6-234 名前: 198 [sage] 投稿日: 2007/01/13(土) 02:42:00 ID:DGmaSNpC

 「すいません、先輩。」と頭を下げる知子「この子、普段は引っ込み思
案って言うか人見知りが激しいんですけど、一度喋り始めたら周りが全然
見えなくなる所があるんです。」
 「え? あ……べ、別に気にしてないからイイヨー?」
 あははははーと微妙に不自然な笑みだが、幸いな事に初対面の二人は菜
月の微妙な差異には気付かない。叩いた部分を撫でながらソフトに親友を
たしなめる知子と、涙目と小声でゴメンナサイを繰り返す未久。
 「そ、それでね?」菜月、少々強引に軌道修正「そのセ……エッチの内
容はともかく花鳥さんって余り積極的な性格には見えないんだけど、彼と
の間でも基本的に受け身側……なのかな?」
 「えっとぉ……はい」小さく頷く未久「未久は女の子ですし、その、年
下で知らないことだらけだから兄ちゃんにお任せですけど………それがい
けないんでしょうか……?」
 「い、いけないってことはな……」
 「やっぱりそうなんですね!? 未久がいつまで経ってもマグロなまま
だから、お兄ちゃんも愛想をつかしちゃったんだ!」
 「や、未久はどう考えてもマグロじゃないし。」
 「というか、問題はそこじゃな……」
 「そうですよね。セックスは共同作業だって書いてあったし、女の子か
らもどんどん積極的に攻めていかないと駄目な時代なんですよね。お兄ち
ゃんも、未久の方から色々なプレイを提案しないから未久とのセックスに
飽きちゃったんだ。」
 「「………い、いろいろなぷれいって……」」と何故かハモる二人。
 「この前、本屋さんで見かけたんですけど、女の子の方から男の子を虐
めて悦んでもらう方法があるって。それも、未久みたいに、ちっちゃい女
の子の方が効果的だって。」
 「「…………(ごくり)」」
 「えっと、確か…………そうそう、男の子の上に乗っかって……」



 (お、おい菜月! こりゃなんだよいったい!?)
 (もう、おっきな声出さないでよね?)仰向き大の字でベッドに拘束さ
れた達哉を冷たい瞳で見下す菜月(心配しなくても、達哉を可愛がってあ
げるだけだから心配はいらないわ。達哉だって好きでしょ、私のニーソッ
クス?)
 面妖な笑みを浮かべながら左足を達哉の目の前に乗せ、焦らすようにゆ
っくりとスカートを捲り挙げてゆく菜月。家業の手伝いで鍛えられスラリ
と綺麗に締まった膨ら脛から膝上までを覆っているのは普段の紺色ではな
く純白のニ−ソ。
(うふふふっ。)見た目にもサラサラと手触りが良さそうな肌着に釘付け
となった達哉の何処か恥ずかしげな横顔を見下ろしながら、優位を確信し
た菜月の目が淫靡に細くなる(こんなに可愛い彼女の生足よりも靴下に興
奮するなんて、達哉って意外と変態さんなんだね?)
 (違……うあっ!?)
 既に固くなっている達哉の分身はトランクスの越しに掌で軽くなぞるだ
けでビクビクと跳ね上がり震える。表面に浮き出た血管が脈打つ様子さえ
感じられるほどだ。
 (違うも何も、こんなに固くしてるじゃない。これで靴下に興奮してる
んじゃないんだったら、いったい何を期待してるっていうの?)
 (そそ、そりゃ菜月の足だから……)
 (えっ? あ……)一瞬緩みそうになってしまった顔を慌てて引き締め
直す菜月。この程度で喜んでいては駄目なのだ(つまり達哉は、年がら年
中エッチなことばっかり考えながら私のことを見てるんだ? ちょっと達
哉のこと見損なってたかなぁ?)
 (そ、それは……菜月?)
 (彼女の事をエッチな目でしけ見れないようなスケベさんには、ちょっ
ぴりお仕置きが必要だと思わない?)
 スッと足を降ろした菜月は、達哉の恐怖心を煽るように大股で、ゆっく
りとベッドの周囲を歩き回る。満足に動かせない首を必死に回して自分の
姿を目で追おうとする達哉の姿が何処となく可愛らしい。
 (私が、責任もって躾けてあげるね? 達哉?)



