4-505 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2006/11/06(月) 03:00:02 ID:RRTO+6sy

 「はぁ〜い、今晩は肉じゃがに挑戦だよ〜♪」
 「ふむ、とりあえず見た目と匂いだけなら満点っぽい出来だな。」
 「……って、なに警戒してるのよぉ。我ながら会心の出来なんだから、ぶつ
くさ言ってないで早く食べてなさいって。」
 「いや、別に警戒してる訳じゃないが……」
 「いいからいいから。はい、ふーっ、ふーっ……」
 一時は命の危険さえ危ぶまれていた茉理だが文字通り「あれよあれよ」とい
う間に回復して今では病床に付く前と同じか、それ以上の元気さで直樹と一緒
に青春を謳歌しているかの様に見える。
 「直樹、あ〜んっ♪」
 「…………………………」
 「あ〜んっっ!!」
 「あ、あーん……」
 「どうぞ、召し上がれ♪」
 「ん、んぐんぐ……」
 「ね、ね、どう? 美味しい?」
 娘の無事を確認するや否や源三と英理はサッサと海外の仕事に戻ってしまい、
彼と茉理は公認の恋人同士兼同居人として誰にも邪魔されず二人で待ちに待っ
たにラブラブ&イチャイチャ(but節度も守って)の甘々毎日を送っている。



  ……筈だったのだが。
 「うふふ、『仲良きことは美しきかな』ですね〜。」
 「これで茉理ちゃんも免許皆伝、かな?」
 「どれどれ? うわ美味しぃ! こりゃアルコールが欲しくなるわ。」
 「久住くん良いなぁ。私も茉理ちゃんみたいな彼女が欲しいよぉ。」
 「えっと……天ヶ崎さん?」
 何故か、夕食の宴は満員状態だったりする。
 「ん? どうしたの久住、なんか難しい顔して?」
 「それは恭子のお行儀が悪いからですよ。仕事が終わったと言っても教師で
あり年上の大人であることに変わりはないんですから、もう少しキチンとして
貰わないと困ります。」
 「良いじゃない別にー。お見合いの席じゃあるまいし、御飯って言うのは難
しいこと抜きでみんなで楽しく賑やかに食べることが重要なの。栄養学的にも
そっちの方が消化に良いって事だし、ねぇ藤枝?」
 「私は……みんなが美味しそうに食べてくれるのが好きなだけですから。」
 「ほら見なさい。美味しい物を美味しく食べた者勝ちなのよ。」
 「もう恭子ったらぁ〜。」
 こんな具合に年長組であるはずの結と恭子が年に似合わぬ低次元な会話をし
つつ、茉理と保奈美が姉妹のように仲良くい作ったの料理を次々と平らげ、そ
の様子を美琴が眩しそうに見つめると言った光景が渋垣邸の日常になりつつあ
った。



 もちろん、直樹とて最初の頃はささやかな非難の意味も込めて色々遠回しなツ
ッコミを入れたりもしたのだが……
 
 『だって、なおくんに美味しい物を食べて欲しいからお料理を教えてくださいっ
て茉理ちゃんに頼まれたから。』

 『御両親が帰ってこられるまでは、私が保護者ですから。』

 『一応完治したとは思うし、その理由も見当は付いてるんだけど、なんてった
って治ったって言う臨床例自体が初めてだからねー。専門家兼主治医としても暫
くは様子を見ないと駄目だと思う訳なのよ。』
 
 『わわ、私は仁科先生に誘われて……』

 ……とまぁ尤もらしい理由(いいわけ? しかも約一名が微妙)が間髪入れず
に返されたり、当の茉理が本当に嬉しそうにしていたりと、直樹も無下に追い返
せなくなり半ば済し崩し的に現状に至っているのだ。
 「……ふぅ……」
 いま、こうして茉理が笑っていること。そして自分がその側に居られるだけで
も奇跡に近くて、周囲の人達も暖かく(?)支えてくれているのも幸せな事で、
これ以上を望むなんて罰当たりだと頭では理解していても、未だ青春真っ盛りな
直樹は溜息が止まらなかった。



 「……直樹?」
 賑やか(過ぎる)晩餐が終わった後、食事の後片付けが終了したと同時にイナ
ゴの大群が次の獲物を求めて飛び立つかのように(実に失礼)一斉に引き上げる
一行を見送った直樹は一人、浴槽の中で脱力しきっていた。
 「ん?」
 「い、一緒に入って……良いかな?」
 らしくない遠慮がちで弱気な声。まだ完全な治療法が確立していない凶暴なウ
イルスは、未だに二人の間に割り込み、徐々に心の繋がりを割こうと蠢いている
のだ。

