8_5-878 名前:耳と尻尾と 投稿日:2012/09/30(日) 17:58:40.15 ID:estq3BZa

 「ようミレイユ卿! かような場所まで御自らの御御足でお越しとは、いかなる御用ですかな?」
 「……勘弁してくれ……」
 ここは牢獄の酒場。どこから聞きつけたのか、まだカイムが腰を下ろしてから間もないというのに、
最初の火酒を開ける前にジークが颯爽と現れた。
 「まぁそう嫌そうな顔をするなって、今日は俺の奢りだ」とカイムの隣に座ると、すかさず店主が
同じ火酒を用意する「で、どうだ? 新天地の暮らしって奴は?」
 「どうもこうも……歩き方から喋り方、果ては飯の食い方まで手取り足取り叩き込まれるガキ扱いの
毎日だ。そのうち下着の替え方まで指図されちまんじゃないかと戦々恐々さ」
 カチンと杯を合わせ、一緒に一口煽るとジークも近況を語り始める。
 「こっちはお前の『兄貴』のお陰で順調だ。物資の流通が前よりも盛んになったし、なによりも風錆
とのイザコザが収まったから皆も落ち着いてる。もっとも……根っこは全然変わってないがな」
 「そればっかりは、今すぐどうこう出来るもんじゃないさ」
 「違いない。流石に俺たちの手には余っちまう」
 再びカチンと鳴らし、残りを一気に飲み干すと見計らったように二杯目が差し出される。
 「それで、今日は火酒で酔い潰れる為にわざわざ牢獄まで来たのか?」
 そらきた、とカイムは頭の中でスイッチを切り替える。あっという間に居場所を嗅ぎつけたと言うこ
とは、ジークはカイムが何時、何処から、誰と一緒に牢獄に訪れたのかを完全に把握しているというこ
とで、それを暗に示しつつカイムに尋ねることで互いの絆を再確認しようとしているのだ。
 「……お転婆娘のお守りだ」
 だからカイムは……言葉こそ濁すが……包み隠さず答える。これが二人の通過儀礼なのだ。
 「ほう? その割には職務を放棄して酒浸りになっている様にしか見えないがな?」
 「今はリリウムだ。何故だか知らんが、アイリスのことが妙に気に入ってるらしくてな。牢獄で一番安全
な場所だし野郎が割り込む隙もなさそうなんで、ここで暇を潰している」
 「アイリス……か、それは意外……いや、案外当然か」
 「そりゃ普段から周りを囲ってる連中よりは確かに年も近いが……そういうもんなのか?」
 「なに、女ってのは永遠に謎の生き物なんだよ。俺達には……あ?」
 「ん? どうした?」
 「いや、アイリスと言えば……」



 その頃、リリウムのアイリスの部屋では。
 「……という具合に最近ではカイムの奴、ルキウスよりも口うるさくなってかなわんのだ。いい加減
に子供扱いは止せと何度言っても聞く耳を持たんし、つくづく無礼な奴だと思わんか?」
 「……どうでも良いけど、食べ過ぎ」
 「え?」リシアはアイリスが用意した焼き菓子を殆ど一人で平らげている事に気づいた「ああ、すまん!
代わりに金……いや、次に来る時に下層で売っている飴を持参しよう。ここの皆で食べれる位な? それ
で良い……か?」
 「勝手にすれば?」
 「そ、そうか!」
 相変わらず素っ気ない口調だが、少なくとも気分を害した様子がないのでリシアは胸を撫で下ろす。最近
になって、この口数が少なく無表情な少女の機微がわかるようになって、同時に妙な親近感を覚え始めた若
い国王陛下は公務の合間の息抜きにとカイムを伴ってアイリスの元を訪れるようになっていた。
 「そうだ、飴と言えば最近……」
 と会いに来たリシアが一方的に喋り続け、アイリスが淡々と聞き続けるだけなのだが、アイリスの方も特
に邪険にすることなく横に座ったまま耳を傾け続けているので不思議と空気は悪くない。もしかすると、二
人の間に友情に似た何かが芽生え始めているのかも知れない。
 「……なのだ。しかも……」
 「ちょっと黙れ」
 「え……?」
 しっ、とリシアの唇に細い人差し指が押し付けられた数秒後。

 こんこん!