 (あ……おい……躾けるって、一体何を……)
 妙な趣味など持ち合わせていないのだと反論しようにも、それでは着衣
の菜月を絶えず卑猥な目で見ていたと認めることになってしまうし、靴下
フェチだと断定されてしまうのも癪に障る。達哉の中で様々な思考が交差
しあって……
 (ほら、これがイイんでしょっ!?)
 (うぐぁっ!?)
 業を煮やした菜月がニーソックスを履いたままの足の裏を達哉の股間に
押し付ける。踏み潰してしまわないように慎重に、適度の圧迫感を探りな
がらグリグリと刺激する。
 (なによ、嬉しそうにビクビク震えてるじゃない!)
 (だから、そんなことは………うわわわっ!)
 同じ人間の物とは思えないほど柔らかくて小さい足の裏で擦られ、トラ
ンクスの表面に小さな染みが浮かび上がってくる。それに気付いた菜月は
微妙に力を弱めて楕円を描くように愛撫を続ける。
 (達哉ったらぁ………えいっ!)
 (え? あ、ちょっと待………待てって!)
 勢いよくズリ降ろされるトランクス。そして解放された達哉の分身は溺
れる寸前で水中から抜け出した象の鼻のように先走りの滴を飛ばしながら
天に向かって跳ね上がる。
 (うっ……わぁぁぁぁ…………)
 (ば、馬鹿! ジロジロ見るなって!)
 御馳走を目の前にした子供のようにキラキラと光る瞳で達哉の肉棒に魅
入ってしまう菜月と、己の余りの情けなさに身を捩って逃げだそうと藻掻
く達哉。
 (た、達哉……)ごくりと喉を鳴らして生唾を飲み込む菜月(……こん
なにしちゃって……いますぐ楽にしてあげるからね?)
 口で頬張りって味わいたくなる衝動を抑えながら、ベッドの上に乗った
菜月は何度も深呼吸を繰り返しながら、ゆっくりとした動作で慎重に右足
を下ろして達哉の勃起に体重を乗せてゆく。普段の行為では(特に腕力や
男女間の性感の差から)絶対に敵わない男の子を征服し自分モノにしたか
のような妙な錯覚で濡れてくる秘所の熱さを意識の片隅で感じながら、自
身の先走りで濡れ光る男性器を足の裏で押さえ、表面を覆う皮で内側を擦
るようにしながら刺激を加えてみる。



 (う……あ……あ……!)
 堪えきれない呻きが達哉の口から漏れ、足の下で海綿体がピクピクと震
える。見た目とは裏腹にソフトなタッチで敏感な裏筋を愛撫され快感を感
じているのは間違いない。
 (ど、どう? 気持ちいいんでしょ?)
 (ンな訳が……うぅっ!)
 (もぉ、素直じゃないなぁ達哉はぁ。)
 達哉の表情を確かめて力加減を覚えながら、徐々に動きを大胆にしてゆ
く菜月。固い踵で程良い圧力を加えながら、くびれの辺りから亀頭の最も
太い部分までを指先の布地で撫で上げると、それだけで肉棒がビクビクと
跳ね上がる。恥辱と快楽を同時に与えられ、その板挟み状態が生み出す背
徳の蟻地獄の中で必死に足掻く恋人の様子すら何処か可愛らしく、とても
愛しい。
 (うぐ……ぐ……あ……)
 (……ねぇ、達哉ぁ?)もっと虐めたいという想いと、もっと感じさせ
たいという気持ちが混ざり合った不思議な味の美酒に酔った淫蕩な笑みを
浮かべた菜月が達哉を見下ろしながら甘い声で囁く(……もっと、欲しく
ないかしら?)
 (……そ、それは……)
 (脱・が・せ・て? ね?)
 子供を諭すような優しい声と共に、純白のニーソックスの足先が達哉の
口元に差し出される。女の子らしい滑らかで華奢なラインを描く足先。
 (けど……)
 (それとも………欲しくない?)
 今の達哉は身動き一つ取れない状態だ。まだまだ絶頂には程遠いのかも
知れないが、少なくとも射精への欲求を自分の精神力だけで霧散させ忘れ
去ることが出来る段階ではないことくらいは菜月にもわかる。今も物欲し
げにトクトクと涎を垂れ流し続けている剛直の一番奥に装填されている欲
望を解き放つ機会を恋人から与えられ、断るはずがない。
 (………………………くそっ!)
 (そう……そうだよ達哉。良い子良い子。)
 やがて苦々しく顔を歪めながらも達哉がニーソックスの先を唇と前歯
で噛み締めると、菜月は焦らすみたいな動きで足を引き長い靴下からしな
やかに素足を抜き取る。いよいよ最終段階だ。



