6-177
名前: 君が望むはにはに終章 [sage] 投稿日: 2007/01/04(木) 16:46:12 ID:aaJmnlNa
「想像妊娠!?」
病院の検査室。恭子先生から保奈美の病名を聞いた祐介はさすがに戸惑う。
「で、でも。保奈美のお腹は、確かに膨らんでましたよ?」
「そうよ。それが想像妊娠の症状なの。あの大きくなったお腹には赤ん坊はいないわ」
「そんな……」
目の前が暗くなり頭がクラクラしてしまいます。
最後のデートと約束して遊園地で待ち合わせ。だがそこに現れた保奈美は、お腹が大きく膨らんでいた。
大慌てで祐介はこの恭子先生たちが入院している病院まで連れて来た。ちなみに文緒が通っている産婦人科もある。
そして病院で検査を受けさせ、入院患者である恭子先生から結果を聞いていた。
恭子先生はここの医者から聞いて祐介に伝えてくれたらしい。
「祐介君。想像妊娠というのはね。子供が欲しいと強く願った場合に、その症状が現れる場合がほとんどなの。
藤枝の理由は分かるわね」
「はい……」
文緒が妊娠したと知って、自分は彼女の元に向かった。保奈美も、直樹としての人生も全て捨てて。
だから保奈美が「子供が出来れば戻ってきてくれる」と考えたのも当然だろう。
実際、妊娠が真実だったら、どうしていたことか。
「この体が……二つあればな」
またそんなことを考えてしまう。
「先生……俺が二人になったのは、時空転移装置の事故が原因ですよね」
「ええ。多分ね」
あの日、保奈美と一緒に丘で遊んでいた直樹は光に飲み込まれた。気が付いた時には記憶を失い、両親も消えていた。
そして百年後の未来には、分離した祐介が出現。
今では時空転移装置の事故が原因と考えられているが、はっきりしたことはなお不明だ。
「祐介君。同じ事が出来れば、とか考えてない?」
「……」
「危険が大きすぎるわ。結だって、何が起きるか分からないと言ってるのよ」
「……失礼します」
検査室を出て、祐介はハァと深く溜息をついた。
「なおくん」
そこに朗らかな声がかかる。大きなお腹を抱えた保奈美だ。
「もう、心配性なんだから。いきなり病院に連れてきて」
よしよしと大きなお腹を撫でる保奈美はとても幸せそうで。
想像妊娠のことを言おうとして祐介はやめた。言っても無駄だろう。
「あのな保奈美……。この病院、姉貴やみんなが入院してるの知ってるか」
「うん知ってるよ。わたしが入院させたんじゃない」
「そんなあっさりと……」
「だって、みんなわたしとなおくんの仲を邪魔するんだもん。当然だよね」
クスクス、と可笑しそうに笑う保奈美に、祐介はそっと嘆息する。
「それより、今日のデートなんだけど」
忘れてた。最後にデートすると約束してたんだ。
「わたしね。行きたい所があるの」
「どこ?」
「蓮美台学園」
自転車、世界タービン号の後ろに座り、保奈美はしっかりと祐介にしがみつく。大きなお腹で。
「大丈夫か?」
「何年後ろに乗ってると思ってるの?」
ニコッ、と背中越しにも微笑が感じられた。そして長い髪から漂う甘い香り。
本当に嬉しいのだ。世界タービン号の後ろに乗って。
今日は休日。蓮美台学園も人はまばらだった。
「で、どこに行くんだ?」
「時計台の中」
「はぁ?」
自転車から降りると、保奈美はすたすたと講堂に向かう。祐介も後を付いて行った。
講堂の三階にある理事長室を通り抜けると時計台の中に入れる。そして時計台の上には……時空転移装置があった。
「わぁ。すごいね」
その装置を見て、保奈美が歓声を漏らした。わざとらしく。
「そうだな……。て、お前、どうやってここまでの鍵を!?」
当然ながらこの場所は秘密になっている。そもそも理事長室も鍵が掛かっていたのだが、保奈美は何故かその鍵を持っていた。
その後も幾つか鍵が掛けられたいたが、保奈美は全ての鍵を持っていた。
「それは秘密です」
と保奈美は、装置の前、小さな椅子に座らずに立つ。結先生の席だろう。
