5-601 名前: 神楽スキー [sage] 投稿日: 2006/11/30(木) 19:43:32 ID:08TFE934

「・・・・どうしてもお礼を言っておきたくて」
「うん」
「ああ」

全てが終わった後、直樹と、そして優希と名乗った少女がレティの言葉にしんみりと頷く。

「お二人と握手させてもらっていいですか?」
「「もちろん」」

奇妙な縁で出会った本来ら交わるはずのなかった3人の運命。
そして、優希は意味深に笑って直樹とレティから数歩下がって見守る。

「帰るんだな?」
「はい・・・・」

直樹の問いに目の前に立つ金の髪の少女が潤んだ瞳で頷く。
レティことレティシア・ラ・ミュウ・シンフォニアが今居る世界とは別の世界から事故によって流れ着いた異世界のお姫様。

―――――わたし・・・・―――――

ボウッとなりながら直樹を見つめ続ける。
この少年は何も知らない自分を元の世界に戻すべく奔走してくれた。
見知らぬ土地での少年のぶっきらぼうな優しさが嬉しかった。面倒くさそうにボヤきながらも無知な自分を見捨てずに最後まで助けてくれた少年にいつしか惹かれていた。

「これで、お別れですね・・・・」

そしてそれは、なんて皮肉な事なんだろうか? 自分を元の世界に帰す為のこの一連の事件でこの少年を好きになっていた事に気付くなんて、恋してしまった人とお別れする為に自分は頑張っていた事になる。

「ああ・・・・」

蒼の瞳がジっと直樹を見上げる。その濡れた瞳の意味に少年は気づいているのだろうか? 
やや不機嫌そうに呟き、美しい宝石のようなその瞳から目を反らした。

「ナオキさん、本当に御世話になりました。わたしこのご恩は一生忘れません」
「・・・・オレも忘れないよ」

ぶっきらぼうでそれでも自分を気遣う直樹の言葉にレティが目を見張り・・・・涙を一滴こぼし静かに頷いた。

「・・・・・はい。ナオキさん」
(・・・・・・・・準備はいい?)

やや遠慮したようなラピスの声が響き目の前に立体映像が浮かび上がる。
いよいよレティが元の世界に戻るための準備が整ったようだ。

―――――本当にこのまま行かせていいのか?―――――

直樹の心の中でもう一人の自分が喚く。恋する少女が手の届かない所に行ってしまう。きっともう2度と会えない。
レティがそうであったように直樹もまたこの一連の事件で目の前のどこか危なっかしくて放っておけない王女様を好きになってしまっていた。
だけど彼女は帰らなければならない。帰るべき場所が、待っている家族が大切な人たちが居る。
ここで自分の気持ちを打ち明けてどうなる? きっと彼女を苦しめるだけだ。

「さようなら・・・・」

視線が数瞬絡み合い、恋した少女が背を向ける。行ってしまう。帰ってしまう。



「・・・・・!!」

そう思った瞬間、自制も理性も遠慮も何もかも忘れ、直樹はその小さな背中を背後から抱きしめていた。

「な・・・・おき・・・・さん?」

自分の胸の中で呆然とした声で言葉が呟かれ、その小さな背中は直樹の腕の中で抵抗もせずにただ抱きしめられている。

「お、俺はお前が・・・・っ・・・・す、好きなんだ」

何の捻りもないただただ、自分の思いの丈をぶつける不器用な告白、レティの背中が僅かに震える。
その細い手がそっと自分の前に回された直樹の大きな手を握りしめた。

「ナオキさん・・・・わたしも、わたしも・・・・ナオキさんのことが・・・・好きです」

囁くような僅かな声。だがたしかにレティと直樹の想いが通じ合った瞬間だった。

「でも・・・・でも・・・・わたしは・・・・」

恋する少女の言葉が揺れ、直樹の手を握りしめた細い指に僅かに力がこもる。

「あ・・・・っ」

もう止まれなかった。
そっと肩に手を回し、レティを自分の方に振り向かせると直樹は身を屈めその桜色の唇に自分のそれを押しつける。
レティの驚きの声が弾けて直樹の口内に溶け消え、驚きに見開かれた蒼い瞳が潤み、わずかに揺れてそっと閉じられた。

