5-675 名前: 浴衣美人を脱がせたら (にられば) [sage] 投稿日: 2006/12/06(水) 23:47:09 ID:j14Vj8m4

そして楽しい温泉旅行も終わった。
そして二人は渋垣家の前にいる。
「久しぶりだな………」
「そうだね」
久しぶりの実家を前に何か感慨深い直樹。
「そういえば保奈美の実家の方には顔出さなくていいのか?」
「大丈夫だよ。スーパーとかで結構会ったりするんだよ」
「でもなぁ………」
「それに渋垣さんの所にさえ、ろくに行かないのに私の実家に気を使うのも変だよ」
「そういうものかぁ」
「そうなの」
直樹はそのまま、玄関を開けて渋垣家に乗り込む。
「ただいまっ!!」
嘗て知ったるなんとやら、遠慮無く上がりこむ直樹。
その時、階段から降りてきた茉理とかち合った。
「あっ、こんにちわ保奈美さん………とその荷物持ち」
「荷物持ちという名の恋人すらいない従妹よ、久しぶりだな」
明らかに悪意を感じた直樹はすかさず言い返す。
「よう、直樹っ」
リビングから源三が顔を出す。
「近いんだからたまには帰って来い。一人ではオチオチ酒も飲んでられん」
「以前より量が増えてるでしょ………」
「叔父様、週末には出来るだけ伺うようにしますから………処で叔母様は………」
「足りない物があるとかでスーパーに行ってるから、もう直ぐ帰ってくるだろう」
そしてガシっと直樹の首根っこ掴む。
「ちょっ、ちょっと待て」
「いいから付き合え」
無理やり直樹を引っ張っていく。
その時、玄関が開く。
「ただいま。あら保奈美ちゃん、いらっしゃい」
「叔母様、頼まれてた物買ってきましたよ」
そして膨らんだ紙袋を渡す。
その中身は旅行中に直樹に飲ませた『栄養ドリンク』の類だった。



そして一年程経ったある日の事。
「大当たりぃっ!!」
鈴の音が響き渡る商店街。
「えっ、えーーーーっ」
予想だにしなかった大賞の当選に驚いて腰を抜かさんばかりに大声を上げてしまっ
たのは渋垣茉理その人だ。 
ツアーとはいえ二人分のチケットが当たってしまった。
「どうしよう………私パスポートとか持ってないし………」
そして茉理はそれを両親にプレゼントする事に決めた。
そうと決まれば話は早い。
何はともあれそのまま帰宅する。
「ヨーロッパ旅行なんてビックリするかな、お父さんとお母さんっ!!」
軽い足取りで玄関を開ける。
「ただいまっ」
靴を脱いでそのままリビングに入ると何故かそこには直樹がいた。
「あれ、直樹。珍しいわね、今日はどうしたの?」
「いや、何でも大切な話があるって英理さんに呼び出された」
「保奈美さんは?」
「実家によって来るからもう直ぐ来ると思うぞ」
ここで茉理は腰に手を当てハァッと何時もの溜息。
「赤ちゃん抱えた奥さんを一人で実家に帰省させるなんて甲斐性が無いと言うのか………」
そう、つい一月程前に久住直樹、保奈美夫妻に第1子が誕生したのだ。
だからと言って人間はその本質を変える事が出来ない。
「そんなお前にはパートナーになってくれる甲斐性のある男が………ぐはぁっ」
直樹の足をグリグリと踏みつける茉理。
「ふん、私にはちひろがいればいいのっ!!」
「ちひろちゃんもあんなに可愛いのに茉理の所為で恋人が作れないのか」
そんなおバカな会話を繰り返しているとガチャッと玄関が開く音。
渋垣夫妻に自分の子供をあやしている保奈美も一緒のようだ。

そして源三が話を切り出した。
「まあなんだ。その、子供が出来た」
その発言に直樹と茉理が凍りついた。
「おいおい………」
「あの………お母さん………」
茉理は恐る恐る母親に視線を移す。
「三ヶ月ですって」
腹部をさすりながら幸せそうに微笑む英理。

妊娠している英理に無理をさせる訳にもいかない。
結局の処、欧州旅行は久住夫婦にプレゼントする事になった。
そして旅行当日。
そこは渋垣家の門前。
そこにはタクシーが止まっている。
「叔母様、宜しくお願い致します」
保奈美が抱いている赤ちゃんをそっと抱かかえる英理。
「茉理以来だから練習にもなるから助かるわ」
数ヵ月後の出産後を見越しての予行演習をおこなうのだ。。
「何しろ二十年ぶりだからな」
相変わらずの笑顔の源三。
直樹は英理の胸に抱かれている我が子を覗き込んで言った。
「茉理おばちゃんの言うことをよく聞くんだぞ」
「おばちゃん言うなぁっ!!」
茉理は直樹の足元を踏みつけてやろうとしたが直樹は素早くタクシーに乗り込んでしまっった。
「直樹ぃ、帰ったら覚えてなさい!!」
「もう、なおくんったら………では叔父様、叔母様、茉理ちゃん、行って参ります」
「安心してください保奈美さん」
タクシーは保奈美を乗せるとゆっくりと動き出していった。



「大丈夫かな」
なんだか落ち着かない直樹。
ジャンボ機の座席で何やら落ち着かない直樹。
もう少しで離陸予定時間になろうとしている。
「簡単には落ちないよ、なおくん」
「そうじゃなくて、どうも子供預けてるせいか不安で不安で………」
意外と子煩悩な直樹。
「大丈夫だよ。なおくんも渋垣さんちで大きくなったんだから心配ないよ」
「ま、今更悩んでも仕方ないか。それより何を買ってかえろう………」
今度は子供のお土産に頭を悩ます直樹。
「もう、なおくんったら」
いつもと変わらない直樹に保奈美は思わず顔が綻んでしまうのだった。

浴衣美人を脱がせたら 完