6-221 名前: もう幾つ寝ると……… 中編(にられば) [sage] 投稿日: 2007/01/07(日) 22:42:40 ID:54nnjEoT

「じゃーん」
「じゃーん」
さやかと麻衣に促されてリビングに入ってきたエステル。
振袖姿を身に纏っている。
「………………………」
「………………………」
無言のままの見詰め合う達哉とエステル。
「や、やっぱり地球の衣装なんて………」
「い、いや、その、綺麗だったから………なんと言うか………その、見蕩れて………」
「暑いなぁ、お兄ちゃん」
「ふふ、邪魔者は去るとしますか」
「あ、ね、姉さん、初詣なら一緒に………」
「いいから、いいから」
「ちゃんとエスコートするんだよ。お兄ちゃん!!」
バタン
玄関のドアが閉まり、取り残される達哉とエステル。

「で、でも、異教の神にお祈りなんて………」
「気楽な感じでいいんだよ。今度はエステルが見学会に行くんだ」
「………………………達哉がそこまで言うなら」
二人は近くの神社に向かう。
軽快なお囃子のリズムに乗って境内に進んでいく。
道の両脇を占める屋台に興味津々なのかキョロキョロと忙しなく首を動かすエステル。
「あ、ちょっと待ってて」
達哉が屋台に駆けていくと直ぐに戻ってきた。
「あら、それは?」
達哉が手にしている紙コップの中身に興味津々なエステル。
「甘酒だよ。ほら………」
エステルに紙コップを渡そうとする。
「お酒なんて………私達、未成年なのに………」
「大丈夫だよ。アルコールは殆ど入ってないから」
「そ、そうなの………」
恐る恐る紙コップを受取るとゆっくりと口に運ぶ。
「あ、おいしい………」
エステルが笑顔を覗かせる。
そして滞りなく初詣も終わり、二人は再び朝霧家に向かうのだった。

「あら、まだ二人とも帰ってないのね」
「姉さんは多分、仕事関係の挨拶回りで、麻衣は友達と会うって言ってたよ」
二人はリビングのソファーに座る。
達哉が何気なくテレビを点ける。
「ふふふ、よいではないか、よいではないか」
「あぁっ、おたすけぇ〜」
点けたばかりのテレビからいきなり悪代官と女中のやり取りが流れ出してリビングの時間が止まる。
(タ、タイミング悪っ)
しかも悪代官が若い女中の帯を引っ張り、女中がクルクルと回って着物がはだける。
「あ、チャッ、チャンネル変えようか………」
恐る恐るエステルを覗き込む達哉。
彼女とは男女の仲になっているとはいえ、真面目なエステルはこういうのは嫌いな筈だ。
だがポーっと顔を赤らめて恥じらいの表情を浮かべてチラッチラッと達哉を見る。
そしてゴックンと唾を飲んで覚悟を決める。
「ねぇ………達哉………」
「は、はいっ!!」
エステルがテレビを指差して言った。
「………達哉も、ああいうの………やってみたい?」