6-136 名前: 君が望むはにはに 祐介×文緒その7 [sage] 投稿日: 2006/12/26(火) 16:56:58 ID:BlvZTyqa

「わぁ。いいお天気!」
 雲ひとつない青い空。眩しそうに見上げた美琴は、それから後ろを振り返る。
「ね、ほなみん!」
「そうね……」
 保奈美も空を見上げ、前を歩く美琴のひょこひょこ動くポニーテールと白いリボンを見た。
 蓮美台学園の近くにある小高い丘に二人は来ていた。
「この辺よ」
 丘の広場の中心に立ち、保奈美が呟く。その足下は心なしか穴が開いてるように見えた。
「そっか……ここが」
「ええ。あの事故のあった場所」
 ここでピクニックに来ていた久住一家は光に包まれた。そして光がやんだとき、両親は消え、直樹は記憶を失っていた。
「祐介を見つけたのもね……こんな場所なんだよ。ううん、ひょっとして同じ場所かも」
「そう」
 サー、と風が流れ。二人の少女は真正面から見つめあった。
「ねえ美琴。あなたが転校して来て一緒に過ごして……すごく楽しかったけど、同じぐらい不安だったんだよ」
「え?」
「あなたが……なおくんを取っちゃうんじゃないかって」
「そんな……」
 はにかんだように美琴が苦笑を浮かべる。彼女にしては珍しい顔だ。
「わたしもね……。保奈美が羨ましいって思ってた」
「どうして?」
「ずっと……彼と一緒だから。わたしは一緒に居られなかったから」
 弟の祐介と離れ離れになって美琴はこの時代に来た。その美琴にいつも一緒にいる幼馴染の直樹と保奈美はあまりに眩しくて。
「ふふっ……」と保奈美も苦笑を浮かべる。
「変だよね、わたしたち。勝手に不安になって羨ましがって。お互いにどうしようもないのに」
「そうだね」
 クスクス、と笑いがこぼれる。
「でも……驚いたな。美琴じゃなくて……あの女が全部持ってっちゃうなんて」
「うん。わたしも驚いた」
 不意に笑いが止み、真摯な表情で保奈美を見つめる美琴。保奈美もまた見つめ返す。
その瞳に涙が浮かんでいるように美琴には見えた。
「祐介は……わたしの弟だよ」
「そうね。そして、なおくんでもあるわ。わたしの恋人」
「保奈美……。未来はね。たくさんの人が死んだんだよ。わたしのお父さんとお母さんも」
「そう……」
「でも、わたしと祐介は生き抜いた。だから……祐介には幸せになってほしいの」
「それが……わたしの不幸せだとしても?」
「……ごめん」
「わたしはね……ただなおくんと一緒に居られればいいの」
「三人で仲良く……じゃダメかな?」
「今更そんな……」
 ふふっと自嘲気味に笑い、保奈美は下を見て、そして顔を上げた。闘志に満ちた顔で。
「彼とね。デートの約束したの」
「そうなんだ」
「でも……その前に。あなたに邪魔はさせない」



 丘で保奈美と美琴が激突している頃。
「文緒」
「祐介君」
 同じ空の下、祐介と文緒は遊園地に来ていた。
 互いに名を呼び合い、手を繋いで歩いていく。
「お腹が大きくなったらしばらく来れないな……」
 カップルや家族連れで人がたくさんの遊園地を見て、文緒は自分のお腹を見下ろす。
今はまだ平坦だが、その中には確かに新たな命が宿っていた。
「また来ればいいさ。今度は子供も一緒に」
「うん」
 暖かい彼の手をしっかりと握り、二人は遊園地を歩いていく。
「ねっ。なにがいい」
「あれがいい」
 祐介が指差したのは射的。銃ではなく弓矢で撃つものだ。
「弓道部の腕、見せてくれよ」
「よーし」
 射的用の小さな弓矢を構えた文緒はしっかりと狙いを定める。久しぶりで緊張してしまう。
 ひゅっ、と放った矢は見事に的に命中した。
「おー。お見事お見事」
 振り向いた文緒はぺろっと舌を出してみせた。
 そうして射的でもらった人形を、祐介はしげしげと眺める。
「なあ。これ、姉貴に似てないか」
「うん。私もそう思った」
 ポニーテールに白い大きなリボンの女の子。どこか美琴に似ている。
「でも楽しいだろうな。天ヶ崎さんが義姉さんだと」
 今から楽しみなのか。文緒はうふふっと笑った。また祐介と手を繋いで。
「まあ、やかましいのは確かだな」
 祐介も一緒になって笑った。二人がデートすると聞いて、美琴は笑って見送ってくれた。
 さて、姉貴は今頃どうしてるだろうか。