遠くで雷が鳴った。

「・・・・・・・・・・・・はぁ」

どれほどの時間、唇を重ねていたのだろうか? 切なげな吐息を漏らし、互いに別離を惜しみながら二人の唇が別れを告げる。

「・・・・・・・・」

無言で見つめ合う。濡れた蒼い瞳が切なげに想い人の少年を見上げ、寂しげに細められた漆黒の瞳が異世界のお姫様の悲しげな顔を見下ろす。
どちらも言葉は出ない。想いが通じ合ったばかりの恋人同士を待っているのはおそらくは永遠の別離。次元を越えて再び二人が会える可能性はないに等しい。

(レティ・・・・今日の0時まで時間を上げる。)

不意にラピスの言葉が二人の間に横たわる沈痛な静寂を打ち破った。

「え・・・・? ら、ラピスさん?」

驚き戸惑う姫君に、いつの間にか優希もラピスも姿を消し、言葉だけで小さな魔法使いは魔法をかける。

(あまり猶予はないけど・・・・こんな事しかできなくて、ごめんね)

本物の姫君にかけられる0時に解けるシンデレラの魔法。
カボチャの馬車もネズミの御者もない二人だけの舞踏会が、いま静かに幕を開けた。



「・・・・・・・」

電灯の消された部屋。夕方から降り出した雨音の響く直樹の自室に二人は無言で向き合っている。
ベッドにレティは顔を俯かせたまま腰掛け、直樹は椅子から立ち上がり、その細い肩にそっと手を置いた。
僅かに震え、心細げな顔が直樹の方を振り仰ぐ。

「・・・・・本当にいいのか?」

遠い雨音のみが響く室内の静寂を破り、直樹がレティに向けて問う。
レティの覚悟は先ほど聞いた。しかしそれでいいのかと迷いがある。もうすぐ別れを告げる自分のためにこのお姫様の大事な操を奪っていいのか? と・・・・

「・・・・はい」

静かに、しかりはっきりとレティははっきりと言葉を紡ぎ、まっすぐに直樹の目をその蒼い瞳で見据えた。

「お願いします。今晩だけでいいんです。私をナオキさんのものにしてください。」

恥じらいに頬を染め、それでも微塵の迷いもなくレティは覚悟を直樹へと示す。
自分を散々助けてくれたに想い人である少年に何も返せない事が心苦しい。自分はようやく想い結ばれた恋人に何もしてあげられないのが悲しい。
そして何よりも自分がそれを望んでいた。今宵ただ一夜だけでもいい。恋した少年との思い出が欲しい。

「後悔はしません。それとも私なんかではナオキさんは嫌ですか?」

悲しみに潤んだ蒼い瞳が自分を見上げるのを見て、直樹は覚悟を決めた。
そうさ。何を迷うことがある。自分の心は既にこの異世界のお姫様に奪われてしまっていると言うのに。

「ナオキさ・・・・っ」

悲しげに何か紡ごうとするレティの唇を奪い、言葉を封じる。

「嫌なわけないだろ? ・・・・好きだよレティ」

唇を離して悪戯っぽく笑うとすぐに表情を引き締めて真剣な想いを込めてそっと囁いた。

「・・・・・・・・うれしいです。」

感極まった声とともにサファイアを思わせる透き通った蒼の瞳が潤み、その眼の端に涙が浮かぶのを直樹は親指でそっと拭うと苦笑する

「泣き虫だな。レティは・・・・」
「もう、ナオキさんのせいなんですよ」

泣き笑いの表情のままレティが両の手をそっと直樹の首に回す。そのまま二人はベッドの上に静かに倒れ込んだ。

「あ・・・・ん・・・・」

重なる唇からレティの甘い声が漏れる。直樹は白と青の独特の衣服の上からその形良い胸の膨らみに手を置きゆっくりと動かしはじめた。
自分の胸に異性の手が初めて触れる感覚に戸惑い、恥じらい、それでもレティは直樹の行為を受け止め、やがて緩やかに胸の内から沸き上がる甘い感覚に醉っていく。

「は・・・・あ・・・・ナオキ・・・・さん」

口づけから解放されたレティの可愛い唇から漏れる切ない吐息と甘えた声に直樹が優しく微笑む。

「レティの胸、柔らかい。」
「そんな・・・・あっ・・・・恥ずかしい・・・・です。ん・・・・」

頬を赤らめ、直樹の視線から顔を反らせようとするレティの頬に手を添えて自分の方を仰がせ、再度唇を奪う。
唇を重ねるだけではない互いにとって初めての大人のキス。おずおずと差し出されるレティの舌を優しく吸い、互いの口内で甘く絡み合う。

