5-572 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2006/11/28(火) 02:32:41 ID:0nxy1CNE

 その日のトラットリア左門での夕食は、いつもと同じように和気藹々とした
雰囲気で和やかに進んでいた。
 「これは、何というお魚なんでしょうか?」
 「同じ海に住む生き物だけど正確には魚類じゃなくて節足動物……で良かっ
たのかな? 蟹だよ、ミアちゃん。」
 「「蟹?」」とハモる月人コンビ。
 「ああ。」と達哉が引き継ぐ「海の中を泳ぐんじゃ無くって、六本の脚で海
底を歩きながら小魚とかを食べるんだ。フィーナは、まだ見たことなたったっ
け?」
 「ええ、それは……この前頂いたエビ……みたいなものなのかしら?」
 「う〜ん……」と唸っているのは、珍しく仕事が早く終わったさやか「外骨
格生物、という意味では似ているとも言えますけど……見た目は、こんな感じ
なんですよ。」
 と両手を使い影絵の要領で蟹の形を作ってみるも、蟹という生物そのものを
知らない姫君ととその侍従はいまひとつピンと来ないご様子。
 「お、お姉ちゃん……それじゃちょっとわかりづらいんじゃないかな?」
 と達哉と一緒に苦笑を浮かべる麻衣。
 「確かに口で説明するは、ちょいと酷かな。」と左門氏「なんなら、後で現
物を見てみるかい? いまは冷凍庫の中で氷漬けだが、明日の朝一番なら下拵
え前のヤツが丁度良いくらいに溶けてるだろ。」
 「ええ、是非。」
 「お願いしますー。」
 「でも、お世辞にも可愛いと言える姿形はしていないからね?」と仁「噛み
付いたりはしないけど、余り過度な期待はしない方が良いと思うよ。」
 「あはは、確かに凶悪そうな顔してるもんね。」
 と、そんな会話にも加わらず、無言のまま俯き加減で食事を続けている人間
が約一名。
 「……菜月さんは、どうかなさったんでしょうか?」
 「んぐっ!」と小さく跳ね上がる菜月はウエイトレス姿「……ななな、なん
でもないヨー?」
 「そいうや、さっきから静かだな。仕事中は特に変わった様子もなかったと
思うんだけど………」



 「僕の調理に抜かりがあるとも思えないんだが……もしかしてコショウの固
まりでも入ってたかな?」
 「そんなことないですよ。とっても美味しいです。ね、菜月ちゃん?」
 「う、うん……」
 「す、少し疲れているのでは無いかしら? 菜月はほら、進学へ向けての準
備も色々あるのだし。」
 「そそそ、そうカナ……」
 「こいつ、こう見えても昔から猪突猛進で生真面目な所があるからな。張り
切りすぎて睡眠時間が足りなくなって来てるんじゃないのか?」
 「お兄ちゃん!」自然と語気が強くなる麻衣「菜月ちゃんは一生懸命頑張っ
てるだけなのに、そんな言い方は酷いよ!」
 「………麻衣?」
 「はいはい、兄妹喧嘩はそこまで。」と穏やかな声と表情で割ってはいるさ
やか「当の菜月ちゃんが困っちゃってるじゃない?」
 「あ……」
 「わ、悪い……」
 「あ……ううん、良いよ。全然気にした無いから……」
 「だが、確かに菜月は何事も気負いし過ぎる所があるね。」と再び仁「目標
に向かって努力をするのは良いことだけど、少なくても此処にいるみんなは応
援してくれる味方なんだから、ちょっと位は頼ってくれると嬉しいかな。」
 「あ……うん……ごめん……」
 「そうだ!」ぽん、と手を叩きながら笑顔になる麻衣「今晩、菜月ちゃんの
お部屋に行っても良い?」
 「………………………え゛?」
 「夏休みなんだし、たまには夜更かしして女の子二人で色々お喋りとかどう
かな? ストレス発散には最適だと思うよ?」
 「あ……えっと……でも……」
 「そう……ね、私も良い考えだと思うわ。お姉ちゃんが数に入ってないっぽ
いのが、ちょぉーっと気になるけど?」
 「だぁって、私と菜月ちゃんはお酒飲まないんだもん。ね、ね、良いでしょ
菜月ちゃん?」
 「………………………………う、うん」
 嬉しそうにはしゃぐ麻衣と、真っ赤になって俯く菜月。そんな二人の少女の
様子を、フィーナは少し寂しげに見つめていた。



