2-252 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2006/10/07(土) 05:09:31 ID:/Kz88Yy6

「直樹〜」
古語辞典貸してくれる? そう言おうとしてドアをノックするが、反応がない。
「直樹?」
家にはいるはずなのだが部屋にいないのだろうか。あるいは直樹の事だからさっさと寝てしまったか。
そう思って少し声を大きくして呼びかけてみる。
「何か用か〜」
下の階から返事が返ってくる。声が少し反響しているのを聞くと、どうやら入浴中だったらしかった。
「古語辞典貸して〜。どうせ直樹の事だからテスト前しか使ってないんでしょ〜」
「うっさい、勝手に持ってけ〜」
「じゃ、遠慮無く〜」
ドアを開けると、自分の部屋とは違った匂いに包まれる。
換気していないのではない。掃除も…以前は時々英理に言われてしていた。
英理が不在になった今もたまにはしているらしい。
決して不快ではない、この部屋の住人−直樹−の匂い。
「えっと、古語辞典は…。あったあった」
目当ての物は本棚に突っ込まれていた。茉理はそれを引っ張り出そうとして…出し損ねた。
普段使わないからか、ぎゅうぎゅうに詰まっている中にある。少し力を入れたくらいで取り出せそうにはない。
(よーし、それなら…)
両手でしっかりと掴み、腰に力を入れて体重をかける。それでようやく動きは見えたが、まだ出てきそうにはない。
(よく考えたら、何でこんなことで私がこんなに苦労しなきゃいけないのよ…)
茉理がそんな事を考えた時だった。掴んでいた古語辞典が勢いよく本棚から抜けた。
意識が別の方に行っていた茉理は体勢を立て直す事が出来ず、
勢いよく数歩後退してそのまま床にしりもちをつく羽目になる。
「痛た…。まったく、これも直樹が悪い。うん、そう決めたっ!」
打った腰とお尻を触りつつ、直樹のせいにする事に決める。
その時ようやく、今いる場所が直樹のベッドのすぐ前である事に気付いた。
ふと視線を下に向けると、奥の方から微妙にはみ出している本のような物が。
(そういえば…)
直樹のベッド−正確にはその下−をじっと見つめたまま、茉理は少し考えた。
(今までは気にして無かったけど…直樹が持ってる本ってどんなのかな…)
男のファンタジーゾ−ン…直樹はそんなことを言っていたが、要するにHな本があるのだろう。
女の子の裸ばっかりの本だろうか…。
…そんな事を考えていると、なんだか腹が立ってきた。
彼女のあたしがいるのに、どうしてあんな本が必要なのだろう。
「そう、あたしは直樹の彼女なんだから、直樹がどんな趣味持ってるかちゃんと把握しておかないとね!」
誰にでもなくそう呟いて、ベッドの下−直樹言うところの男のファンタジーゾーン−に手を伸ばし、
何冊かの本を掴んで引っ張り出した。
「へえー、直樹、こんなの持って…」
そこまで言って、ふと直樹の事を思い出す。
さっき、直樹は入浴中だった。流石にカラスの行水ということはないが、
それでも彼の入浴時間はそんなに長い方ではない。戻ってきてこの光景を見られたら少々困る。
(…まだ、大丈夫…よね。ちょっと確認するだけだから…)
改めて、一番上にあった写真集をパラパラとめくってみる。被写体となっているのは、出るところは出て
引っ込むところは引っ込んだ大人の女性。それが胸も、股間の翳りも、全てを露わにしている。
(やっぱり直樹も男の子って事かな…。こんな本持ってて)
もう1冊の本もめくってみる。まさに『大人の女性』と言った印象だったさっきの本とは違い、
髪を自分と同じツインテールに結った、あどけない感じの女の子が表紙になっていた。
ページをめくっていくとその表紙の少女が水着姿になり、そして薄手の下着になり、
ついには上半身を完全に露わにする。もっとページをめくれば全裸になるのだろうが、茉理の手はその前で止まった。
写真の女性…というより女の子の、童顔とは不釣り合いに豊かな胸に目が行く。
ふと、比べるように自分の胸を触ってみる。ふにふにとした感触は、とても目の前の写真の物には及びそうにない。
…あんまり育たないなぁ。
…直樹もやはり胸が大きい人の方が好きなんじゃないだろうか。例えば保奈美さんとか…
自分の胸に触れながらそんなネガティブな考えが浮かんでくる。その時だった。