4-176 名前: 麻衣・ひとりの夜 [sage] 投稿日: 2006/11/01(水) 22:26:03 ID:UkXTOUJ9

 家のなかがひっそりとしている夜更け。わたしはなかなか寝つけずに、ベッドの上でなんども寝返りを打つ。
 わたしの耳に、カチャッという小さな音が飛びこんできた。聞き違えようのないその音は、お兄ちゃんの部屋のドアが開く音。
 お兄ちゃんの気配を感じる。気配が階段を降りていく。楽しそうにしているのまでわたしには感じられる。
 お兄ちゃんが行った先は、フィーナさんの部屋だ。もし喉が乾いて水を飲みに降りたのならすぐ戻ってくるはずなのに、ずっと下にいるもの。
 こんな夜遅くに、お兄ちゃんとフィーナさんが、婚約者同士の男と女がすることは、ひとつ。幼く見られるわたしだって、それくらいのことはわかっている。
 なにをしているか頭でわかっていても、具体的なイメージを浮かべることはできない。だってわたしは、経験がないから。わかるのはキスして、抱きあって、またキスする……やっぱりわたしはお子様だ。男と女がひとつになるという具体的なイメージが、湧かない。
 お兄ちゃんも、そう思っているよね。わたしは、なにも知らない妹って。
 でも、わたしはそんなに純真な、うぶな妹じゃない。こうして夜にお兄ちゃんのことを思うと、体が熱くなってくる。
 わたしだけしかいないこの部屋で、寝る前はあのリボンをはずしている。だからわたしは妹じゃない。ひとりの女の子になって、お兄ちゃんをひとりの男の人と思って、自分の体を慰めはじめる。
 パジャマをはだける。女の子と認めてもらうには全然足りない、薄い胸をそっと撫でる。
「んっ」
 じんわりした心地よさに、小さな声が洩れてしまった。部屋の外までは聞こえないはず。もし外まで洩れても、お姉ちゃんは眠っていて、お兄ちゃんはいないから、誰にも聞かれることはない。
 気持ちいいけど、もどかしい。ちっちゃな胸だからこれくらいしか感じないの? やりかたが下手だから? もしお兄ちゃんがしてくれたら……。
「んああっ」
 同じようにさすったのに、「お兄ちゃん」と思っただけで桁違いの快感がひろがった。ああぁ、想像してこんなに気持ちいいんだから、実際にお兄ちゃんがしてくれたらもっとすごいはず。
 ……そんなことはありえない。だってお兄ちゃんはお兄ちゃん。家族の一員。今は月のお姫様の婚約者なのだから。
 冷や水を浴びたように、昂っていた心が静まっていく。
 もう一度胸をいじろうとして、でも情けなくなって、やめてしまう。
 毛布をかぶって、眠ろうとする。わたしはここでひとり。ひとりで寝ている。
 懸命に目をつぶって、ふと、股間がぬるぬるしているのに気づいた。情けなさがぶり返して、つぶったままの目から涙の滴があふれだした。