1-455 名前: 失われた技術(テクニック)?  [にられば] 投稿日: 2006/06/28(水) 23:20:46 ID:3alu0DE1

リースは月で達哉とフィーナ、カレンの到着を待っていた。
何のことはない。
実に簡単、そして一瞬の出来事のようにも思える。
マスドライバーから打ち出された物体はレーダーにも映らない。
そのまま三人は王宮に向かった。

カツカツカツ
王宮の廊下に甲高い音が鳴り響く。
フィーナが達哉とカレンを従えて突き進む。
道すがら、貴族達に出くわす。
皆々、地球に居るはずの彼女が王宮にいつ戻ったのか?という事より彼女の傍らを
共に進む達哉の事が気になるようだ。
堪らず、貴族の一人がフィーナに話しかける。
「姫様、お連れの男は………」
何者であるのかと問いただそうとしたが遮るようにフィーナが言った。
「私のパートナー、達哉です!」
有無を言わせぬ迫力で言った。
だがその時、彼女の長いスカートの中で達哉の精が下着から肢体に垂れていた事を
知るものは誰も居ない。
達哉とカレンを除いて………


そして八年の月日が流れた。
遂に達哉とフィーナの結婚式の当日となった。
ここに来るまで二人にとって辛難甘苦の日々でもあったが全てが今日報われる。
地球と月を巻き込んでの全世界注目の史上最大規模のロイヤルウェディングが挙行されようとしている。

教会の最前席で二人の姿を焼き付けようと今か今かと待ち受けてドキドキしている庶民集団。
朝霧家と鷹見沢家の面々だ。
「でも残念ねぇ………リースちゃんも来れば良かったのに………」
さやかが言う。
リースは先日、久しぶりに朝霧家に現れた。
そして自分が留守を預かると言い出して聞かなかった。
「そういえば、一緒に居た女の子は一体誰なんだろうね?家族だって言ってたけど………」
麻衣が一つの疑問を投げかける。
「もしかすると親戚や妹とかじゃなくてリースちゃんの子供………なんて事もあるんじゃないかな?」
隣家に住む場違いなおちゃらけ男はいつも通りの発言。
みんなの緊張を解そうとしたのかもしれない。
「もしかして………達哉との子供だったりして」
いつもはこの兄、仁に対してしゃもじを投げつける妹も珍しく兄の話に乗ってしまう。
実は菜月は今現在、確かにしゃもじを携帯、所持していなかった。
流石に結婚式用の礼服、ドレスにしゃもじを忍ばせる訳にもいかなかったという理由もある。
達哉の結婚式とはいえ、ロイヤルウェディングなのだ。
その割には六でもない話で盛り上がってはいるが………
「馬鹿な話してないで、お前達も達を見習って早く相手を見つけろ」
「………………………」
鷹見沢家の二人と一緒にさやかもシュンとしてしまう。
「あ、もう始まるよ」
麻衣が皆に促す。
先程まで馬鹿話をしていたとは思えない位、表情が引き締まる。

そしてその頃、このロイヤルウェディングを朝霧家のリビングにてテレビで見ているのはリースだ。
ソファの上で例の女の子とまるで親子のように寄り添ってテレビを見つめる。
そしてテレビに主役の二人がアップで映し出される。
キュッと女の子を抱きしめる。
「あれがお父さん」
リースはテレビを指差して言った。

失われた技術(テクニック)?   完