4-663 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2006/11/09(木) 03:42:46 ID:5A/qjz4L

 ノブを回すと、扉は簡単に開いた。
 「………あれ?」
 朝霧家の隣人にして殆ど家族同然の付き合いを長年続けてきた鷹見沢家の長
女・菜月といえど、本来なら勝手に上がり込むなどと言う礼を欠いた事はすべ
きではないとは分かっていたが、『鍵を掛け忘れている?』という朝霧家の人
々が犯すとは思えぬミスから感じる嫌な予感を払拭するのが優先だ。
 「達哉ぁー? 麻衣ぃー?」
 のどかな昼下がり。良く晴れた空から降り注ぐ柔らかな日差しで暖められた
家の中にコレと言った異常は見受けられないが、菜月は用心しながら一歩一歩
を踏みしめるようにして進む。
 「ミアちゃぁーん? フィーナぁー?」
 一通り一階を見回ってみても人の気配はない。台所では唯一労働中の炊飯器
がグチグチと蒸気を漏らしている以外に異変はないし、リビングも綺麗に片付
けられたままだし、庭に洗濯物を干しっぱなしにしている訳でもない。やはり
皆が揃って外出しているだけなのだろうか?
 「……一応、二階も見ておこう……かな?」
 本当に只の施錠忘れなら、それに超したことはない。だが念には念を、とい
う事で菜月は足音を忍ばせながら玄関脇の階段を昇った。



 「うーん……」
 が、やはりというか幸いというか家人の私室が並ぶ二階の廊下にも異変はな
さそうだ。が……
 「?」
 その中の一室、達哉の部屋の扉が僅かに開いていた。これまた本来なら同世
代の異性の部屋に無断で立ち入る菜月ではないのだが、ここまで来たら全ての
異常をチェックしておかないと落ち着かないというか安心できない。
 「……ちょっとだけ、ちょっと覗いて確かめるだけだからね?」
 誰にともなく言い訳をしながら菜月は慎重に部屋に近づき、音を立てないよ
う一差しで小突くようにして半開きの扉を開く………と。
 「………………………………あれ?」
 大きな窓から斜めに差し込む部屋の中。珍しく乱れたまま放置されたベッド
と、その上に達哉愛用のシャツが無造作に放り出してあった。
 「いつもミアちゃんが綺麗にしてたと思ったんだけど……」
 数歩、中に入って改めて周囲を見回しても他におかしな所はない。窓は閉ま
って施錠もされてるし室内を荒らされたような形跡も無し。更に何歩か進んだ
菜月は、ベッドの上に投げ出されているシャツを手に取ってみた。
 「…………………………」
 シワシワだが、不気味な黒い染みが付着していたり切り裂かれたような損傷
があるわけでもない。顔の高さまで持ち上げてから裏返してみても何かの痕跡
はなさそうだ。



 「い、一応……一応だからね? 念のため……なんだから………」
 幼い頃から一緒に成長し、つい数ヶ月前まではこれからもずっと一緒だと思
っていた少年が着ていた服。なんだか頬が熱くなってくる自分をちょっとだけ
恥じながら、菜月はシャツに顔を埋めるようにして匂いをかいでみた。
 「………匂い……達哉の、匂い……」
 毎日の洗濯のお陰でシャツからは清潔な洗浄剤の匂いしか残っていないはず
だ。が、想いを寄せている幼馴染みの残り香を求める菜月の嗅覚は、その中から
僅かな残滓を嗅ぎ取ることが出来た。或いはそれは菜月の秘めた恋心が作り上
げた幻想だったのかも知れないが、彼女にとっては紛れもない現実である。
 「達哉ぁ……」
 じわり、と瞼の裏が熱くなってくる。菜月は強い女の子だ。いや、強い女の
子でいなければならなかったのだ。何故なら達哉の知っている菜月は常に気丈
で、元気で、ちょっと短気で、明るい瞳を絶やさない少女であり、だからこそ
互いに助け合って対等に付き合えて何でも話せる『幼馴染み』でいられたから
だ。それが菜月が勝ち取った菜月だけに許されるポジションであり、さやかや
麻衣にさえ譲ったことがない居場所だった。それが……
 「……達哉……たつ、や……」
 抱かれたい。初めてを捧げたいとずっと想っていた少年の香りが麻薬のよう
に少女の脳に侵入し、全身の血液を沸騰させる。お腹の一番内側で静かに着い
た炎から、微弱な電気が体中の神経という神経をピリピリ刺激する。中でも繰
り返し慰め自分の指で覚醒させた最も敏感な部分が次々と火照ってくると、も
う切なさを抑えることなど出来なくなってしまう。