  「アイリス、少し早いが構わんかね?」
 ノックの音に続いて扉の向こうから男の声。



 (客が来た)
 (客というと、まさか……!)
 それ以上は答えず、一緒に腰掛けていたベッドから立ち上がったアイリスが足下から黒くて彼女の腕程
の長さのある物体を取り出す。
 「アイリス、聞こえているかね?」
 「準備してる、待て」
 そして事態に付いていけないリシアを尻目に部屋の片隅の化粧台から小瓶を取り、中に入っている透明
な液体を先ほどの細長い物の先端に塗りつけ、透けるほど薄い部屋着の裾から下着だけ抜き取ると華奢な
脚の間……より少し上の辺りに濡らした部分を差し込んで擦り始める。
 「なっっっ!?」
 「声、出したら……んんっ……外、聞こえ……る……」
 (し、しかし……)
 目の前の少女が自分で何処を刺激しているのか、は大凡見当はつくのだが理解が追いつかない。リシア
が仰天し硬直してしまった横でアイリスは自分の排泄器官を道具で穿り、馴染ませているのだ。
 「ん……はぁ……」
 いつしかアイリスの腰が動き始め、頬に朱が指し目は潤み小さな唇からは悩ましげな吐息まで漏れ始め
ていた。彼女が行為に慣れ、快感を得ているのは特異な性の知識に乏しいリシアにもわかるほど。
 「んあはぁんっっ!」
 そして次の瞬間、自らの手で菊門を一気に貫いた。
 (あ、アイリス……そなた……!)
 (……箪笥)
 (あ……え……?)
 (隠れる場所、他にない。早く!)
 挿入を済ませて落ち着いたアイリスが、部屋の奥の衣装箪笥を目で指す。
 (し、しかし……)
 (ジッとしてろ)
 まだ渋るリシアを押し込み、パタンと閉じ込めてからアイリスは客を迎えに戸口へと。その後ろ姿を見
れば彼女が尻穴に装着したものが黒猫の長い尻尾を模したアナルプラグだというのがわかる。
 「アイリス、まだかね?」
 「だから準備中、うるさい」
 「いやいや、今日は予定よりも早く着きすぎてしまってね。どこかで暇を潰そうにも牢獄は物騒だし、
下で待たせて貰おうかと思っていた所に、今は空いているから構わないだろうと聞いたので……」
 「ふんっ」



 衣装箪笥と言っても中に下げられた服は少なく、しかも小さめで薄い物ばかりなので思ったほど狭さは
感じない。が、アイリスが普段から付けているらしい安物の香水の匂いは別問題だ。一体何から抽出した
のか疑ってしまうほど強くて不愉快な臭気の渦で、リシアは早くも気分が悪くなっていた。
 (す、少しだけ……)
 せめて少しでも外気を取り入れようと(普段なら部屋の中の匂いも似たり寄ったりなのだが、リシアが
訪れたと聞いたアイリスが窓を開けて換気をしておいたのでマシになっている)戸を僅かに開けてみると
、先ほど腰掛けていたベッドの上で着衣のまま四つん這いになったアイリスの後ろ姿が見えた。
 (………黒い猫?)
 いつの間にか黒のベビードールに着替えた少女の姿は、髪に結んだ大きなリボンと長い尻尾と相まって
華奢な子猫のように映る。客の要望なのか、細いウエストをしならせ小振りなヒップを差し出すように持
ち上げている格好が扇情的で、まさに小悪魔めいた黒猫そのものである。が、それよりも……
 「んちゅ、んちゅ、んっ、ちゅぴっ」
 ついさっきまで仲良く座っていた少女、自分と余り年も変わらないアイリスが小さな頭を全裸の男の下
腹部に密着させ、手も使わずに自らの意思で客のモノを根元まで頬張り吸っているという余りに衝撃的な
光景でリシアの思考は停止してしまった。
 「そう……その調子だ。しっかりと唾液を塗り込んでもらわんとな」
 そんな様子など露知らず、興奮で上ずった声の男が、奉仕に身を任せながらアイリスの下半身に腕を伸
ばし薄い寝間着の裾をめくり上げる。
 「ひっ!?」
 リシアの位置からはアイリスの全てが丸見えだ。開き気味の脚の間でパックリと口を開いた秘所の使い
込まれ色素の沈殿した花弁やピンクの内蔵、そこから溢れる透明な粘液、更に自分の手首くらいの太さが
ありそうな尻尾型器具を銜え込み震えている肛門まで。その生々しさに悲鳴と一緒に嘔吐感までこみ上げ
そうになり慌てて口を手で覆う。