 ずるり、と思いの外アッサリと菜月の足は達哉を受け入れた。足の指の
又の中でも一番の広がりを持つ親指と人差し指の間、挟まれた達哉は温か
くて柔らかな輪っかに締め付けられる様な感触を、菜月はドクドクと脈打
つ生命力をそれぞれ感じ取っていた。
 (……………………………)
 (……………………………)
 (あ……)先に我に返ったのは菜月の方。せっかく達哉を圧倒している
というのに、これでは台無しである(……き、気持ちいい……よね?)
 それでも語尾が疑問系になってしまうのはご愛敬。
 (……えっと……)
 (い、言っとくけど、ちゃんときれいに洗ったんだからね? 変な匂い
なんてしないでしょ!?)
 (だから……)
 (なな、なによっ! 気持ちよくないの!?)
 (だから………うあっ!?)
 動揺した菜月が僅かに足を動かしてしまった瞬間に達哉が声を上げ、挟
まったままの分身もトクリと新たな滴を垂れ流す。
 (た、達哉……これ、良いの……?)
 答えなどは聞くまでもない。達哉の反応に気をよくした菜月は小刻みに
足を揺らし、絞り出すような愛撫で達哉を責め始める。
 (う……ぐ……あぁっ!)
 (ほ……ほら、気持ちいいんでしょ? このままイッちゃいそうなんだ
よね?)そう言えば、射精する瞬間なんて見たこと無かったナ、と暢気な
考えが頭をよぎる(私の真っ白な足をせ……セイエキでドロドロにしたい
んだ達哉は? いいよ。 イクとこ、見せて?)
 (ば、馬鹿言うな! こんなので……ぬぅぅぅっ!)
 (うふふ、無理してる達哉って可愛い! でも絶対に許してあげないか
らね? イク時って、どんな顔するのかなぁ?)
 次第にコツを掴んでき余裕も出てきた菜月の動きはだんだん早く大胆に
なってゆく。指の間で熱く固くなってゆく達哉の様子を面白そうに観察し
ながら一気に追い詰める。
 (ほらほら? 私の見てる前で白いドロドロ沢山出して?)
 (ぬぬ……ぬ……!)
 通常のならまだしも、手足を縛られた状態では踏ん張りも効かずの奥か
ら押し寄せてくる津波に抵抗する手段など皆無に等しい。最後に残った意
地だけで暴発を堰き止めようとする達哉の頭脳を嘲笑うように、精巣から
押し出されたマグマは限界まで圧迫された反動もろとも尿道管を無理矢理
に押し広げつつ鈴口に向かって



 「って違ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁうっ!!」
 「ふぇっ!?」
 「きゃ……………!!」
 続けて室内を満たすのは何とも間の悪い沈黙。知子も未久も、そして雄
叫びをあげた菜月本人も、きぃーんという耳鳴りだけを聞きながら一気に
早くなってしまった鼓動が収まるのを待つしかない。
 「……た、鷹見沢先輩?」怖々と声を出したのは未久「未久、何か変な
ことをいったんでしょうか?」
 「変って言うか、過激って言うか……」
 止めなかったどころか無言で続きを催促し、更に話に聞き入ってしまっ
た手前、遠回しにしか非難できないらしい知子。
 「え? でも、いまどき足コキくらいは普通だって書いて……」
 「あー……」未久を遮る菜月は、叫んだときに酸欠でも起こしたのか片
手で眉間を押さえている「……そんな話を何処で見たかなんて知らないし
聞きたいなんて全っっく思わないけど……花鳥さんとお兄さん? が本当
に好き合って、これからも良い関係で居たいって思うんだったらセ……そ
いう行為に頼りすぎるのは良くないって思うんだけど……」
 「……ボクもそう思いますし、未久にも言ったんですけど……」
 「み、未久は口下手だし、頭も良くないから、未久の気持ちを他にお兄
ちゃんに分かってもらう方法が見つからないんです。それにセックスをし
てる間だったら好きって言えるし、お兄ちゃんが愛してくれてるって感じ
れるから、とても安心できるんです……」
 「花と………ううん、未久ちゃん?」
 「え? あ、はい?」
 「怖いのはわかるいけど、そんな曖昧な流れに身を任せちゃったら、気
付かない間に何もかもなくしちゃうかも知れないよ?」
 音もなく立ち上がった菜月が未久の側まで静かに歩み寄り、その傍らで
そっと腰を下ろす。冷たい床の上に正座して、自分よりも小柄で椅子に腰
掛けたままの未久よりも低い位置から大きな瞳を見つめる菜月。
 「で、でも、未久は……」



