1-252 名前: 電気羊は淫夢を見る?(にられば) [sage] 投稿日: 2006/03/17(金) 14:00:31 ID:MN0shtw4

直樹達一行が未来に向かう日がやって来た。
それぞれが時計台の前に集まる。
直樹を中心にPC版ヒロインが全員が佇んでいる。
この時間転移を最後にオペレーションサンクチュアリは終了、転移装置が破棄される。
その為、事を知る渋垣夫妻と藤枝夫妻が見送りに来ていた。
「委員長の両親は来ないんだ」
直樹が言った。
「昨日、電話でお別れ言ったから………って、委員長って言い方は止めてよね。久住君」
「文緒だって………」
「あっ、あははぁ………な、なおき………」
頬を朱に染め上目遣いで直樹を見る。
「あーっ!!」
二人だけの世界が形成されようとしていたが茉理が声を上げてぶち壊す。
「秋山先輩、抜け駆けは狡いですよ」
今の文緒のアクションを見て戸惑ってしまったのだ。
幸せそうに赤面しつつ直樹を見上げる秘技はある意味、ツンデレキャラである茉理の専売特許だったからだ。
違いは台詞くらいだろう。
茉理は両親に背を向け直樹に向かって駆けていく。
「なんだか寂しいですね、茉理ともう会えないなんて………」
「直樹がいるんだ。大丈夫さ」
源三の手が英理の肩を掴んで優しく引き寄せる。

「それじゃあ、行きましょうか」
腕時計で時間を見ていた恭子が言った。
「皆さん、忘れ物は無いですか〜」
いつもと同じように引率しているような結。
少し寂しげに両親に会釈する保奈美。
「ありがとう、お父さん、お母さん」
顔を上げると少し涙ぐんでいる。
「保奈美さんを見てると私も………」
思わず涙ぐんだ茉理はその小さな腕で源三と英理に抱きつく。
「ところで天ヶ崎さんと橘さんのご両親もいらっしゃらないの?」
ふと尋ねる文緒。
「実は私、向こうから待避してたんだ。今まで黙っててゴメンね」
「私もです」
美琴に合わせてカミングアウトするちひろ。



「この分だと直樹も大層な甲斐性を持ってそうだな」
「そうだと有り難いんですが………」
源三の楽観的発言に突っ込んだ男。
「ひ、弘司っ」
何故かここに弘司がいた。
「関係者しか知らない筈なんですが………」
困った表情を見せる玲。
「あ、いや、何というかその、無理矢理というか気付いたら関係者になってしまっていたというか………」
元天文部部長が元理事長に弁明する。
その答えは直ぐに分かった。
「お兄ちゃん待って〜」
向こうから走ってくるのは明らかに麻、いや、柚香だ。
それを見た茉理と美琴が彼女を急かす。
「ユズリーーン、はやくはやくぅっ」
「置いてッちゃうよ〜〜〜」
どうやらこの二人は明らかに共犯らしい。
「今更一人位増えたって大した事無いって」
アッケラカンと美琴。
「ユズリンだけ仲間はずれなんて可哀想でしょう?」
「………と言うわけで妹を頼む」
ポンと直樹に肩に手を置く弘司。
「確かにお預かりしましたよ、お義兄さん」
「なんかその一言で非情に不安になった………」
「大丈夫ですよ、私とちひろもいますから」
「なら安心だ」
「おい………」
「しっかり者の藤枝さんと秋山さんに先生もいるから大丈夫か」
弘司は失いかけていた元気を取り戻す。
「なおくん、向こうでも幸せにしてね」
「わっ、私の事も幸せにしてよね、直樹!」
まだ名前で呼び合うのに慣れていない文緒が続いた。
未知の世界に向かう不安を掻き消すかのように明るく振る舞っている。
これから向かう時代は直樹にとっても保奈美、茉理と文緒には未知の領域なのだから………
それから暫くして時計塔から空に向かって白い光が伸びて消えた。
この時代から一人の男と複数人の女性が旅立った。