 「達哉……ごめんね?」
 せめてもの身代わりにと達哉のシャツを右腕で豊満な胸に抱き締めた菜月は
そのまま服とシャツ越しに掌で乳首の辺りをいつもより力強く愛撫する。あた
かも達哉のシャツに乳房を揉ませるようにしながら。
 「ごめんなさい……ごめ……ぅあっ!」
 固くなった乳首がブラの裏地で転がり擦れ、痛みに近い快感が菜月の全身を
駆けめぐり痙攣させる。自らが生んだ筈の快楽に耐えきれなくなった菜月は、
そのままベッドに倒れ込む。
 (こんなところ……誰かに見られたら……でも……)
 片思いの相手の部屋に忍び込み、しかも留守を良いことに自慰に耽ってしま
うなんて変態じみてる。いや、それ以前に微かな残り香だけを頼りに自分は抱
かれているのだと言い聞かせるなんて負け犬の思考そのものだ。そう頭で理解
しても右手は止まってくれないし、それどころか羞恥さえ快楽に変換させ彼女
を一層淫らに変貌させてしまう。達哉がフィーナを抱いたベッドの上で、達哉
の痕跡を追い求めながら菜月は菜月自身の手に翻弄され溺れてゆく。
 「んんっ、んんっ! んんんんんんんっ!!」
 胎児の様に丸まった体が快楽の波動に合わせて白魚のように跳び跳ね、裏返
り、シーツを更に乱してゆく。せめて声だけでも我慢しなくちゃと固く閉じた唇の隙
間から熱い喘ぎが漏れる度、入れ替わるようにして寝具に染み込んだ達哉の匂
いが肺いっぱいに広がる。菜月はなおも、少女の自慰では加えないような力で自
らの胸を乱暴に犯し続ける。



 (こんな……こんな……駄目なのに、駄目なのに……)
 短いスカートを捲り上げ、まるで何かから逃れるように藻掻く足の間、汗と
は明らかに違う液体がヌルヌルとショーツの中で広がり卑猥な水音が徐々に大
きくなってくる。それを聞き付けた菜月の左手は、それまで握りしめていたシ
ーツから離れ、獲物を追い詰めた毒蛇の如く鎌首をもたげて音もなく少女の股
間を目指す。その間も右手は左手の意図を隠すために容赦なく胸を責め立て続る。
 「んんっ、んんっ、んんっ! んっ…………ひぁぁぁぁっ!?」
 毒の牙は素早かった。体が大きく震えてから四肢が弛緩する迄の一瞬を正確
に捉えた細い指は脚を分け入り下着の中に入り込むと、熱い蜜を湛えた膣口に
愛液の力を借りて寸分の狂いもなく攻め入る。侵入者を焼き尽くすほどではな
いかと思うほどの熱を持った菜月の性器も、待ち侘びた御馳走を逃すまいと締
め上げ、本能が命じるままに『それ』を奥へ奥へと誘う律動を始めた。
 「ああんっ! ああんっ ああんっ! ああああ……っ!!」
 きゅぅきゅぅと締め付ける入り口と指が擦れる感触が、頭が真っ白になるほ
どの快感を生み出す。次々と溢れ出す愛液を泡立たせ、未だ誰にも許したこと
のない乙女の孔を押し広げんばかりの勢いで男の欲望の身代わりに出し入れを
繰り返す左手と、愛しい少年のシャツ越しに清純な膨らみを握りつぶそうとす
る右手に操られ、菜月は否応なく高みへと導かれてしまう。
 「あ………あああ………んぐぅぅぅぅぅぅぅっ……!!」
 どくん、と射精のように吹き出した熱い潮がショーツを内側から膨らませ染
み渡り、肛門に焼けるような熱を感じながら菜月は……



 『なんだよ、開けっ放しじゃないか。』
 『それに……真っ暗ね。ミアはまだ帰ってないのかしら?』

 「………って! 達哉と……フィーナっ!?」
 どうやら悠長(?)に余韻を楽しんでいる暇は無さそうだった。玄関辺りか
ら聞こえてきた会話が菜月が纏った体液を瞬間冷凍させてしまう。
 
 『麻衣の奴、また昼寝でもしてるのかな。しょうがないなぁ……』
 『そんな言い方をしてはいけないわ達哉。麻衣は自分の責任を簡単に投げ出
すような子じゃないし、こういう時にこそ何も言わずに優しく手をさしのべて
あげるのが家族という物だと思うのだけれど?』
 
 「えっと……えっと……どど、どうしよう? 窓は……駄目だし……」
 当の本人が在宅していないのに窓の鍵が開いている訳がない。窓伝いに部屋
へと戻るアイデアは却下。それに、それだと達哉の部屋の窓が開けっ放しにな
ってバレてしまう可能性が残る。ドアから出たりしたら玄関から丸見えだし、
あとは達哉達がリビングか何処かに移動する隙を狙って……