そこで複雑そうな機械をじっと眺めていた。
「これがあれば……いろんな時代に行けるんだよね」
「いろいろ条件があるとか言ってたけどな。てお前、なに触ってんだ!」
ピッピッと保奈美は機械に触って何やら動かしている。
「うーん。こうやって使い方を自己学習してるのよ」
「しなくていい、しなくていい。どこか行きたい時代でもあるのか?」
「うん」
保奈美は澄んだ瞳で祐介を見据え、
「なおくんと一緒にいたあの頃」
「……悪い」
ぺこっと祐介は頭を下げた。そしてそのまま土下座する。
「頼む保奈美。すまないとは思うが……俺は文緒と一緒になる」
「……」
返事は無い。
顔を上げた祐介は見た。保奈美がツーと涙を流しているのを。
「保奈美……」
初めて見た。保奈美のあんな悲しそうな顔。
胸がズキッと痛む。今すぐにでも抱きしめたい。
でも抱くわけには行かなかった。今の自分は祐介だから。
「うん……大丈夫だよ」
大きくなったお腹に目を映し手でよしよしとさすり、
「今は赤ちゃんと一緒だから」
「保奈美……」
思わず泣きそうになるのを祐介もぐっと堪えた。自身の中で保奈美への想いが高まるのを感じる。
保奈美を愛した直樹の気持ち。その愛に偽りは無い。
だが―
「すまない」
祐介はただ謝るしかなかった。文緒が、そのお腹の子がいるから。
「いいよ。なおくん今日はありがとう」
「え?」
「今日……楽しかったよ。もう帰るね」
「送ってくよ」
「いい。一人で帰る」
背を向け、保奈美は時計台から出て行った。
歩きながら、大きなお腹に呼びかける。胎児のいない大きなお腹に。
「赤ちゃん。これからは二人で生きていこうね。お母さんといっしょに」
それから数ヶ月が過ぎた。
文緒のお腹は大きく膨らみ、臨月を迎えていた。
その頃になると恭子も結もちひろも茉理も美琴も退院している。
そして出産を控えた文緒が病院に入院した。
保奈美はあれから会っていない。結の話によると学園にも出席していないらしい。心配だが今は文緒と赤ちゃんが優先だった。
「いよいよね」
ベッドに横になり、大きくなったお腹に文緒が呼びかける。
「そうだな」
そのお腹を見守り、祐介も力強く頷いた。
「ねえ、祐介」
「ん?」
「キス、して」
「うん」
文緒が眼鏡を掛けた目を閉じて唇を突き出す。祐介は迷うことなく口を重ね、
そのまま時が止まったように動きを止めた。
ドクン、とお互いの鼓動が唇を通して伝わる。感じられる。
口を離すと、うっとりと潤んだ瞳で文緒が見上げてくる。思わず、祐介はごくっと喉を鳴らした。
文緒のお腹が大きくなってからはずっとご無沙汰だった。
内心を見透かしたように文緒が口を開く。
「ねえ……。その、口でしようか?」
「ええっ!? いや、そんな。大事にしてろよ」
「でも……」
文緒は赤い顔を下に向け、そっと彼の股間を手で覆う。
「私も……ずっとしてないから…」
「う、うん……」
シャー、とチャックを開けると、ぷるるんと赤黒い肉棒が飛び出した。なんだかんだで反応していたのだ。
それが文緒には嬉しかった。とても。
「あはっ。祐介の久しぶり」
パクッ、と先端の赤味を口に含むとビクンビクンと口の中で暴れる。
男根の先端の割れ目を舌で回すように舐め、口をすぼめて優しく締め付けた。
「はうっ!? はうっ……はうっ」
祐介の腰もビクンビクンと脈動し、文緒の口に直接振動を送った。
(あったかい……感じてるんだ)
彼が口で感じてくれてる。それがとても幸せで。
ビクンビクンと口の中で彼が暴れ回り―
不意にどぴゅっと男根から水しぶきが飛ぶ。射精だ。
そして白い白濁液が喉へと直接流し込む。
文緒は口を離すことなく、ゴクゴクと飲み込んでいった。その様子に祐介はさらに昂ぶり、妊婦の口に精を放っていく。
ドクン……ドクン……
「ふー」
全て飲み干した文緒は、ちょっと名残惜しそうにちんこを口から離した。ドロッと白濁液が口端からこぼれる。