 膝に添えられたまま逃げ場を探す小さな拳を両手で包み、指で擦(さす)
って暖めながら母性を感じさせる声と瞳で、一つしか年が違わない少女を
ゆっくりと優しく諭す。
 「未久ちゃんがいま、感じているのは、きっと幸せとは違うんだと私は
思うな。ほんとうは何も変わっていないのに、いま以上に悪くはならない
から『良い』って思い込もうとしてるだけ。でもね未久ちゃん、未久ちゃ
んが立ち止まったままで居たくても、未久ちゃん以外の人はみんな……き
っと未久ちゃんのお兄ちゃんも……時の流れと一緒に成長して、前へ前へ
と歩き続けているんだよ。」
 「……おにいちゃん……も?」
 「そうだよ。未久ちゃんは自分のこと『子供だから』って言うけど、だ
からって、いまのままで良いのかな? 私、未久ちゃん将来、凄く素敵な
女の子になれる素質があると思うんだけどな?」
 口を差し挟む事もなく、ただただ潤んだ瞳で目の前の先輩の姿に見取れ
てしまっている知子。そして……
 「……それって、未久も鷹見沢先輩みたいな格好良い女の人になれるっ
てことですか?」
 「なれるなれる。余裕でなれるよ。」と流石に気恥ずかしくなっきて照
れ笑いになってしまう菜月「それで、そうなったら未久ちゃんはもぉ恐い
物なし確定だね。それこそ、お姫様だって適わないくらい凄い女の子にな
っちゃうこと間違いなしっ!」
 だって私よりも一年も早く『大切なこと』に気付いたんだから、と心の
中で付け足す菜月。一歩間違えば間に合わなかったかも知れない私とは大
違いなんだよ、と。
 「じゃあ……未久、先輩の言う通り頑張ってみます。」小さく息を飲み
込む未久「……でも未久は、どうしたら良いのかわからなくて……」
 「とりあえずは……」くるり、と目の中で瞳を一周させて考えを整理す
る菜月「……お兄ちゃんと良く話し合って見た方が良いと思う。分からな
いことはドンドン聞いて、未久ちゃんが想ってる事もしっかり聞いてもら
わないと駄目。言葉が無くても通じる物だってあるけど、その為には先ず
お互いのことをしっかりと理解し合おうとしないと駄目なの。それでも分
からない事とか困ったことがあったら何時でも相談にのってあげるから、
とにかくセ……目先の気持ちいいことに甘えないで、真っ直ぐにお兄ちゃ
んにぶつかってご覧よ、ね?」
 「は……はい! 未久、先輩の言うとおりにやってみますっ!」