「ハイパークロックアップ」
 一瞬、美琴の背中に翼が見えた。光の翼。
と、一瞬にしてその姿が消える。
「!」
 気配を感じ、保奈美は後ろに飛ぼうとした。だが、その胸にまともに蹴りが食い込む。
ハイパー美琴キック!
「ぐっ……!」
 ずささっと後ろに流され、保奈美はツーと口から血を流した。かろうじて急所はずらしたが、それでもダメージは大きい。
「美琴……あなたは!」
「そう。今のわたしには出来るんだよ」
 保奈美を見据え、美琴は淡々と語った。
「時空転移が」
「っ!」
 通常、時空転移装置を使わなければ時空転移は出来ない。それを美琴は単独でやったというのか!?
 
 きっかけはこの時代に最初にやって来た美琴が座標がずれて出現したことだ。そんな事は今まで無かったのに。
原因を調査した結先生はある事に気づいた。美琴が時空転移を操る能力を有している事に。
 彼女が直樹の元に落ちたのも、彼女自身の願望が無意識化に働いた結果だ。



美琴は祐介に逢いたいと願っていた。だから直樹の元に落ちた。祐介と同じ遺伝子を持つ彼の元へ。
祐介本人の所に出現しなかったのはたまたまだろうか。
 そして現在。美琴は意識的に時空転移を行う事が出来るようになっていた。
といっても過去や未来に自在に行けるわけではなく、時間の流れを一瞬だけ遅くする事が出来るだけだ。
それでも他人から見れば、超スピードで動いたように見える。
「行くよ」
 再び美琴の背中に光の翼が生じる。
「くっ!」
 歯を食い縛った次の瞬間には、保奈美の身体は宙に舞っていた。
 宙でバランスを取り、かろうじて倒れるのは避ける。
 何とか致命傷だけは防いだが、このままでは体力を奪われるだけだ。
 スピードが必要だ。美琴の時空転移よりも速いスピードが。
 仕方ない。
「美琴。わたしにこれを使わせるのはあなたが初めてよ」
 すっ、と懐から保奈美が包丁を差し出す。それを前方の美琴に突き出した。
 だが美琴は動じない。刃物だろうと何だろうと当たらなければどうということはない。
 そう。当てるにはスピードが必要だ。
 包丁を構えた保奈美の身体が蒼白い光に包まれる。凝縮した霊子。
「保奈美……! まさか、あなた…」
 美琴に戦慄が走った。
「そう。今のわたしには出来るのよ」
 凝縮した霊子を包丁に集め、保奈美が叫び、包丁のその力を解き放つ。

「 卍 解 !」

 光が爆発し、そして消え―
 保奈美の身体は黒いエプロンだけに包まれていた。裸黒エプロン。そして手にした包丁は長く伸びている。
「行くわよ」
 シュッ、と保奈美の体が消え、美琴の身体も消えた。
 そして次に現れたとき、二人の位置は入れ替わり、互いに頬から血を流している。
 互角!
 その事実に、美琴はぺろっと頬から流した血を舐め、呟く。
「すごい……すごいよほなみん」
「美琴も……こんなに出来るなんて。ちょっと意外だった」
 ニヤッ、と口の端を歪めて笑う美少女が二人。
 そして二人の少女はまた姿を消す。超スピード戦闘を見れる者など誰もいない。

「お化け屋敷にジェットコースター」
 祐介は今まで乗ってきたのを指折り数え、
「あと何がある?」
「あれ」
 文緒が指差した先にはゆっくり回転する観覧車。
「よし」
 早速、二人は観覧車に乗り込んで、向かい合って座った。
 どっちも景色など眺めず、ただお互いだけを見つめている。
「……なに見てんだ」
「祐介君」
 正直な文緒に祐介は薄く笑う。
「祐介君は?」
「文緒」