「おいしかった……あうぅ!」
いきなりお腹を抱える文緒。お腹の奥がジンジンと痛い。
「き、きたみたい……。お医者さん呼んで」
精液の匂いに陣痛が促進されたのだろうか。
祐介は大慌てで医者を呼びに行った。
そして文緒はすぐにお産室に移される。
こういうときの父親は落ち着かないものだ。
文緒が運ばれてからというもの、祐介はうろうろと廊下を歩き回る。
「まあ落ち着きなさいよ」
「そうだよ祐介」
駆けつけた恭子先生と美琴が声を掛けるが、やはり落ち着かない。
祐介ははやる気持ちを抑え、文緒の入った扉を見る。あの奥では文緒が苦しんでいるはずだ。
本当は付き添いたかったのだが、女医に止められた。
そしてお産室では。
「はーい。息を大きく吸って。楽にしてリラックスして」
女医の言うとおりに大きく息を吸うと、随分楽になった。
文緒は朦朧となる頭で病室の天井を見上げ、それから女医を見る。今いるのはこの女医だけ。
医療用の帽子とマスクで顔はよく見えない。
「じゃあ、この酸素マスク付けてください」
何でそんあものが必要かよく分からないが、酸素マスクを口に付ける。と、意識が楽になり、眠たいほどになった。
さlちきまでの激痛が嘘のよう。
「ふふ」
と女医が顔に笑いを浮かべ、帽子を取る。長い茶色の髪がパッと宙に舞った。
「!?」
朦朧とする頭で文緒は目を見張った。女医は保奈美だった。
「久しぶりね」
大きかったそのお腹は元に戻っている。想像妊娠の症状は治ったのだろうか。
「……んー。んー」
声を出そうとしても酸素マスクで出せない。外そうとしたが手が動かなかった。麻酔を掛けられている。
「動いちゃ駄目よ。赤ちゃんに障るでしょ?」
保奈美は文緒の大きなお腹を撫で、
「わたしとなおくんの赤ちゃん」
「!!!」
カッと目が限界まで見開かれる。薄れていた意識が鮮明になった。
この女は……赤ん坊を奪いに来た!
「うふふ」
笑いながら保奈美の手が文緒の股間へと伸びた。出産の為に下着は全て脱がされ、その膣はテカテカと濡れている。
そして赤ちゃんが通るはずの道を保奈美の手が逆流していった。
「んんー!」
保奈美の手がゆっくりゆっくりと産道を進み、文緒のお腹がぼこっと膨らんだ。
「赤ちゃんどこかなー?」
そして文緒は意識を失った。
「遅いわね」
腕時計を見て、恭子先生が呟く。文緒が入ってからもうかなりの時間が経っていた。
美琴はもうすっかり寝込んで、恭子の膝に顔を乗せて寝ていた。
「そうですね…」
祐介もさすがに心配になってきた。いやずっと心配はしているが。
「ちょっと見てくるわ」
恭子先生は膝の上の美琴を祐介に預け、恐る恐るお産室に入っていった。
「キャー!」
恭子先生の悲鳴に祐介はサッと立ち上がる。膝の上の美琴の顔がゴロンと落ちた。
「あ、ああ……」
呆然とわななく恭子。そして祐介も見た。
ベッドの上、脚を大きく開かされ、股から血を流してぐったり気を失っている文緒。
そのお腹は元の平坦になっている。そして赤ん坊の姿はどこにもない。医者の姿も。
その代わり、一通の書き置きが残されていた。
『思い出の場所で。
なおくんへ』
蓮美台学園近くの丘。
「保奈美ーっ!」
その中心に立ち、祐介は叫ぶ。時刻は深夜。薄暗い闇の向こう、少女がすっと正面の視界に姿を現わす。
「赤ちゃんはどうした」
保奈美は蓮美台学園の制服を来ていた。赤ちゃんの姿はどこにもない。
「今はぐっすり眠ってるわ。ふふ。あの子ったら、わたしのおっぱいをいっぱい飲んでね。
なおくんそっくりの男の子だったわ」
クスクスと笑う保奈美。大きかったそのお腹は元に戻っている。
「返せ……。あの子は俺と文緒の子だぞ!」
「何言ってるの? わたしとなおくんの子だよ。ほら、大きかったわたしのお腹だって、赤ちゃん産んだら元に戻ったでしょ?」
「……!」
祐介は愕然とした。保奈美は本当に自分の子だと思ってるのか?