 「はむっ………ん……ん……」
 「んん……む……んん……」
 カーテン越しに仄かな月明かりが斜めに照らし出したベッドの上。寄り添う
ように腰掛けたパジャマ姿の菜月と麻衣は腕を絡ませて顔だけを向け合うよう
にしながら、互いの唇を撫で合うかのような口づけをしている。
 「………んぁっ………あ、あのさ、麻衣?」
  解放された菜月の唇は二人の少女の唾液が混ざり合った淫液でテラテラと濡
れ光っており、既に頬には微かな火照りが見て取られる。だが菜月自身の中には
倒錯的な関係を深める事への戸惑いが残っていた。『あの時』は自慰の残り火に
加え達哉達の行為にあてられ流されてしまったが、恋愛感情すら伴っていない者
同士が同性相手に、しかも目先の性欲だけを貪るような真似を繰り返す事が正し
いとは到底思えないのだ。
 「なぁにぃ、菜月ちゃん……?」
 麻衣の柔らかい舌先が唾液の跡を残しつつ菜月の頬を這い回っている。ちゅ、
ちゅっと時折接吻を繰り返しながら小さな唇は耳を目指している。
 「や、やっぱり女の子同士でこんな……ひゃっん!?」
 うなじの辺りを吸われ、思わず声が上がってしまう。
 「菜月ちゃん、可愛いぃ……」
 「んぁぁぁぁぁぁぁぁん!?」
 続けて耳たぶが口の中に含まれ舐め回される。熱い吐息で包まれ、ヌルヌルと
した舌でねぶられる未知の快感がゾクゾクと背筋さえ震わせる。
 「耳、弱いの? だったら優しくしてあげるね?」
 はむはむっ、と啄むみたいに耳の上を移動しながら無防備になった胸元に浅く
手を差し込んで撫でる。
 「ま、麻衣? お願いだから、んあっ、ちょっ……聞いて?」
 「だぁ〜め」耳に熱い吐息を吹きかける麻衣「菜月ちゃん、嘘つきだから何も
聞いてあげないもん。ほんとはぁ、もっと気持ちよくなりたいんでしょ?」
 「そんな、違………ひゃん!」
 「ホントに嫌だったら、逃げて良いよ? 菜月ちゃんの方が背も高いし力持ち
でしょ? 菜月ちゃんが、逃げる位に嫌がったら、私は素直に諦めるよ? もう
菜月ちゃんの体に触ったりしないし、キスもしないって約束するよ?」
 「え……? で、でも……」



 菜月の中で芽生える僅かな戸惑い。こんな関係は間違っているのだと態度で示
し実力行使で訴えれば開放してくれるのだと麻衣は言う。だが自分より年下で明
らかに華奢な麻衣を相手に腕力(家業の手伝いで多少は自信もある)に振るって
しまったりして良いのだろうか? それでこの場は凌げるのだとしても、その後
はどうなる? 元の姉妹みたいな関係に戻れるのか? 自分が全面的に完膚無き
までに菜月に拒絶されてしまったのだと麻衣が思い込んでしまったら? 心に傷
を負わせてしまったりしたら? そんな権利が自分にはあるのか? 或いはこの
まま、年上の自分が主導権を握って適度な距離感を保った方が………僅か数秒間
の逡巡の中、様々な思考が頭の中を駆け回る。
 「………菜月ちゃん?」
 「ふぇ?」
 「菜月ちゃんは、あれから一人でシてみた?」
 プツン、と菜月のパジャマの第一ボタンが外される。
 「したって……な、何を?」
 「そんなの、決まってるじゃない」何時の間に移動したのか、小さな舌が喉元
をピチャピチャと小刻みにくすぐる「オナニー、した?」
 「オ、オナ……っ!?」
 「オナニーだよ。言ってみて?」
 「で、でも……」
 「あの時は、菜月ちゃんの方から言ってたよね? オナニーって?」
 「あ、あれは……」
 「言ってみて? オ・ナ・ニ・ィ。」
 ちゅ、と顎の裏に小さなマーキングが焼き付けられる。
 「お、おお………」
 「……お?」
 「お………おなにぃ……」
 

