出来次第、連絡するから」



そうして直樹は自室に戻った。
直樹もパジャマを着込む。
それから十分、二十分経った頃、
ちゃーちゃちゃちゃー
携帯がなったので出る。
「はい」
「なおくん、準備できたから着ていいよ」
「………ところで何をするんだ?」
「王様ゲームだよ」
「………王様になった奴がおいしい思いをしようとして失敗するあれか」
「でも、これは失敗なんて無いから大丈夫」
プツ
そこで電話が切れた。
そしてこの後、茉理の部屋で王様ゲームを始める直樹。
だが、それは普通の王様ゲームとは異なった代物である事を直樹は知る由も無かった。