「ねえ。名前何てしましょうか? 男の子だから『祐介』にする?」
「……子供を返せ」
祐介の目に剣呑な光が宿る。
今決めた。殺してでも奪い返す。
「保奈美……俺は、お前を、許さない」
文緒は何とか一命を取り留めた。今は恭子先生が診てくれてるはずだ。
だが意識を取り戻した時、赤ん坊が奪われたと知ったらどう思うか。
その前に取り戻す。例え保奈美を傷つけることになっても。
「言え。子供はどこだ」
「ねえ。ここがどこだか知ってる?」
サーと丘の上を風が吹きぬけ、保奈美の長い髪を揺らす。
雲が晴れ、満月が二人を煌々と照らした。
「わたしがなおくんを失った場所だよ」
5年前、いやもう6年前、直樹はここで光に包まれた。そして両親と記憶を失った。
「それからね……。わたしがなおくんをもう一度手に入れた場所」
記憶喪失の直樹を甲斐甲斐しく世話したのは保奈美だ。
それだけではない。自分好みの幼馴染に育て上げた。世話の焼きがいのあるだらしない幼馴染の男の子。
朝はいつも起こされ、自転車に一緒に乗り、自分の料理を褒めてくれる幼馴染。
直樹は気付いていただろうか。自分が保奈美の臨んだとおりの幼馴染に調教されていたことに。
「だからね。もう一度取り戻すの。ここで」
今目の前にいる男は直樹ではない。祐介。
だからその存在を消す。
再びなおくんと一緒になる為に。その為の仕掛けはもう済ませてきた。
「世界タービン号ーっ!」
祐介が呼ぶと、一台の自転車が丘を駆け上がってくる。世界タービン号。
だがその背中には誰も乗っていない。自動走行。自転車の分際で!
「タービン・セット!」
そして祐介と世界タービン号が重なり一つになる。合体だ!
「うおお!」
世界タービン号の機動力を得た祐介は猛然と保奈美に突進していく。
ガッ! と祐介と保奈美が交差し―
サーッと祐介は勢いのまま駆け抜けていき、保奈美はよろっとよろめいた。
保奈美の鳩尾が拳の形にへこんでいる。祐介のパンチが命中したのだ。
一方、祐介の胸に装着した世界タービン号籠もへこんでいる。だがそれだけだ。
祐介本体に損傷は見られない。
ぐるっと回転して保奈美に身を向けた祐介。ガシャンと両肩のパーツが上下に開く。そこに集まる光。
「ボルテッカー!」
反物質ビーム砲!
どご−んと保奈美が光に包まれ、爆炎が覆う。
「はぁはぁ」
祐介は汗を浮かべ、爆発を見ていた。ボルテッカは体力を大幅に消耗する。
一度の戦闘で撃てるのは一回まで。
だが―
爆発が止んだとき、そこに保奈美は悠然と立っていた。手にまな板を掲げて。
「ちぃ」
まな板でボルテッカを防いだようだ。だがそのまな板も黒ずみとなり崩れ落ちる。
「……さすがね。なおくん」
淡々と保奈美が語る。
今、祐介が見せた戦い方は直樹のものではない。祐介のものだ。だから予測できなかった。
まな板で防御するのがやっと。そのまな板も、もうない。
だが祐介にも同じ技を放つ余裕は無いようだった。
「これで決めるわ」
保奈美が包丁を構える。その攻撃力が戦艦の主砲に匹敵する事は知っていた。
「くっ」
祐介の脳裏に文緒の顔が浮かぶ。愛する人。でも今はその顔は泣いていた。
(文緒……)
彼女の笑った顔が見ていたい。いたかった。
それは叶わないかもしれない。
「ごめんな」
アレを使うしかない……。
「うおおおおっ!」
祐介が吠える。保奈美さえもが一瞬怯むほどの気迫を見せて。
「直樹もなおくんも今ここで死んだ!