 「ほほぅ、あそこに隠れているのはアイリスの友達かね?」
 「っ! だめ、あの子……違う!」
 「違うも何も、こんな所にいるからには金で買えるのだろう? なんならジークフリート殿に……」
 「そんなことしたら、噛み切る……っ!!」
 「…………やれやれ、ではお友達にはたっぷりと見て勉強してもらうことにしよう。そのまま動かな
いように」
 「え? ひゃんっ!?」
 後ろに周り無造作に引っ張ると、既に開発され馴染んでいた不浄の穴は軽い水音と共に呆気なく尻尾を
抜き取らせてしまう。そのまま男は香油と腸液に塗れ湯気を上げるソレをリシアが隠れている衣装箪笥
に向かって放り投げる。
 「あ……!」
 それを見たアイリスの顔が強ばるが、男の目には入っていない。角度を会わせ、まだ広がったままの
肛門を唾液で光る肉棒で一気に串刺しに。
 「んぐぅっ!?」
 不意を突かれ、細い体は男の体重で簡単に押し潰されてしまう。が、経験済みのアヌスは逆行してく
る異物を抵抗なく受け入れ、直腸内では粘膜保護の為の液体が更に分泌される。
 「ほら、全部入ってしっまったよ。こっちは行き止まりがないからね、たっぷりと楽しむことが出来
るんだ。今度はゆっくり抜くぞ?」
 「え……あ、あ、あ、あぁぁ……」
 腸が丸ごと引っ張り出され裏返ってしまいそうな感覚にゾクゾクと震えてしまう。太くて固いモノで
入り口を広げ擦られる快感を覚えた体が勝手に男を追いかけてしまう。
 「そして、ぎりぎりまで抜いてから……一気に押し込むっ!」
 「あぉ……ぉ……ん!」
 大きすぎる亀頭で腸壁越しに子宮を叩かれ、舌を突き出しながら愛液を吹いてしまう。一度リードを
許してしまうと体格差と技巧で手も足も出せなくされてしまうのだ。
 「こりゃぁ良い! 友達に見えられて興奮しているのかな? いつもよりしおらしいじゃないか!」
 「く……死ね、死ね、死ね……っ!」
 「ははっ、良いぞ良いぞ! その調子でもっと締め付けるんだ!」
 脇を支えられ膝立ちの状態からバックで激しく出し入れされると、ぐぽぐぽと空気がが混じったアナ
ルセックス特有の下品な音が響き、小さな体が操り人形のように翻弄される。それでもアイリスの雌の
部分は与えられる刺激を快楽として受け入れ括約筋は雄を逃すまいと両の穴で吸い付き、腰を振って求
めてしまう。
 「死ねっ、死ねっ、死ねっ!」
 快楽という名の風船がどんどん膨らむ。内太股が愛液と腸液でドロドロになっていく。



