0-402 名前: 藤枝家に呼ばれたら………(にられば) [sage] 投稿日: 2005/08/04(木) 01:51:28 ID:Mo28JPDh

「英理さんの話を聞いたら、学生結婚にあこがれちゃって………」
それが保奈美の回答だった。
結局の処、「直樹と保奈美をくっつけようとする連中」の一部と保奈美の共犯だったのだ。
「………あぁ、神よ、所詮、この久住直樹などは渋垣家の不純物質として見られていただけなのか」
跪き項垂れる直樹。
「あーら、態度のでかい居候が何か吠えてるわ」
「茉理!」
いつも通りに突っ込むちひろ。
「えーい、覚えていろ茉理!キャンパスライフを満喫する俺と保奈美の眩いばかり官能のベッドタイムで貴様の受験勉強を妨害してくれようぞ!」
「な、なおくん!」
保奈美どころか、ちひろまで顔を真っ赤に染めている。
「おおっと、期待の大型ルーキー久住選手の爆弾発言!専門家の広瀬先生、今の発言の真意は何処にあるのでしょう?」
「特に深い意味は無く、いつもの誇大妄想的な発言だと思われます」
そんな皆が皆で好き勝手していたその時だった。
「ひっく、ひっく」
大きなしゃっくりに静まりかえる。
「ひっく、ひっく!」
何処からともなく、しゃっくりが聞こえその発信源に皆で振り返る。
なんと!コップを持ったちひろが座った眼で直樹を見つめている。
「くずみせんぱーい、女の子には………やさしくしないと………だめらんですよー」
「ち、ちひろちゃん、いつ間に酒を………」
明らかに酒に酔っている。
そして、座らない首をブランブラン揺らしながら直樹に近づき目の前で止まると直樹を見上げ、保奈美に視線を移したかと思うとゆっくりと直樹に視線を戻す。
「エッチなこと、したんですねぇ〜〜〜」
その直後、後ろにきれいに倒れコップの中から琥珀色の液体がぶち撒けられた。
そのまま寝息をたててしまう。
慌てて駆け寄る茉理。
「お父さんでしょ!ちひろにウィスキー飲ませたの!」
「いやぁ、すまん、すまん」
豪快に笑う髭もじゃ男だが、背後に殺気を感じハッとする。
「駄目ですよ、あなた!」
表面上はあくまで笑顔の英理さんだった。
「お仕置きですよ、ガンちゃん!」
それは囁かれた当の髭もじゃにしか聞こえなかった。
「の、飲み過ぎたかな、ははっ………明日も早いから休ませて貰おうかな………」
乾いた笑いを残して男一匹、リビングから退場していった。

宴も終わりに近づいたのかテーブルの上に用意されていたメニューの数々が姿を消していた。
英理さんが直樹に一枚の書類を差し出した。
その用紙の下の部分には蓮見市長の印があった。
「直樹くん、男らしくここに名前を書いて。後、こことここに判子を押してね」
既に隣の箇所に保奈美の字で記入され藤枝家の捺印があるその用紙の一番始めには………



                        「入籍届け」

と記されていた。