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テーブルに居並ぶ料理の数々。
保奈美総指揮の下に作られたそれは見た目も素晴しい彩りの料理が所狭しと並んでいく。
長方形のテーブルに直樹を挟むように保奈美と美琴、反対側にちひろと茉理が布陣する。
ここから先は、女の戦いだった。
いただきますの合図が切られると早速いじられキャラとなってしまう直樹。
「はい、なおくん、あ〜ん」
「直樹、あ〜ん」
「あの、久住先輩………」
三人が直樹の口元に次々と間を空けずに料理を運ぶ。
「はは、困ったな………」
だが、こうしている間にも直樹は刺すような視線に晒されている事に気付く。
「ふん、何鼻の下伸ばしてるのよ」
すさまじい殺気。
だが、保奈美、美琴、ちひろの三人は何事も無かったかの如く、
「なおくん、冷めちゃうよ」
「ねぇ、直樹ったらぁ」
「その温かいうちに………」
相も変わらずといった感じである。
(私だって直樹に………)
そう不貞腐れている茉理。
しかも、保奈美はまだしも美琴も、そして親友のちひろまでが直樹に言い寄る。
(素直になったほうがいいのかな?)
そんな弱気な考えをしていても尚、直樹を睨めつけている。
直樹も直樹で困っていた。
非常に嬉しくはあるけれどその反面、茉理の視線が痛い。
「茉理っ」
「何?」
「い、いや、その、こっちで一緒に………」
「いやっ!」
強く突っぱねる茉理。
本当は一緒に直樹にあ〜んとしてみたいのに反射的に反抗的な態度をとってしまう。
「ねぇ、茉理。素直になろうよ。茉理も久住先輩の事………」
「そ、そんなこと………」
ついに耐え切れなくなったのか、どもってしまう茉理。
「え〜、茉理ちゃんも一緒にやろうよぉ」
残念そうな声で茉理を誘う美琴。
「茉理ちゃん、一緒にしようよ」
「………………………保奈美さんがそこまで言うのなら」
ほっ
何とか一息ついて落ち着く直樹。
「でも直樹!!!!!!」
気が緩んでいたのでビクッと震える直樹。
茉理がギロッと睨み付けている。
「私の裸を見た責任は取って貰うからね」
「は、はいぃ」
「じゃあ、早速………直樹………あ〜〜ん」
少し怒りながらも照れて赤くなった茉理が直樹の口に料理を運ぶ。
「じゃあ、私も。はい、なおくん、あ〜んしてっ」
「なおきぃ、あ〜ん」
「………久住先輩………あ〜ん」
こうして一晩にしてウェイトが急激に増えてしまいそうな直樹だった。
だが、この後の運動が激しいので逆に痩せる可能性も充分に考えられる直樹だった。