「あっ・・・・はぁ・・・・こんな・・・・初めて・・・・です・・・・はあっ・・・・」



胸を焦がす想いが共鳴し、キスだけでどこまでも酔っていく。息が乱れ、思考が纏まらない。
直樹に優しくまさぐられる胸がたまらなく切ない。暖かい掌が胸の中心で円を描くたびに何か堅いモノが擦られるようになり。それがまた堪らないほどに甘い電流を発した。

「可愛いよ。レティ・・・・」

耳元に唇を寄せて囁くとレティが小さく喉を反らせる。僅かに胸を直樹の手に押しつけるように背中が仰け反った。

「はっ・・・・あっ・・・・ナオキさん・・・・ナオキさん・・・・」

うわごとのように幾度も直樹の名を呼び、小さく首を振るレティの額に、目蓋に口づけてゆく。
青の上衣の中にそっと手を差し入れ、白い上着の上から軽く胸の膨らみを愛撫すると、既に衣服の上から解るほど硬く浮き上がった頂が、高まるレティの性感を示していた。

「手を挙げて・・・・」

ゆっくりと頷いて両手を挙げるレティ。胸を覆う青の上衣をそっとたくし上げると手首まで押し上げる。

「あ・・・・あの・・・・」

まるで万歳のまま両手を拘束されたかのようになり戸惑うレティに悪戯っぽい笑みを浮かべると、そっと白いシャツのボタンを外してゆく。

「な、ナオキさん? あ、ああっ・・・・」

胸元を開かれ露わになった肌の上にゆっくりとキスを落としてゆく直樹に、戸惑いの言葉を遮られ、レティは白い肌の上に刻まれてゆく桜色のキス跡に堪らず甘く囀ってしまう。

「あ・・・・やっ・・・・こんな・・・・ああ・・・・」

レティは両手を頭上に掲げたまま、上半身に次々と打ち込まれる甘い電流の杭に切なげに首を振り、金色のポニーテールを揺らして可愛らしい悲鳴を上げた。

「あ、ああっ・・・・わ、私・・・・私・・・・ふあぁっ」

上着のボタンがすべて外され、レティの可愛いお臍まで露わになってもキスの雨は降り止まない。時折小さく跳ねるお腹にお臍にゆっくりと唇が吸い付き舌を這わせ、異世界の姫君を甘く可愛く鳴かせた。

「な、ナオキさん・・・・っ」

やがて腰に巻かれた赤い帯を解かれ、スカートのホックが外されると、さすがにレティも焦ったようにナオキの名を呼ぶ。
スッとキスを繰り返していた直樹が顔を上げ互いの視線が絡み合う。怯えるように揺れる蒼い瞳に安心させるように微笑み、そのままゆっくりと直樹の手がレティのスカートの中に両手を差し込んだ。

「・・・・・っ」

顔を真っ赤にして目を閉じ、瞼を震わせるレティをしばらく眺め、直樹はそのまま下着の両端に指をかけ、ゆっくりと引き下ろしていった。
僅かに湿った下着が震える両脚をすり抜け、閉じようと逡巡する両膝を抜け、ゆっくりと左足首から抜ける。

「レティ・・・・」
「あ・・・・」

声をかけられ涙目で直樹を振り仰ぐ、思わず恥じらいに膝を閉じると右の足首に引っかかった白い下着が小さく揺れた。

「綺麗だよ・・・・レティ」
「ナオキさん・・・・もうひどいです」

少し意地悪をしすぎたとレティに顔を寄せる直樹に、少しばかり拗ねた目で睨んでいたレティだが、甘い殺し文句に思わず頬を喜色に緩めてしまい、結局負け惜しみのように呟いた。

「ごめん・・・・な」
「ん・・・・」

幾度目かわからない口づけ。ただし謝罪の言葉を遮るようにレティのほうからのキス。

「別にいやじゃないんです。ナオキさんなら・・・・でも優しくして・・・・ください。」

重ねただけの唇を離し、驚いた目でレティを見つめる直樹に恥らいながらも柔らかく微笑む。



「ナオキさんとの・・・・その・・・・初めての想い出が、痛くて恐いだけなんて・・・・その・・・・」

耳や首まで赤くなりながらぼそぼそと呟くレティがたまらなく愛しくなり、直樹はその細い身体を抱きしめた。

「ごめん・・・・優しくする」
「はい・・・・」

ベッドの上に身を起こし、レティの身体をその胸にかき抱くとそっと愛撫を再開する。
白のブラの隙間に手掌を差し入れ胸の膨らみをそっと抑えて優しくさする。手掌に直接当たる硬い尖りが擦れレティが小さく悲鳴を上げた。