 「ほら出すぞ! 尻の一番奥で出すぞ!!」
 「んーーーーーーっ!」
 もはや罵倒は負け犬の遠吠えに等しく、男を更に奮い立たせるだけだ。せめて口を閉じて嬌声だけは
聞かれないようにと堪えるが。
 「あ……な、なに!?」
 挿入したまま、アイリスの体を軽々と持ち上げた男が向きと位置を入れ替える、と。
「どうせ出すなら、あの子にも可愛い顔を見て貰おうじゃないか。こっちでも気持ちよくなれるし客を悦ばせる所
を実際に見れば、覚えるのも早くなるぞ?」
 「い、いやっ! 放せ……ぇ!」
 閉めたはずの箪笥の戸が僅かに開いている。そこからリシアに見られていると……いや、見られてい
るかも知れないという可能性だけで何故か胸が締め付けられる気がして、手足を振って男の手から逃れ
ようとするが、下から根元まで挿入された状態では禄に力も入らない。
 「あ、こら! そんなに暴れると中で……擦れて……」
 腸内粘膜と亀頭が予想外に部分で擦れ合う刺激が引き金となり、男が腸内で一気に膨張する。
 「あ……だめ……!」
 「ええい! このまま一番奥でっ!!」
 「ひっ!?」最深部まで突き立てられた先端から、焼き付くような迸りが一気に噴き出す「ひっ、ぐ
ぅぅぅぅぅぅ…………!?」
 「おお、中が痙攣してるぞ。一緒に……!!」
 「うぅぅぅぅぅっ!」
 透明な飛沫を断続的に飛ばしつつアイリスも達してしまう。どぷどぷと鼓動に合わせて射精されると、
そのリズムに合わせて内臓が勝手に収縮して絞り出し吸い上げる。
 「そうだ、この感触だよ! 前よりもきつく締め付けられ、もっと奥で放つ感じが堪らん! これな
ら、まだ何回か出来そうだ」
 「そんな……や、止め……うぐっ!?」
 再びベッドに押し付けられ、達したばかりで敏感な力が入らず緩くなった肛門を再び激しく責め立て
られると、腸内粘膜には熱すぎる精液が撹拌されて、じゅぽじゅと体内で泡立つ。
 「もっと奥だ、もっと奥で……!」
 「ひゃめ……くるし……らめぇ……っ」
 そのまま更に二回、最後は逆流して繋がった部分から溢れ出すまでアイリスは犯され続けた。



 「だいじょう……ぶ?」
 舌と喉で汚れを掃除させられ、やっと男を帰したアイリスはフラフラになりながらも自分の身を清め
るよりも先に箪笥の戸を開けて中のリシアに声をかけた。
 「あ、あ……!」
 中のリシアの顔からは完全に血の気が失せ、一番奥に体を押し込み小刻みに震えている。そして恐怖
に血走った目をアイリスに向けていた。
 「変態は帰った。何か飲んだ方が……」
 「ひぃっ!!」
 ぱんっ、と乾いた音を響かせリシアは反射的に打ち払ってしまった。差し出されたアイリスの手を。
 「っ!」
 思いもよらなかった仕打ちにアイリスは驚いた。そして一瞬だけ悲しさと悔しさと怒りが混ざった形
に顔を歪めた後、何も言わずに背を向け精液を垂れ流しながら、汚れたベッドの上で薄い毛布を被って
丸まってしまった。
 「…………あ!」その痛々しい有様にリシアは正気を取り戻したが、もう手遅れだ「ま、待ってくれ
アイリス! いまのは……」
 「出てけ」
 「違うのだ! そんなつもりは……」
 「出てけっ!!」
 「そんな……!」
 アイリスの放つ強固な拒絶のオーラに立ち往生してしまうリシア。これまで傅かれて育ってきた彼女
にはアイリスの作った見えない壁を溶かすことも乗り越えることも出来ない。対等な関係という物に余り
に不慣れな為に接し方がわからないのだ。
 「……すまん」
 ぱたん、と扉が閉まり足音が遠のくとアイリスの嗚咽だけが部屋に残された。



