6-165 名前: 振袖プリン前編(にられば) [sage] 投稿日: 2007/01/01(月) 02:53:07 ID:YYXCOjtE

新年の第一歩、その初日、元日。
渋垣家のリビングでは当家の一人娘が振袖姿で現れた。
「じゃーん」
嬉しそうにクルっと一回転。
「おお、似合ってるじゃないか」
あっぱれと言いたげな笑顔の源三。
「う〜ん、馬子にも衣しょ………うっ」
どこから取り出したのか茉理の投げたコースターが直樹の額を直撃する。
「ふふ、直樹くんは恋人が来ないのでいらつてるのね」
「………そんなとこです………」
ピーンポーン
「あ、私見てくるね」
さっきの怒りは何処へやら。
ニヤニヤと直樹を見やって玄関に向かう。
「いいのか、直樹?」
「武士が女を迎えに行くなど以ての外」
「直樹君、お侍さんだったの?」
「ははは、直樹。そうは言っても脚が震えているぞ」
「もう、なおくんは嘘吐きなんだから………叔父様、叔母様、新年明けましておめでとう御座います」
「俺は武士じゃないからなぁ」
振袖姿の保奈美がリビングの外から突っ込んできた。
「はぁ、新年からしょうも無い奴………」
兎も角、直樹の恋人はホナミンではない。
「残念だったね、なおくん」
「う、うるさいっ」
「ははは、何はともあれ新年早々、振袖姿の女の子に囲まれるなんてめでたいじゃないか」
ピーンポーン
今度は英理が玄関に向かう。

「ごめんなさい、少し遅れてしまいました」
そう言ってリビングに入ってきたのは結だった。
「ああ、そうでした。明けましておめでとうございます」
「おめでとうございます」
次々と頭を下げる元教え子達。
「じゃあ、あちらで着付けをしましょうか」
「お願いします」
英理が結を伴ってリビングを出て行く。
「良かったわね、直樹」
「よかったね、なおくん」
「だー、うるさいっ」
そう言って直樹は自室に引き上げて行った。

流石に元日の神社は人が溢れている。
人込の中を手を繋いで進んでいく直樹と結。
何とか参拝を済ませて人込から抜ける。
「折角の着物がよれよれになってしまいました」
そしてモジモジと顔を赤らめる。
「そ、そ、その、お、おトイレに行きたいのですが………」
行列の中から我慢していたので最早限界に近い結だった。