 『体液感染』

 その重たい現実はまだ、茉理を解放してはくれていない。病魔の蔓延を防ぐた
め、ちひろと共に未来へと戻ったらしい新薬の臨床データが揃うまでは接触は出
来るだけ控えた方が良いというのが恭子の現段階での結論。セックスはおろかキ
スや抱擁、果ては手を握ると言ったささやかな触れあいでも汗を介した感染の可
能性が残る。無論、一緒に入浴するなど論外なのだが、茉理は手袋で付け直樹の
体には決して触れないよう背中を流しに毎晩のようにやってくる。恋人らしい事
が直樹にしてあげられない罪悪感と、それでも好きでいて貰いたいという願いが
生む悲痛な甲斐甲斐しさ。不治の病から奇跡の生還を成し遂げた筈の茉理は、強
くなるのと同じほどに弱くなってしまったのかも知れない。



 直樹とて、こんな茉理が見たいわけではない。彼の恋人は友達よりも近くて家
族よりは少しだけ遠い従妹。何時でも遠慮無く怒鳴り叱り、その裏で励まし喜び
を分かち合ってくれる『渋垣茉理』。文句一つ言わずに常に世話を焼いてくれる
従順なだけの女の子ではなく、いつでも元気で生意気で、その中で時折見せる健
気さが本当に可愛らしい、隣にいるだけで活力をくれる一つ年下の妹みたいな茉
理が好きになったのだ。
 「きょ、今日も背中、流してあげようかなって……」
 「うん、頼むよ。」
 相手の機嫌を上目遣いに伺うような、拒絶されることを恐れるような目を見る
のが怖い直樹は、俯いて茉理の姿を見ないようにしながら浴槽から出てそのまま
椅子に腰掛ける。そんなに気を遣うなよとか、どんな茉理でも好きだよ等という
陳腐な台詞はとっくの昔に使い切ったのだ。
 「……じゃあ、入るね?」
 背後で引き戸を開く音、閉じる音。裸足の茉理が恐る恐る近づく気配。熱気が
立ちこめる浴室内でも、背後で正座になる少女の優しい体温を感じられるのが嬉
しくて……切ない。
 「直樹」 声が吐息となって後頭部をくすぐる「ごめんね?」



「ば、馬鹿、なに謝ってるんだ! 茉理は何も悪……」

 (むにゅっ!)

 「……悪……い? へ?」
 タオルともスポンジとも違う滑らかで柔らかい感触。ゴムまりみたいに弾力が
あって自在に形が変わる何かを唐突に背中に押し付けられ、間抜けな声しかでな
い直樹。
 「どう直樹? 気持ちいいっしょー?」
 続けて細い腕が巻き付き、甘い匂いと共に頬同士が擦り合わさる。要するに茉
理が後ろから抱きついてきた……のだが。
 「な? な? な? ななっ!?」
 「あははっ。直樹、だーいすきっ!」
 じゃあ、あれは茉理の胸? などと考える暇もなく華奢な少女の体重が背中に
のし掛かって密着度が一気に増す、というか最高レベルに達する。事態が全く把
握できない直樹にお構いなしで、茉理は子供のようにはしゃぎながら裸体を擦り
付け喜びを表現する。
 「ま、茉理……?」
 「帰りに仁科先生が言ってくれたんだ。培養の結果でもウイルスは全然見
つからなかったって! もう直接触っても大丈夫でしょうって!!」
 「それならそうと早く……」
 「だって直樹の驚く顔が見たかったんだもん。それにさっき謝ったじゃん。ご
めんねって。」
 悪びれた様子もなく、本当に嬉しそうな声。



 「だからって、お前……」
 「それとぉ……」きゅっ、と抱きつく力が更に強くなる「……こんな風に抱き
ついてみたかったんだ。面と向かって言おうとも思っても、その、照れちゃいそ
うだから……直樹?」
 「うん?」
 「いままで、ありがとね?」
 「あ、改まって言うほどの事かっつーの! 俺は、お前は絶対大丈夫だって信
じてたから全然平気だったに決まってるだろ。」
 「ホントにぃ? 全っ然、無理してなかった?」
 どこか面白がってるような声色こそ、直樹が聞きたい聞きたいと思っていた茉
理そのもの。自然と直樹も以前と同じ減らず口にシフトしていく。
 「おうともよ! 全っっ然平気だった。俺様はな、昔っから太平洋並の心の広
さと深さを兼ね備えていて……」
 「とかなんとか入ってる割には……一番正直なところが我慢できませんでした
よーってピクピクしてるけどぉ?」
 回復イコールセックス可能。という安易な期待が無かったわけではないが、ど
ちらかというと女の子の柔らかさに勝手に反応してしまっているムスコ。
 「ここ、これはだな。自律神経の一時的な混乱が引き起こす……」
 「はいはい。オヤジセンスのボケは良いから」と呆れ顔になる茉理「あたしだ
ってその、早く直樹としたいけど……復帰第一戦がお風呂場でっていうのは流石
にヤだからね?」
 「お、おう……」
 「で…でも、このままお部屋に行ったら、直樹がドーブツみたいにムードもヘ
ッタクレも無いエッチしそうだし、いままでずっと我慢させてきて少しは可哀相
かなーとか思ったりもするし……」
 はぁ、と熱い溜息が直樹の頬をくすぐる。
 「……仕方ないから……口で、してあげっよかなー?」