 そして、すっかり萎縮したリシアがカイムの背中に隠れるように再びリリウムを訪れたのは、それか
ら半月ほどが過ぎ去ったあとだった。
 「上層に行ってもらうことになった」
 ぶすっと頬を膨らませ誰とも目を合わせようとしないアイリスを部屋に呼び、ジークはカイムとリシ
アの前で妙に嬉しそうに宣言した。
 「いや、行きたくない」
 当然ながらアイリスは不機嫌そのもの。了解なんぞするはずもない。
 「いやいや、そうはいかないぞ。これは仕事なんだからな?」
 「しばらくの間、俺が貸し切ることにした」
 と背中にしがみついたリシアを引きずりながら一歩前に出たカイムが引き継ぐ。
 「つまり身請けじゃなく出張ってとこだな。別に初めてじゃないだろう?」
 「でも私、そんなに安くない。だから嫌!」
 一晩だけでも高いのに、しばらくなんてあり得ない。きっと自分を騙そうとしているに違いないとア
イリスは譲らない。ジークの威厳もなんのそのである。
 「もちろん、安売りなんてしないさ」だが予想の範疇だったらしくジークは全く動じない「というか、
これは取引の条件でな。数こそ少ないが、上層向けの酒の一部を不蝕金鎖が独占して牢獄で流通させて
貰えることになったんだよ。そこのミレイユ卿の計らいでな?」
 「肉付きは多少足りないし愛想も悪いが、お前はリリウムでも上から数えて何番目の女郎だし牢獄風の
相手の仕方も心得てるから俺には都合が良い。いちいち降りてくるのも面倒だしな」
 ジークの言葉に引っかかる部分もあったが、ぐっと堪え平常心で話すカイム。この二人がリシアの為
に共謀しているのはアイリスの目にも明らかだが、残念なことに筋が通っているので言い返す隙が見つ
けられない。
 「……つまり、毎日カイムの相手をすればいいの?」
 せめて心底嫌そうな目で睨んでやるが、その程度で怯む不蝕金鎖のボスでも、その盟友でもない。
 「まぁ、そういう契約だが…………俺も色々と忙しいし、その時はコイツの遊び相手をしてもらう」
 「あ、こら、私は……!」
 そして子猫のように軽々と差し出される国王陛下。
 「…………………………」
 「う……」
 アイリスに無言のプレッシャーに耐えられず、縮こまり上目遣いになってしまうリシア。
 「私、娼婦」
 「わ、わかっている……」
 「主に男と寝るのが仕事」
 「それもわかっている……でも私は……」
 「ちなみに、女の客の相手も出来る」
 「え゛?」
 「私と遊ぶ?」
 「なっ…………!!」



 せめてもの反撃である。案の定、瞬間沸騰してしまうリシア。
 「将来的にはわからんが、とりあえずはチェスの指南だな」そして軽々と受け流すカイム「洞察力や
観察力、それに戦術眼を養うには丁度良い。実際、腕を磨いて余裕が出るとチェスを指しながら交渉を
する時にも都合が良いってルキウスも言っていたしな」
  「そ、そうだな! うん、そうだ! それに弱いと貴族共に馬鹿にされるやも知れん! アイリス
は強い……のだろう? 是非とも教えてくれ!」
 「……仕事なら、構わない」
 「そ、そうか!」
 仕方ない、と溜息をつくとリシアの顔に笑みが浮かぶ。ほんとに単純な奴だなと呆れてしまう。
 「じゃあ、交渉成立だな。アイリスの迎えは後日、改めて来て貰うとして……取引を始める前に品定
めといこうじゃないか!」
 ぱんぱん、と満足そうに手を打つジークに頷いて高級そうな酒瓶を取り出すカイム、先ほどからテン
ションが妙に高かったのは、これが楽しみだったお陰らしい。
 「そ、それなら私もこれを……」
 そして、おずおずとアイリスの前に差し出されたのは、子供の頭ほどの大きさもある包み。
 「?」
 「ここ、この前約束した飴だ。好みを聞き忘れたので適当に見繕って来たのだが、ここは酒臭くなり
そうだし、そなたが嫌でなければ……」
 「勝手にすれば?」
 ぷいと背を向け、挨拶もせずスタスタと部屋から出て行ってしまうアイリス。相変わらず猫のような
少女である。
 「あ……待たぬか! いや待ってくれ!!」
 その後を慌てて追いかけてゆくリシア。二人の前途は、まだまだ多難のようである。