0-16 名前: 馨×茗 1 [sage] 投稿日: 04/11/26 10:50:23 ID:8eITjhYS

「何よアンタまだ告白してなかった訳?」
本日も‘愛しの天野さん‘とのデートを電話で報告をしてきた今日子に、馨さんとはどうなってる
のかと聞かれた。
別に馨さんとは付き合ってる訳でもないし、なんでもないよ、って言ったら呆れた様に
電話口から溜息が聞こえてきた。
「春日野君って来月引越しじゃなかったの?」
「そーだけど・・・よく知ってるのね今日子?」
「そりゃあ、天野さんから聞いてるもの〜v」
きゃるーんとか効果音が聞こえてきそうな明るい声にああ、そうですかと半笑いで答える。
一時間近くもやれ天野さんはやさしいだの、手があったかかいだの聞かされて、もうお腹一杯
だって。私だってわかってるんだ馨さんがいなくなってしまうのは・・・。
でもなんとゆーか今更っていうか照れくさいっていうか。

『もーじき私がいなくなるのを知ってるからくっついていたいんですよ。』

予餞会の時にいなくなる寂しさから学校まで着いて来ちゃった馨さんの家族のような愛犬3匹。
楽描倶楽部の仕事の没頭してて考えないようにしていたけど、馨さんがいなくなってしまう事に
初めて愕然としたっけ。
叱られてしょんぼり帰る後姿に向かって言った後、照れたように私に
『忘れてしまうわけばうじゃないですか。そおでしょう!?』っていったよね。
何かアレで安心してしまったというか。
離れてても私と馨さんは変わらずにいられるって思ったんだ。ううん、思い込もうとしてたのか・・・



「ちょっと茗ったら聞いてるのっ!」
「ああ、ごめん聞いてるっ。」
「とにかく!春日野君が引っ越す前に告白ぐらいしときなさいよ。」
「でも、馨さんだって忙しい時に迷惑かも」
「それはないっ!」
私の言葉を途中で強い口調でさえぎられた。そおかなあ、うーん。
「ま、新生活を始めるんだもの新しい関係になるのもいいんじゃない?」
まったく、部長をやってた時の漢らしさからは想像できないくらいの気弱さよねえ〜
とからかわれながら電話を切った。
うるさいよまったく、今日子ってば自分だって天野さんに告白する時は普段とは全然違って
あんなにしおらしくて可愛かったのに。


「姉ちゃん、風呂開いたよ。電話やっと終わったの〜?」
晃之介がバスタオルで頭をわしわし拭きながら近づいてきた。
「あ、うんありがと。」
「あれ、顔赤いけどどううしたの?・・・あ、もしかして」
怪訝な顔からにかっと笑って「馨さんに告白でもされたあ?」
「今日子と電話してたの!」
 ぱしっ
晃之介の頭叩くとお風呂場に向かう。
まったく、お節介やきばっかり。
脱衣場で服を服を脱ぎながら、前に馨さんの服を借りた事があった事を思い出した。
借りた服はブカブカで自分と体格の違いを初めて感じた。
ああ、馨さんも男の人なんだなって、そりゃあ性別が違うなんて分かってるけど馨さんは馨さんで
で男の人として意識した事はなかったから何と言うか不思議な気分だったな。

 
ああ、馨さんも男の人なんだなって、そりゃあ性別が違うなんて分かってるけど馨さんは馨さんで
で男の人として意識した事はなかったから何と言うか不思議な気分だったな。



 ちゃっぷんっ
温めのお湯につかる。

ふう、卒業してから馨さんの事ばっかり考えてる気がするなあ。
今まで忙しすぎた反動なのかもしれないけど。
告白、告白か。たはははてれますなー。
あの今日子でも勇気出して告白したんだよね。
今まで忙しさで誤魔化していた気がするけど。
ホントは寂しいって気持ちを行動できるワンちゃんたちが羨ましかった。
変わらずにいられるなんて、心の奥では思ってなかった・・・。


私、ホントにこのままでいいのかな・・・?


 ざばっ!
いや、良くないぞ!このままじゃ絶対後悔する。
そーよ、新生活に新しい関係!玉砕したらその時考えればいい事よねっ。
ちょっとヤケになってる気がしないでもないけど。
私は髪をわしわし洗いながら明日馨さんの家に行く事を考えた。



馨さんの家に来るのも久しぶり。
わんちゃんたちの(特にササニシキの)熱烈大歓迎を受けて後ろにに倒れそうになった。
嬉しいけど、大型犬3匹に飛びつかれたら危ないって。
慌てて馨さんが支えてくれて事なきを得たけど、馨さんにお礼を言ったらスッと目線そらされた?
気のせい・・・かな?あー私意識しすぎかも。
家に来る口実の晃之介が馨さんに借りていた本を返す。

「いつでも良かったんですけどね」
まあ、古い映画雑誌だから、ははは。

「その辺に適当に座ってください、今お茶持ってきますので。」
「うん、ありがと」
うわ、何か顔が赤くなってる気が・・・意識するな意識するな自然に自然に。
手でぱたぱた仰ぐ
ううっ、あの時の今日子の気持ちがわかるううううっ!

