0-397 名前: 藤枝家に呼ばれたら………(にられば) [sage] 投稿日: 2005/08/02(火) 03:02:51 ID:Qm+oLD4D

住宅街の夜道を歩く直樹と保奈美。
人通りも疎らな道すがらを保奈美は恥ずかしげも無く直樹の腕を抱いて進む。
「保奈美さん、恥ずかしながら手を繋ぐだけでも宜しいのでは………」
「だーめ、さっき沢山したんだから………」
力強く抱き閉める。
コートの上からからとはいえ、遂、股間が反応してしまう。
保奈美は直樹を見上げながらその反応を楽しむ。
「なおくんが沢山出したから、歩く度に少し垂れてくるんだから………」
「えっ?」
直樹の唇を塞ぐように保奈美の人差し指が触れる。

そして、渋柿家の玄関のドアを開く。
「ただいまー」
「お邪魔します」
しかし、反応が無い。
「た・だ・い・まーーーっ!」
「リビングの電気も点いてないね」

「誰も居ないのか?」
リビングのドアを開く。
「おめでとう!」
パン、パン、パン、パパン、
暗闇の中で祝福の言葉とクラッカーが飛び交う。
そして、灯が点るとぼーぜんとする直樹の間抜けな顔が晒される。
「何のパーティだ?一体?」
改めてリビングを見回す。
保奈美の両親に、英理さん、茉理、美琴、委員長、弘司、ちひろ、
「あれ、ちひろちゃん。何時こっちに?」
「茉理が、今日は久住先輩の大事な日だからどうしてもと………」
その時、一人既に出来上がっている男が近づいて直樹の肩をバンバン思いっきり叩く。
「義姉さんも、今頃喜んで居るぞ!」
「あの、話が読めないのですが………」
「何だ、直樹!もしかして、お前の頭は太陽が黄色く見える状態なのか?」
「お、おやじ、何でかい声で恥ずかしい事言ってるんだ!」
そんな事はお構いなしに保奈美は茉理や美琴達と談笑していた。
「藤枝さん、どうしょもない奴だけど直樹の事宜しくお願いします」
「保奈美、幸せにね!」
「広瀬先輩じゃ無いですけど、どうしょも無い愚兄ですが宜しくお願いします」
たらたらと背中に冷たい汗を感じる直樹。
(こ、この流れは、ま、まさか………)
ふと目に入ったリビングの奥の垂れ幕。
恐る恐る見上げる直樹。



チャー、チャッチャッチャー
いきなり携帯が鳴る。
「はい、久住です」
「くずみぃ?」
「恭子先生………今、取り込み中なんです………がっ!」
垂れ幕を見て固まる直樹。
「あんた、結婚するんだってぇ?藤枝と」
幸せそうな保奈美の方に首を動かす直樹。
油の無い錆び付いたギアの様にぎこちない動きで………
「ほ、ほ、保奈美さん………」
その時、英理さんが保奈美にアイコンタクトを送っていたが今の直樹はそれに気付く余裕は無い。
そして保奈美は直樹の耳元で囁いた。
「なおくん………実は…今日………」
皆が二人を微笑ましく見守る中、約二名、渋垣父娘はニヤニヤと見つめている。
「………危険日だったんだ………今日………」

「という訳でさ、あんたの家に行こうと思ったんだけど結に止められちゃって、聞いてるの?くーずみぃぃぃっ!」
そこには嘗て、久住直樹と呼ばれた男の抜け殻があった。

「明日から保奈美さんの事、お姉ちゃんって呼ぼうかなぁ〜〜」

「久住直樹、18歳の冬の出来事だった………」
「広瀬先輩、うまーい」
「弘司、そのこれから問題山積的な展開のナレーションは止めてくれ………」
何とか状況を把握し、混乱から回復しつつあった直樹だった。
そして、この地獄はまだ少しだけ続くのだった。