 『とりあえず、荷物を置きに(二階に)行こうか? 麻衣も部屋にいるかも
知れないし?』
 『で、でも………』
 『それと……その、ちょっとだけ……駄目かな?』
 『あ………………………ええ。いい、わ……』

 「んげっ!?」
 絶体絶命である

 (とんとんとんとんとん………)



 素直に出て行って、鍵がかかっていなかったので心配になって家の中を探して
いたと言い訳しておく……という選択肢は残念なことに菜月の頭に浮かばなかっ
た。自慰をしていた気恥ずかしさと後ろめたさが先に立ってしまい、只でさえ混
乱している頭脳から更に判断力を奪ってしまっているのだ。
 「と、とにかく隠れなきゃ! えっと、えと、えっとぉ……」とは言っても男
の子の部屋である。隠れられる場所など、そう簡単に「……ここ、こうなったら
、破れかぶれよっ!!」
 冷えた汗と愛液が動く度に広がってこの上なく不快だが、そんな事を気にして
いる場合ではない。菜月は大急ぎでベッドの下に潜り込んだ。

 (ぱたん)



 「フィーナ、鞄貸して。」
 「うん、ありがとう達哉。とりあえず、麻衣の様子を見に行きま…………きゃ!」
 達哉の部屋に鞄を置き、と早速次の行動に移ろうとしたフィーナは強い腕に後
ろから抱き締められて身動きが取れなくなってしまう。
 「達哉……だめ、よ……」
 「………良い匂いがするよ。」
 「嘘、汗臭いでしょう?」銀の髪に顔を埋め恋人の暖かさと柔らかさと甘い香
りに安らぎを求める達哉と、戸惑いを隠せないフィーナ「達哉だって知っている
でしょう? 今日は体育の授業で沢山走ったから……」
 「それでも、良い匂いだよ?」
 「でも……せめて着替えてから……」
 「じゃあ、俺が手伝ってあげるよ。」
 「手伝うって………あ……!」
 するり、と制服の胸元を飾っていたリボンが解かれて床に落ちる。背中越しで
見えていないというのに、達哉の手はセーラーの胸元を器用に開いてゆく。
 「た、達哉、ほんとうに駄目……んんっ!?」
 ささやなか抗議の声をあげようとしたフィーナの唇が、振り向いた瞬間に塞が
れる。そして舌が口内に、大きな手がブラの中に侵入してきて別々のリズムで王
女の理性を溶かしてゆく。少年の腕の中の安らぎと、性的に支配される悦びを知
ったフィーナの抵抗はみるみる弱くなってしまう。



 「………ん………ちゅ………達哉……」
 「さ、俺に任せて。」
 「でも……」
 「それとも、抱かれたくない? こんな俺は、イヤかな?」
 「そ、それは……」
 「俺は、無理強いは絶対しないよ? フィーナが本当に嫌だって言ったらすぐ
に止める。だから正直に言ってくれ。」
 「そ、そんなの……」揺れる濃緑の瞳「……卑怯……だわ。私が達哉を拒ん
だりするはずがないって、知っていて、そんなことを言うんだもの……」
 「それは、フィーナが相手だからだよ。フィーナだけは絶対に手放したくな
いんだ………二度と。」
 「………達哉………」
 「って、ちょっと格好付けすぎたかな?」
 「……どちらかというと」ふわり、と力が抜けた体が達哉に寄りかかる「その
言葉が嬉しくって、何でも許してしまう自分が嫌いになりそう……」
 「嫌いになる必要なんて無いよ。女の子なんだから、それで良いと思う。」
 そして、互いの真意を瞳で交わし合うかのように無言のまま静かに見つめ合う
二人。同じ夢を持ち同じ未来を願う達哉とフィーナの幸せそうな睨めっこは数分
間続き、やがて………
 「もう。やっぱり達哉は卑怯だわ。」
 ……お姫様の微笑みと、その後の熱い口づけに変わっていった。



 そして、その頃ベッドの下の菜月は、
 (あ、あはは〜……達哉とフィーナ、熱々ダネ……)
 (ど、どうしよっか? 菜月ちゃん?)
 (どうもこうも………っていうか、こんな所で何……してたのカナ?)
 (え、えっとぉ………その、いろいろ……)
 (い、いろいろね。いろいろ……)
 (うん、いろい……ぁん!?)
 (では、このヌルヌルは何かな? 麻衣ちゃん?)
 (ふぁ…! なな、菜月ちゃんだって大きな声で……えいっ♪) 
 (んんっ!)
 (あ……菜月ちゃんの………熱い……)
 (麻衣だって、奥の方は……よいしょっと。)
 (ひゃ!)
 (ほら。まだあったかい……ね?)
 (う、うん……菜月ちゃん?)
 (麻衣……)
 ((……………………………はぁ………))
 麻衣と二人で空しい溜息をついていた。