 そして、その夜。
 「んっ、んんっ! ねぇ、達哉ぁっ?」騎乗位で跨り、汗の滴を長い髪
と一緒に振り回しながら腰を振る菜月「私、もう!」
 「ああ、こっちも……っ!」
 マウントポジションを取った菜月が上半身の体重の全て腕に乗せるよう
にして達哉の両肩を押さえつけ動きを封じたまま、下半身の力だけで必死
に行為を続けている。その顔には快楽と、隠しきれない疲労の影が見え隠
れしている。
 「……菜月?」
 「な、なにっ? 達………きゃっ?」
 限界まで踏ん張っていた腕を不意に払われ、支えを失った体が達哉の胸
の中に落下する。
 「達哉? あの……えっと……?」
 「それっ!!」
 「きゃ……!?」更なる不意打ち。男性ならではのパワフルな突き上げ
で子宮を突かれ、高圧電流のような快感が全身を突き抜けてゆく「た、達
哉ぁ、そこ、だめ! 変に……なっちゃうぅっ!!」
 そんな弱々しい抗議には耳も貸さず、達哉は菜月を抱き締めたままひた
すら弱点を責め立て続ける。すっかり消耗していた所へ一方的に突き上げ
られる菜月は、為す術もなく嵐に翻弄される帆掛け船のように、瞬く間に
絶頂へと押し上げられてゆく。
 「あぁん! だめだめだめだめっ! だめになっちゃう、ホントに駄目
になっちゃうよぉ!!」
 「……菜月?」
 「ふぇっ?」
 「愛してるから……なっ!」
 「い…………あぁぁぁぁぁぁぁぁんッ!!」
 繋がった場所、その一番奥が恋人の熱い迸りで満たされ埋め尽くされて
いく幸せな快感の中に沈みながら、菜月も達哉に強く抱きついていた。



 「……で?」
 「あ……」荒い息も落ち着いてきた数分後、まだ抱き合い繋がったまま
の耳元に優しい声「……ちょっと、ね。達哉が帰った後、あの子達の話を
色々聞いてあげてたら……」
 「不安になった?」
 「ちょっと……だけ。」目を閉じると、心を満たしてくれる確かな鼓動
が全てを癒してくれる「こ、こういう事に頼ってちゃ駄目よってお説教し
たのに、その後にコレじゃ、情けないよね。」
 「これだけで終わったら、な。」大きな手が背中から頭へと移動して、
菜月の柔らかい髪を優しく梳いて撫でる「やっぱ俺はさ、こうやって抱き
締めながらじゃないと嫌だな。腕の中にいるのが菜月だって、いつも判っ
てないと全然満たされない。」
 「それって………飽きたりしない?」
 「しないしない。というか……」
 「うん。」
 「普段はしっかり者で優等生の菜月が真っ赤になって、心底恥ずかしそ
うにしながら感じてる顔は何回見ても飽きない……………ってチョークチ
ョーク! マジ入ってるから入ってるからっ!」
 「……………………ばぁ〜か。」
 
 
 「菜月ー、昨日の子がまた来てるわよ〜。」
 「うん………ってあれ? 涌井さんだけ? 未久……花鳥さんは?」
 「………知子、です……」
 「へ?」
 「そ、その……」もじもじもじもじ「ボクとか言ってて、男の子っぽい
のは自分でも分かってますけど、出来たらその……ボクのことも『知子』
って呼んで頂けたら嬉しい……です。」
 「えっと、あー……うん、知子ちゃんね? それで未久ちゃんは?」
 「そ、それなんですけど……きょ、今日はその、未久の付き添いじゃな
くってボク自身の相談があって……」
 「…………あ、あぁ〜、ソウナンダー……?」
 何やら知子の背中にお花畑が見えそうな気がして非常にヤヴァイ。桃色
の雰囲気を察したらしいクラスの一同が固唾をのんで見守る中、相手に気
取られないよう抜き足差し足で間合いを取る菜月だが。
 「ご、ご迷惑かも知れないんですけど……これを……って先輩っ!?」
 実に可愛らしい丸文字で『鷹見沢先輩へ』と書かれた白い封筒を目にし
た途端、殆ど条件反射で駆けだしていた。
 「た、達哉ぁ〜〜〜〜!」
 「ってアホですかアンタわ。ほれっ!」
 翠が放り投げた鞄を走りながらキャッチした菜月は、待ちかまえていた
達哉に手を引かれながら全力で教室から逃げ出した。
 「あ、鷹見沢先輩! 未久、昨日お兄ちゃんといっぱいいっぱいお話し
したんですよ♪ そしたら……あれれっ?」
 「お〜た〜す〜けぇ〜〜〜〜〜っ!」
 「ああっ! 待ってください、お姐様ぁ〜〜〜〜!!」
 新しい春を待つカテリナ学院は、今日も平和だった。