「痛かったか?」
「い、いえ・・・・あの・・・・そのそうじゃなくて・・・・」

真っ赤になって俯くレティの様子に思い至り、そのまま手掌の動きを再開する。

「あっ・・・・ナ、ナオキ・・・・さん・・・・あっ」
「いいんだよ。レティ・・・・もっと気持ちよくなって」
「そ、そんな・・・・はぁ」

ゆっくりとまだ発展途上の胸の膨らみが直樹の手の中で柔らかく形を変え、その心地よい感触に直樹は酔いながらも、レティに痛苦を与えないように優しく愛撫を繰り返した。
空いた手がそっと太股の内側に置かれ、指と掌全体を使って丹念に敏感なその部分をさすり、撫であげ、レティに宿っていた僅かな緊張と畏れを解きほぐしてゆく。

「あ・・・・はぁ・・・・わ、わたし・・・・なんだか変です・・・・ああ」

幼さの残る身体に加えられるいたわるような愛撫が、未知の感覚に戸惑っていた姫君の性行為への恐怖を取り去り、逆に眠っていた性感をゆっくりと目覚めさせ開花させていった。
既に甘く漏れる吐息を隠そうともせず、少年の愛撫を積極的に求めようとその細い両手を背に回し、身体をすり寄せる様にそのたくましい胸板にしがみつく。

クチュリ・・・・

「ん・・・・・」

ついに、誰も触れたことのないお姫様の秘めやかな花園に直樹の指が触れ、僅かに湿った音ともにレティの身体が反り返った。

「濡れてる・・・・」
「そんな・・・・いや・・・・恥ずかしいです」

恋する少年に自分の痴態を知られ、どこまでも純情な少女は恥じらいに目を伏せ、両手で顔を隠す。
そんな少女の姿を可愛らしく思いながらも直樹はその場所に触れた指の動きを休めず、そっと動かした。

クチュ・・・・クチュ・・・・クチュ

「あっ・・・・いや・・・・な、ナオキさん・・・・だめぇ・・・・」

しかし、レティにとってあまりにも恥ずかしい水音は止まってはくれず、むしろその音量を上げながら室内に淫らに響く。

「や・・・・いやぁっ・・・・」

小さな悲鳴が響いた。
思わず身を縮めると両手で直樹の手首を握りしめ、懇願するように激しく首を振った。金の髪のポニーテールが跳ねるように振られ、思わず直樹も手の動きを止める。
シトシトと外の雨音が互いに声一つあげない静寂の中やけに大きく響いた。

「はぁ・・・・はぁ・・・・はぁ・・・・」

レティは俯き、その小さな手で直樹の手首をギュッと握ったまま乱れた吐息に小さい肩を揺らす。

「レティ・・・・いやなのか?」
「はぁ・・・・ち、違うんです・・・・でも、でもこんなエッチな私・・・・ナオキさんに見られたく・・・・ない。」

俯いたまま目元を隠す少女。純金の髪から僅かに除くうなじと耳まで真っ赤に染まり、身体が小さく震えていた。



「馬鹿だな・・・・レティ。俺は嬉しいよ。俺の行為にレティの身体が応えてくれてるんだから・・・・」
「・・・・ホント・・・・ですか?」

恐る恐る仰ぎ見る。上目遣いに涙で濡れた蒼い瞳が見上げてくる。そんな心細げな様子の姫君に直樹は笑いかけると優しく口づけた。

「好きな女の子にこんな嘘はつかないさ。俺は・・・・」
「・・・・」

ポウ〜ッとした顔で直樹を見上げていたレティは無言で小さく頷くと握っていた手首からそっと手を離す。
全身から力を抜いて背中をベッドに預け、両手は両脇に力なく投げ出すとすべてを直樹に委ねるべく目を閉じた。

クチュ・・・・クチュ・・・・クチュ

「あっ・・・・ん・・・・はぁ・・・・」

想いを寄せる少年の指が触れる場所から沸き上がる身も心も蕩けてしまいそうな熱と甘い感覚にレティはどこまでも酔っていく。肌の上を伝う唇が舌が心地よくて、切なくて・・・・