 のしっ 
「コシジワセ?ササニシキも重いっ」
わんちゃんたちに両側からのしかかられた。
そういえば、このコ達も私と同じ立場なのよね。人事とは思えなくてぎゅうっと抱きしめる。
「くう〜ん」
か、かわいいっっ!



ぱたん

紅茶のいい香りが漂う。
「はい、どうぞ熱いですから気をつけてください」
「ありがと」
カップを手渡し、小さなテーブル向かいに座ると馨さんはちょっと照れたようだった。
「なんか、久しぶりで・・・妙な感じです」
「ホント」
 ぷっ
お互いにくすくす笑いあって色んな話をした。部活の事、茅菜ちゃん達の事、将来の事。
楽しいー、私こういう事を馨さんとしたかったんだ。ふふっ気持ちがほんわかする。

 ぽてぽてぽて
 ぽいっ!

ん?わんちゃんが私の膝の上に何か持ってきた。
チョコレートかな?
「あっ!!コシヒカリそれは・・・わーっ!こらおまえたちっっ!!」
何故かわんちゃんたちが馨さんを押さえ込んでいて・・・。
何だろう?手元の小箱を見る。
オカモト?スキンレスス・・・



「かかか、かおるさんっ!コレ!?」
わんちゃん布団から這い出した馨さんがパッとコンドーム(///)を取り返えした。
「す、すみません、ちゃんと隠しておいた筈なのに・・・」
真っ赤な顔で慌てる馨さんを見て、やな疑問が浮かんでくる。
「もしかして、馨さん彼女いたりするの?」
「いません!」即答。
あ、そう。なんだ良かった。
ほっとしつつも、じゃあなんでこんな物をもってるの?でも、馨さんだって男なんだから・・・
混乱したままぐるぐる考えていた。

「えーっと、ですね・・・」
赤い顔で困惑気味に馨さんが説明したところ、卒業祝いに天野先輩から貰った事が判明。
あ、あの人はあああっ!何考えてるんだあ!ん、あれ?


『ま、新生活を始めるんだもの新しい関係になるのもいいんじゃない?』

昨日の今日子電話を思い出す。ぐるだ。あの2人絶対示し合わせてる。
あの2人はぁああっ!ー何を考えてるのよ、もおおっ!頭いたいったらっ
「あの、馨さ、ん !?」



 ぬ

顔を上げたらドアップが!びっくりした。しんぞーに悪いっ
「馨さんいきなり出るのはやめてって・・」
「好きです」
「は?」
「あなたが好きです。かなり前から、これからもです」
「・・・・・・・」
「あの」
「私も、馨さんが好きです。これからも」
笑って言うはずだったのに、混乱していたせいか涙がぽろぽろ出てきた。
恥ずかしい///馨さんに変に思われる・・・せっかく告白できたのに
顔の筋肉を総動員して笑おうとしたら、いきなり馨さんにぎゅっと抱きしめられた。
えっ!?ちょっとなに?一体何??

「かおんんーっんーっ!」
キスされてる。うそっ馨さんにキスされてるぅぅっ!
固まって動かなくってる私にお構いなくキスは深く深くなっていく。
唇を吸い上げ舌が口内を行き来する。でも気持ち悪いなんて思わなかった。
体がふわふわする。頭がぼおっとする。だんだん体に力が入らなくなって・・・

 とさっ

馨さんが私の首筋に口付ける。手は体を這いまわりセーターを捲り上げた。
「まって、ちょっと・・・馨さんってば、やだっ」
左手首を押さえつけられまたキスされる。胸、胸に触ってる!うそっうそお!
「馨さんってば、まって!ねえっ!!」
こわいいやだ!いやだ!
こんなの馨さんじゃない!!



ばっしーんっ!

思いっきり張り倒す。ちょっと息があがってるけどしょうがない。
「馨さんいきなり何するのよっ!」
しばらく、ぼーぜんとしてた馨さんがいきなり土下座した。
「申し訳ない・・です。反省してます。すみません!」
土下座したまま謝罪する。何時もの馨さんに戻った・・・?
「・・・・・・」
「よ、嫁入り前の女性に何てことを・・・あ、あなたの泣き顔を見たら訳がわからなくなりまして
本当に申し訳なく思っております。」
「も、いいから頭を上げてよ。ね、馨さん」
床に頭を付けたままの馨さんに声をかける。
そっと頭を上げ、恐縮そうにしていた馨さんが、以前の下水道騒動でしょんぼりしていた
ササニシキニよく似ていておかしかった。
そーいえばわんちゃんたちはどこに行ったんだろう?
部屋を見渡すとテーブルの上に鎮座していた小箱が見えた。
そっと手に取る、箱をくるっとまわす。
ちょっと大胆?大胆すぎだよね・・・でも。   ぴっ くるくる〜 小箱の包装をはがす。
「!」
「あ、あのね馨さん・・・さっき馨さんじゃないみたいで怖かった。でも何時もの馨さんに戻った
から安心、した・・・。キスはやじゃなったよ」
心臓がばくばくいってる、落ち着け自分。小箱を開ける、ん?また箱が入ってるんだ。
「あのね・・・コレせっかくの卒業祝だし・・つっ使わない?」
・・・私、普通に言えたかな?
馨さんはしばらく黙っていたけど「はい」と嬉しそうに笑った。