 そして二人は顔を寄せ、観覧車の中で唇を重ねた。重ねた唇は酸っぱくて甘くて。口を離すと、
「ね、ねえ」
「ん?」
 文緒が祐介の手を取り、自分の胸へと導く。
「す、すごく……ドキドキしてるの」
「ああ。分かるよ」
 文緒の柔らかい胸。奥がすごくドキドキと高鳴っている。
「俺も」
 祐介も文緒の手を取り、自分の股間へと導いた。
「ほら。そごく大きくなってる」
「本当だ……こんなにして」
 触れた祐介の股間は大きく膨らんでいた。
「鎮めて…あげる」
 彼の前にひざまずいた文緒は慣れた手つきでチャックを開け、飛び出した肉棒を迷いなくパクッとくわえた。
「んっ」
 痺れるような快感に、座ったままの祐介も腰を浮かせる。
 文緒の口の中は暖かく、そして柔らかくしめつけ。
 膣に挿入するのと同じ、いやそれ以上の快感だった。
「うぅ……」
 呻く彼の声を心地良く聞き、文緒はうっとりとした恍惚の表情で彼のモノを精一杯口の中でしごいた。
 くちゅくちゅと舌で嘗め回し、歯で軽く触れて刺激を与えていく。
 びく、びく、と震える腰の振動が直に口の中に伝わった。
 眼鏡の奥の瞳もうるうると潤み、そして真っ赤になっていた。
「んっ。も、もう!」
 祐介が爆発寸前になると、文緒はパッと口を離す。
「今日ね。ちょっと冒険してたんだ」
 そして立ち上がってスカートをたくし上げる。その中は何も履いていなかった。
ノーパンで遊園地デートしていたのです。その割れ目はもうジュクジュクに濡れ。
「大胆な……」
 微笑した祐介は文緒を抱き寄せ、膝の上に乗せて、股間を合わせた。
 スカートの中、二人の性器は自然に重なり―
「んっ!」
 ビクッ、と膝の上で文緒が飛び跳ねる。彼のモノが胎内にゆっくりと突き刺さり、埋まっていく。
「ハー。ハー」
 そして真っ赤な顔で眼鏡の奥の瞳を潤ませ、首に手を回して抱きついてきた。
 文緒の胸を顔に感じ、祐介も下からグッと腰を浮かせて突く。
「はんっ!」
 ガクガクと文緒の身体が小刻みに揺れ―
 きゅっと膣がしめつけ、たまらず祐介は精を放った。
「はあぁっ!」
 同時に絶頂に達した二人はぎゅっと抱き合う。
 丁度観覧車が一周し、扉を開けた。
 二人はすぐ離れ、祐介はチャックを閉め、文緒はスカートを直し、観覧車をそそくさと降りた。
二人とも赤い顔で。
 観覧車が一周する間の出来事である。
ツー、とスカートの中、文緒の太股に精液が流れていく。
「あ……祐介君のが……流れてきちゃった」
 ふふっと笑う文緒に、祐介もにこやかに笑い返した。
 そして二人はさらにカーッと真っ赤になる。



「青い空……」
 寝転び、保奈美は空を見上げていた。裸黒エプロンから元の服装に戻っている。
「ねえ美琴。未来の空もこんなに青いの?」
 隣で同じく寝転んでいる美琴に呼びかける。だが返事はない。
「美琴?」
 上半身を上げて美琴の顔を見下ろす。その瞳は静かに閉じられていた。
「そう……寝ちゃったんだね。ゆっくり眠って」
 美琴のお腹は血に染まり、管が飛び出している。大腸だろうか。
 そしてまた青空を見上げ、考える。
 彼もこの青空を見ているのだろうかと。


あなたは今どこで何をしてますか?
この空の続く所にいますか?

いままでは私の心を埋めていたもの 失って初めて気づいた
こんなにも私を支えてくれていたこと
こんなにも笑顔をくれていたこと。
失ってしまった代償は、とてつもなく大きすぎて
取り戻そうと必死に、手にももしてもがくけれど…。
まるで風のようにすり抜けて 届きそうで届かない。

孤独と絶望に胸を締め付けるね。心が壊れそうになるけど
思い出に残るあなたの笑顔が 私をいつも励ましてくれる。

もう一度 あの頃に戻ろう 今度はきっと大丈夫。
いつも傍で笑っていよう あなたのすぐ傍で……。

あなたは今どこで何をしてますか?
この空の続く場所にいますか?
いつものように笑顔でいてくれますか?
今はただ、それを願い続ける



 一週間が過ぎた。祐介と文緒のデートから。そして美琴が入院してから。
 今日も祐介は遊園地にいた。ただし今日の相手は保奈美。彼女から頼んだ最後のデート。
 約束の時間より早く祐介は来ていた。そして時間ぴったり、
「お待たせ」
 保奈美も来た。その姿を見て、祐介は目を見張る。
「なおくんが先に来るなんて珍しいね」
「いやお前……」
 呆然と視線が保奈美のお腹に移る。
 そのお腹は大きく膨らんでいた。
「あ、これ」
 ニコリ、と微笑み、保奈美は自分の大きくなったお腹を撫でた。
「赤ちゃんだよ」