「ああっ!!」

胸の頂、桜色の尖りをその唇に含まれた瞬間、その感覚は臨界に達し少年の頭を細い両腕で抱きしめ、身体を仰け反らせ甘く響く悲鳴を上げた。

「あっ・・・・あっ・・・・わ、わたし?」

軽い絶頂の波に意識を攫われ、直樹の頭を抱きしめたまま小刻みに身体を震わせる少女。
初めて経験したオルガスムスに戸惑い恥じらうレティの様子をうかがってた直樹がそっと身を離す。

「はぁ・・・・はぁ・・・・ナオキ・・・・さん?」

乱れた息の下、不安そうに自分の名を呼ぶ青い瞳の少女をまっすぐ見つめて、直樹が静かに問うた。

「そろそろ・・・・いいか?」
「あ・・・・」

直樹の問いを正しく理解し、小さく身体を震わせる。怖くないと言えば嘘になる。
漠然といつか好きになった人に捧げるだろうと思っていた純潔。それがこんなに早く、しかも異世界で、住む世界も違う男の人に捧げるなど想像も出来なかった。

「はい・・・」

それでも・・・・レティに後悔はない。自分が初めて恋した人。そしてすぐにお別れをしなければならない人。
だからこそ、今この時、この想いを大切に胸の奥にしまうために、この先自分がどれほどの時を生きようと自分がこの異世界の少年に恋した想いを忘れない為に・・・・



「お願いします。私をナオキさんの物にしてください。」

いつしか雨がやみ、雲間から月が姿を現す。
月の光が室内に差し込み、作り出す二人の影がゆっくりと一つになっていった。

「ん・・・・っ」

かすかに身体が震え、小さな苦鳴の声が響く。
直樹との情交により濡れ、わずかに開花したとは言え、まだ少女であるレティのそこは硬く閉じられていた。
腰の奥の甘い痺れと今すぐにでも少女の中に入りたいと言う欲望を無理矢理抑え込み、必死にレティを傷つけないように心を砕くが直樹自身女の人と交わった経験などない。

「ん・・・・くっ」

身を引き裂かれるような激痛。誰の侵入も許したことのない奥へ初めて男性を受け入れる痛みと苦しみ。
こればかりはどれほど直樹がレティを案じようと想おうとも肩代わりすることも共有する事すら出来ない。
それどころか痛苦にゆがむ少女とは裏腹に自分は例えようもないほどの心地よさに包まれてゆく。

「あ・・・・痛っ」

閉じられた瞼が震え、震える両手がきつくシーツを握りしめ掻き寄せる。唇を噛みしめ、それでもその端から漏れる悲鳴はレティを襲う痛苦の大きさを示していた。

「はっ・・・・はっ・・・・はっ・・・・」

荒い呼気がはき出される。
無限とも思える時間が過ぎ、ようやく何かを引き裂くような感覚とともに直樹自身がレティの奥まで導かれていた。

「レティ・・・・痛かったろう? ごめんな」

言葉を発することも出来ず、自分の下で、ただただ息を整えようと身を揺らす少女を見つめ直樹が辛そうに呟く。
繋がった部分から滲むレティの純潔の証がシーツを赤く染め、それが尚更に痛々しさを強調していた。

「はっ・・・・はっ・・・・ナ、ナオキさん、いいんです。」

涙の滲んだ目で直樹を見上げ、痛苦にゆがんだ顔を健気に笑みの形に変えて、恋した人によって少女から女に変わったお姫様が言葉を紡ぐ。

「私、嬉しいんです。ナオキさんと一つになれて・・・・ナオキさんを私の中で感じられて・・・・」
「レティ・・・・」

気がつくと直樹は堪らなくなってレティの小さな身体ををその胸の中に抱きしめていた。レティもまたそのたくましく暖かい胸板に頬をすり寄せる。
しばらくの間恋人たちは身じろぎもせずに抱き合い、互いの体温を感じながら結ばれた悦びに身と心を浸していた。

「ナオキさん・・・・動いてください。」

どれほどの時間そうしていただろうか? 直樹の胸からそっと顔を離し、レティが小さく呟く。

「レティ? そんな無理をしなくても・・・・」
「無理なんかじゃないです。」

彼女の身を案じる直樹の言葉を遮り、素直で優しくてしかし強情なお姫様はその強い意志の宿った瞳を恋人である少年に向けた。痛くないわけがない。苦しくないわけがない。だがそれでもレティは少年とのその先を望み求めた。