俺は……祐介だーっ!」
ガシャン。両肩のパーツが再び上下に開く。そして体全体が光り輝く。
もう体力は無い。だから命を削って戦うまでだ。
死ぬかもしれない。よくて記憶喪失。
それでも良かった。文緒が笑ってくれるなら。
「超ボルテッカアアアアアアァァァァーっ!!!」
先ほど以上の光が放たれようとしたとき―
まばゆい轟音と閃光が丘を包んだ。
「なにっ!?」
超ボルテッカも光に飲み込まれてしまう。そして祐介は光に包まれていった。
「これは……!」
見覚えがある。あの日、記憶を失った日にも同じ光に包まれた。
「間に合ったようね」
ツー、と冷や汗を流し、保奈美が言う。危なかった。一瞬遅かったら敗れていただろう。
でも勝った。そう。これが運命。
「保奈美。お前は…!」
「そうよ、わたしがやったの。時空転移装置を使って」
祐介の脳裏に、時計台の中で装置を触っていた保奈美が思い出される。
「大変だったわ。どうすれば同じ現象が起こせるか」
「そんな……」
百年後の機械を操るだけでも大変だというのに。保奈美はそれをやったのか!?
結先生でも出来ない事を!
「さようなら。そしてまた会いましょう」
「保奈美……」
光の中から祐介がかろうじて手を伸ばす。
保奈美も手を伸ばし―
その手をパチンと弾いた。
「保奈美ーっ!」
そして祐介は光に飲み込まれ、意識を失った。
どこだろう、ここは。視界には星空が広がっている。
「ああぁ……なおくんだ……うくっ、うっ……わたし、死ぬほど心配したんだよ……
もう二度と戻ってこないんじゃないかって、ずっと心配してたんだから……」
そして誰だろう、この女は。自分の腰にまたがって腰を振っている。
でも気持ちいい。俺のちんこは、この女の股に入り込み挟まれ、女が動く度に擦れて、痺れるような快感が迸る。
ああ、とても気持ちいい……。
「なおくんだ。なおくんだ、なおくんだ。あはは」
女は泣きながら笑っている。
なおくん? それが俺の名前なのか。
「そうよ。あなたは直樹。なおくん」
俺の名前は直樹。
「わたしは保奈美。あなたの恋人。そして結婚して妻になるのよ」
そうか。嫁か。
「うふふ。もうね。子供もいるのよ。あとで会わせてあげる」
そうか。子供もいるんだ。大事にしないと。
「ああ……なおくん……。やっと、やっと戻ってきてくれた。
女が顔を下げて近づける。唇がちゅっと合わさった。
途端、ビリッと電気が脳に走り、腰がガクガと揺れる。
どぴゅっ、と暖かい女の胎内に、ちんこから何かが出た。
「アアァ……なおくんが…なおくんが、わたしのナカに出してる…」
保奈美とかいう女が顔を仰け反らせ、さらに腰を振る。ちんこを揺さぶられ、俺はさらび出してしまった。
「なおくん。好き。好き。大好き。ずっと、ずっと一緒だからね」
ああ。俺も好きになった。気持ちいいから。
祐介と保奈美、そして赤ん坊が蓮美台市から姿を消して一月。
遠く離れた小さな森の教会に直樹はいた。祐介としての記憶はまるでない。
いや直樹の記憶も失われたままだった。
今はただ保奈美に養われ、赤ん坊と一緒に生活している。
そして今日。二人は結婚式を挙げる。
「なおくん、起きてる?」
直樹のいる新郎の控え室に保奈美が入る。純白のウエディングドレスを着て、手には赤ん坊を抱いて。
その赤ちゃんはすやすやと眠っていた。文緒が産んだ子は直樹と保奈美の子として育てられている。
「うぉ……ブラボー」
直樹は虚ろな瞳で思ったまま賞賛の言葉を口にする。
「……似合うかな?」
「似合う似合う。……で、そのスカートの中はどうなってるんだ?」
たっぷりとしたスカートを捲ると、下は何も着ていなかった。そして蕩けるような甘い香り。
保奈美の股間はもう熱く爛れて濡れている。
「もう……なおくんたら。我慢できなの?」
「ああ」
「仕方ないなぁ」
寝ている赤ん坊をそっとクーハンに寝かせ、直樹のチャックを開けてやる。
彼の分身は「もうピンピンに固く尖り、保奈美はうっとりと頬を染め、椅子に座ったままの彼の上に、よいしょっとスカートを巻くって跨った。