 
 「そう、オナニーだよ。菜月ちゃんは、した?」
 「……う、ううん……」
 「ふぅん、そうなんだ?」素直じゃないなぁ、と言いたげに余裕のある声「私
はね、次の日にはしてたよ。いつもとおんなじ様に、夜中に、お部屋で、お兄ち
ゃんの事を考えながら。そしたらね?」
 「………うん」
 「お兄ちゃんの事を考えてた筈なのに、いつのまにか菜月ちゃんとしてる時の
こと思い出してたんだ。それで『いま、菜月ちゃんの体を触ってるんだ』って思
いながら指を動かして『菜月ちゃんがしてくれてるんだ』って想像したら、凄く
気持ち良かった。でも………やっぱり足りないの。」
 細い指が第二第三ボタンも外す。
 「こうやって菜月ちゃんと直に触れ合えないと、胸の中に穴が開いたみたいな
感じがして、気持ちいいのが『そこ』吸い込まれちゃう。一人が寂しいからオナ
ニーしてるのに、全然満たされない……」
 「い、いまは……どんな感じ?」
 「いまは……凄く満たされてると思う。こうやってると、菜月ちゃんに温かさ
に包まれてるみたいな気がして寂しくない。菜月ちゃんに触ってるだけなのに、
オナニーしてる時よりもずっと気持ちいいよ。菜月ちゃんは……どうかな?」
 菜月が思っていた通り、麻衣は達哉とフィーナのまぐわいを目の当たりにした
衝撃と喪失感から逃れるための矛先を、偶然そこに居合わせた菜月に向けている
らしかった。きっと、互いに同じ人物を想い自慰を行っていたという事実が奇妙
な親近感というか連帯感を生み出しているのだろう。
 「わ、私は………よくわかんない……よ……」
 そう、どうして良いのかわからない。力任せに麻衣を突き放してしまうのが正
しいのか、菜月自身で受け止めてあげるのか麻衣のためか。自分さえ目先の快楽
に流されないように気を配れば、やはり……
 「じゃあ分かるまで、もうちょっとだけ良い? 菜月ちゃん?」
 「す、少しだけ……なら……」



 「ほんと? 嬉しいな。」
 残りのボタンが外され、ブラを付けていない素肌が外気と少女の視線に直接晒
される。未だ何人にも許したことのない処女の神聖な双丘を最初に征服したのは
、本人も想像すらしていなかった隣家の年下の少女だった。
 「っ……!」
 「菜月ちゃん、綺麗……」
 大切に守られてきた素肌の触感を確かめるかのように、小さな手が羽毛のよう
なタッチで年齢以上に豊満な乳房を撫で回す。菜月自身に意志とは裏腹に、先刻
からの執拗な唇舌奉仕で発情した菜月の肉体は仄かな性臭と共に微量の汗を発散
させており、しっとりと潤いを帯びた皮膚は麻衣の手のひらに吸い付き滑らせ誘
惑する。
 「それに、柔らかぁい……」甘酒に酔ったみたいにウットリとした表情で同性
の性感帯を楽しむ麻衣「……凄く気持ちいいよ、菜月ちゃん。ほんとに素敵。こ
れが菜月ちゃんのおっぱいなんだ……」
 快感の源に引き寄せられるように視線を落とすと、夢中になって胸を愛撫して
いる麻衣の頭が見える。思わず抱きしめてしまいそうになる衝動を抑え込みなが
ら、菜月は快楽に耐え続ける。私はお姉ちゃんなんだから、と自分に言い聞かせ
ながら。
 「ね、菜月ちゃん?」そして子犬のようにキラキラと光る瞳「良い?」
 「ちょっとだけ……ね?」
 「うん!」
 あ〜ん、と大好物のアイスを舐める時の表情を見せながら化粧っ気のない麻衣
の舌と唇が向かう先は、ぷっくりと膨らんだ桃色の……
 「ん………あ……!」
 「ちゅ……ぴちゅ……ちゅぱ、菜月ちゃんの乳首、甘くて美味しい……」
 二人の夜は、まだ始まったばかりだ。