「わかった・・・・」



直樹は思う。この少女はなんて強いのだろう? 自分など比べものにもならない。最初に出会った時はどこか危なっかしくて、放っておけない少女だったのに・・・・

「んっ・・・・くっ・・・・んん」

ゆっくりと動き始める直樹に小さく呻くレティを見下ろしながらそれでも思う。
この子は強い・・・・でもそれでも自分はこの子を守ってあげたかった。いや今でも守りたいと心の一番大切な場所で思っている。

「ん・・・・な、ナオキ・・・・さん・・・・くうっ・・・・」

漏れ出る痛苦の苦鳴の中に、僅かに官能の響きを感じ取り、欲望のままに恋する少女を傷つけまいと必死に自制しながら直樹は動き続けた。

「ん・・・・ふっ・・・・わ、私・・・・あっ・・・・ああっ」

未だ痛みはあるものの、緩やかな動きと互いの心の内に溢れる想いの中ゆっくりとレティの身体に変化が訪れる。
漏れる声が次第に甘い響きを宿し、激痛に握りしめていたシーツを既に手放した掌は力なくシーツの上で揺れている。

「あ・・・・そ、そんな・・・・わ、私・・・・」

最初の痛みが消え、身体の奥からじわじわと沸き上がる官能に自分が夢中になっていることに気づきレティが恥じらった。
初めて男の人を受け入れたと言うのに、自分がどんどん淫らになって行くのに驚き、戸惑い、不安になる。

「あっ・・・・わ、わたし・・・・わたし、こんなエッチな子じゃ・・・・あ、ああっ!」

大きく深くなる腰の動き、そこから迸る甘美な電流に思わず直樹の背中に両手を回し縋り付いた。

「いいんだ・・・・レティ。もっと感じて欲しい」

自分にしがみつき押し寄せる官能に首を振るレティの髪をそっと撫でつけながら直樹は優しく囁き、腰の動きを早めてゆく。繋がった部分から響く水音もどんどんと大きく高まっていった。

「あっ・・・・あっ・・・・でも・・・・でも・・・・」

子宮の奥を優しくノックされ、自分の中を丹念にかき回され、すべてが初めて体感する感覚の嵐に翻弄され、高まる身体と性感を抑えることが出来ない。

「私・・・・私・・・・」

何より身体と心が求めてしまっている。恥ずかしいと思う。エッチだと思う。
でも、もっと直樹を感じたい。もっと直樹に愛して欲しい。もっと直樹と愛し合いたい。
心も体もどこまでも貪欲に直樹を求めてゆく。

「私・・・・も、もう・・・・」

直樹の背中に回した両手に力を込める。力なく揺れていた両脚が繋がりを求めようと直樹の腰に絡みついた。

「うっ・・・・」

限界が訪れたのは同時だった。
小さな呻きとともに直樹の身体が大きく震え、レティは縋り付いた両手と両脚に力を込める。
直樹の精の迸りを体奥に感じながら、まっ白に染まっていく視界の中、レティは意識を手放した。



「・・・・・」

翌朝・・・・直樹は手の中に残った赤いリボンをぼんやりと見つめる。
目が覚めたとき、あの異世界のお姫様の姿は既になく。自分の手にはそのリボンだけが残されていた

「・・・・くっ」

拳に力を込めただ一つレティの温もりを残すその赤い布を握りしめる。
そう、魔法は解けてしまった。自分と彼女を繋ぎ止めていた深夜0時までのシンデレラの魔法。
だが・・・・

「ふざけるな・・・・」

どうしようもない怒りとともに言葉が漏れる。

「ふざけるなよ。レティ・・・・俺がこんな布きれで満足する男に見えるか?」

もはやこの世界のどこにも居ない恋した少女に向けて直樹は不敵な笑みを浮かべた。
そうさ。自分はあの少女をこんな品物一つで思い出に変えてしまえるほど諦めのいい人間ではない。

「待ってろ・・・・絶対に迎えに行ってやる」

そうさ。シンデレラはガラスの靴を残していった。
なら俺はそのガラスの靴を手がかりにハッピーエンドを迎えるだけだ。

「異世界がなんだ。お姫様がどうした。」

住んでる世界も身分の差も関係ない。こっちの世界には未来を救うために時間を越えてきた人たちだっているんだ。
恋をかなえるために世界を越える野郎がいたってきっとおかしくはない。俺は赤いリボンを握り締め、そこに残る彼女の温もりに固く誓った。