保奈美が上になるのがもう御馴染みの体勢だった。
「おおうっ!」
たちまち分身が保奈美に包まれ、直樹は歓声を上げ、下から抱きついた。
保奈美のナカはとても狭くて心地良くて。ずっとこうしていたい。
それに食事の世話から日頃の生活まで、全て保奈美がしてくれる。直樹はこうして保奈美を抱いているだけでよかった。
「ああんぅ……なおくん、なおくん」
保奈美がぎゅっと顔を抱き寄せ、胸へと押し付ける。大きく柔らかい乳房。
直樹は豊かな胸に顔を埋め、もふもふと頬を寄せる。大きなおっぱいもお気に入りだった。
「これから……結婚式だから、早目にね」
キュッ、と膣がしまり、分身を締め付けてきた。
「うっ!」
たまらず直樹は射精し、ウエディングドレスの花嫁の膣をドロドロに汚してしまう。
「ふふっ。いっぱい出したね」
太股を伝う精液を白い手袋で拭い、保奈美はぺろっと舐めた。
「さあ行きましょう」
そして身支度を整え、寝ている赤ん坊を抱え、直樹の手を取り教会に向かう。
二人だけの結婚式場へと。
教会にいるのは直樹と保奈美と赤ん坊だけ。
祝福を述べる参列者も誓いを見届ける神父もいない。
「さあ。なおくんキスして」
「んっ」
それでもよかった。
直樹の口が触れると、保奈美はそっと目を閉じ、涙を流す。
「泣いてるの?」
「心配しないで。嬉し涙だよ」
目を開けると心配してくれる彼の顔。
そう。やっと全てを取り返したのだ。彼も、幸せも、全て。
そのとき、教会の扉がギッと音を立てて開く。
「やっと、見つけた」
そこに居たのは文緒。弓道着を着て、手には弓を持っている。
「あら秋山さん。お祝いに来てくれたの?」
「ふざけないで!」
無事な様子の彼と赤ん坊にホッとしつつ、文緒は弓に矢つがえを構えた。
あの日、祐介のお尻に刺さった思い出の矢を。
「返してもらうわ。祐介も、赤ん坊も」
「返す? なおくんも、この子も、わたしのものだよ」
保奈美は腕の中で眠る赤ん坊を優しく見下ろした。
「私の産んだ子よ」
ギリ、と弦を引き絞る。
「なあ。あの人だれ?」
彼の言葉にズキッと胸が痛む。
帰ってこない事で予測は出来ていた。彼が、何かされたんじゃないかと。
「まさか……忘れちゃったの?」
「そうよ。今のこの人はなおくんだもの」
保奈美は横にいる直樹の頬にちゅっとキスしてみせる。
文緒は矢の狙いを保奈美の顔に定めた。
「死んじゃえ」
そして矢を放つ。
プスッ、と矢が刺さった。
保奈美の掲げた赤ん坊の後頭部に。
まだ毛も生え揃っていない柔らかい頭から、血がだらっと流れる。そして小さな手足がビクッと振動し、動かなくなった。
「あーあ。赤ちゃん死んじゃった」
自らが盾にして、頭に矢の刺さった赤ちゃんを保奈美はぽいっと投げ捨てた。
文緒の前に。
「あ、ああ……」
呆然と膝をつき、文緒は目の前に横たわる赤ちゃんを拾い上げる。
暖かい小さな体が急速に冷えるのを確かに感じた。
「いや……いや……」
固く閉じた瞳。口からもダラッと血が流れる。
「イヤアアアアアアアアアアアアアァァァァァァーっ!」
「さ、行きましょう。なおくん」
絶叫を心地良く聞きながら、保奈美が直樹の手を引く。
「でも」
直樹の目に映るのは、頭に矢が刺さって死んだ赤ん坊と、それを抱えて泣き叫ぶ文緒。放っておけない。
「いいのよ。それより、帰っておっぱいしましょう」
「おっぱい?」
「そう。おっぱい」
「おっぱい。おっぱい」
記憶を失った直樹は、保奈美の再教育により完璧なおっぱい星人へと変貌していた。
もう赤ん坊も泣いてる女も眼中に無い。
「それじゃあね。秋山さん」
「わあああああああぁぁぁぁぁーっ!」
赤ん坊を抱えている文緒の前に、今度はブ−ケを落として保奈美は去って行く。直樹と共に。
「返して……」
誰も居なくなった教会で冷たくなった赤ちゃんを抱えた文緒は呆然と呟く。呟き続ける。
「返して。返して。返して。返して。返して。返して。返して。返して」
彼も、子供も、幸せも。全て奪われた。あの女に。
「返してよおおおおおぉぉぉぉぉーっ!!!」
(終了)