5-641 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2006/12/03(日) 14:35:52 ID:Xqpg74bE

 早朝(と言ってももう十時だけど)のノックに起こされ、急いで手近な
シャツを着てスカートをはいて扉を開けると――
 「お、おはよう秋山さん……」
 ――これ以上ないくらいに意外な人物が、これ以上ないくらいに間が悪
そうな顔をしながら立っていた。
 「藤枝……さん?」どうして藤枝さんが寮に?とか、どうやって入った
の? とか一瞬にして沢山の疑問が頭に浮かんだけど、まだ何処か寝ぼけ
ていたらしい私は律儀に挨拶を返していた「お、おはよう……」
 「あ、あの、朝早くからゴメンね? その……」
 「?」
 しかも、いつになく歯切れが悪い。
 「……えっと、実はね? その、さっき広瀬君から電話があって……」
 「??」
 「……の、野々原先生から連絡があって、天文部員に集まって欲しい
って仰ってたそうなんだけど、えっと、天ヶ崎さんと連絡が取れないらし
くって……」
 「天ヶ崎さん? だったら広瀬君が直接聞きに来ればいいのに。実は昨
日の夜から私のところで一緒に勉強して、そのまま泊まってるのよ。いま
起こして……」
 「え!? あ……待って秋山さん!」
 「?」



 「そ、それと……あの、なおくんも昨日から行方不明で……一応表向き
は広瀬君の部屋に居ることになってるらしいんだけど……それで、えっと、
茉理ちゃんには聞きにくいから、私の所に電話が来たんだけど……」
 「……………………………」
 すぅ、と顔から血の気が引いていくのが自分でも判る。
 「こ、こういうことを聞くのは凄く失礼だって、本当はわかっているん
だけど……そ、その、いま秋山さんが着てるシャツって、私の見間違いじ
ゃなかったら、な、なおくんのだよ……ね?」
 「……………………………」
 「……………………………」
 「……………………………」
 「……………………………」
 「……………………あ……ああっ!?」
 かぁ、と今度は全身の血液が首から上へと集まってくる。視界の殆どを
占めている藤枝さんも真っ赤に、ますます困った顔になってゆく。
 「わ、私の用事はそれだけだか……」
 「ちょ、ちょっと待っててっ!」

 (ばたん!)

 「起きてっ! ねぇ起きてったら起きてったら早く起きてよぉっ!!」
 「……ほぇ?」
 「二回言うな、燃や……じゃなくって四回か。なんだよ朝っぱらから騒々
しい……」
 「もう十時よ! というか悠長に寝てる場合じゃないんだってば! 藤枝
さんが来てるの!!」



 「藤枝……って保奈美か。保奈美……ほなみ……ほなみん……ぐぅ。」
 「だから寝るなって言ってるでしょっ!? 彼女、久住くんを呼びに来て
るんだってばぁっ!!」
 「…………………………」
 「…………………………」
 「…………………………」
 「…………………………」
 「………………ぬぁぁぁにぃぃぃぃっ!?」
 「あ、あわわ………むぎゅっ!?」


 (とりあず服を……服……俺のシャツは!?)
 (これ! はい!)
 (って、何でお前が着てるんだよっ!)
 (そんな事よりも私のショーツっ、ブラっ! ああっ、よく考えたら髪も
ボサボサじゃないっ!)
 (え? え? え?)
 (ほら天ヶ崎さんも早く! 外で藤枝さんが待ってるんだってるのよ!!)
 (え? えぇーーーーーーっ!?)
 (驚いてる暇があったら動け! ってゆーか委員長、それって美琴のじゃ
ないのか、明らかにブカブカでサイズが合って……)
 (あ……じゃなくて余計なお世話よっ、このスケベぇぇぇっ!!)
 (ぐはっ!?)


 「…………………………………………………ばか。」