 「はむっ。」
 太股の間に座った茉理は、限界まで膨張して透明な滴を沸き上がらせている直
樹の先端をいきなり咥え込んだ。何処か恥ずかしそうに目を伏せ頬を染めながら
口の中で形を確かめるように舌が這い回る。
 「うぉっ!?」
 待ち侘びていた恋人の中の感触に思わず腰が浮き上がってしまう。そのまま小
さな頭を押さえ込んで喉の奥まで犯したくなる衝動を必死に抑え、直樹は行き場
を無くした拳を固く握りしめ緩やかな快感を全身に導く。
 「んん……くちゅ……ちゅ……ちゅ……」
 茉理はあえて緩急を付けず、常に唇で締め付けながら少し早めのスピードで顔
を前後に揺らす。亀頭部を口内粘膜に擦り付け刺激し、肉棒全体を舌の上に乗せ
るようにしながら裏筋にも快感を送り込む。ずっと我慢してきた直樹に恋人の中
で放つ悦びを与えてあげようと、ひたすら強い愛撫に徹するつもりらしい。
 (ちゅく、ちゅく、ちゅく、ちゅくっ……)
 少女の口内の熱さと、ねっとりと絡みつく唾液と、一時も離れることなく撫で
続けてくれる舌の感触。それにも増して自分の足の間で、茉理が、一心不乱に己
の欲望の象徴を頬張ってくれているという事実だけで直樹を上り詰めさせるには
充分すぎた。更に小さな両手が根本を包んで扱き始めた途端に、直樹の劣情は無
理矢理尿道を押し広げるような勢いで出口に向かって殺到する。
 「茉理………い、いいか……っ!?」
 「ん……んっ。」
 茉理が小さく頷いたと同時に、直樹はあっけなく噴火した。前に飲んだときと
は比べものにはならない程の粘り気と濃さが爆発的に噴出し、零さないためには
ありったけの力で嚥下しなければならないほどだ。余りの量と勢いに味などに意
識を振り分けている暇もないまま、茉理は恋人の全てを口の中で受け止め、残ら
ず体内へと取り込んでいった。



 「けほっ、けほっ!」
 結局、直樹の射精は自分でも驚くほどの量に達していた。呼吸困難寸前で開放
された唇からは、白く濁った唾液が咳と共に吐き出され垂れ落ちている。
 「わ、悪ぃ!」
 「う、ううん」と涙目で微笑む茉理「いっぱい出してくれて嬉しかったよ。だ
って、直樹がそれだけ気持ちよかったってことなんでしょ?」
 「そりゃぁ……なんだ……お前がしてくれたからで、その……」
 「あれれ? ひょっとして照れてるの? あたしが舐めてあげたのが、そんな
に嬉しかったんだ? 直樹、意外とかわい…………きゃ!?」
 次の瞬間、茉理は力強い腕力で強引に抱き締められていた。広い胸板に押し付
けられた耳に、確かな鼓動が響く。
 「ちょ、ちょっと直樹、痛いよ。苦しいよぉ。」
 「…………………………」
 「………直樹?」
 「………………………っ……」
 「………なお、き?」
 「………っっ…………っっ……!」
 「もしかして……泣いて……きゃっ!?」
 「しっかり掴まってろよ。このままお姫様抱っこでベッドに直行するぞ!」
 「ねぇ直樹、直樹ってばぁ! ちょっと顔……顔見せてよぉ!」
 「うっさいうっさいっ、今日は朝まで寝させないからなっ!」
 「そ、そんな親父ギャグより、家中ビショビショに………直樹ってばー!!」
 「余計なこと喋ってると、舌噛むぞっ!」
 「わ、危な……こ、この………………馬鹿直樹ぃ〜〜〜〜っ!!」
 幸せそうな罵倒が、深夜の渋垣邸に響き渡った。