8_5-808 名前:あけるり「跡継ぎこそなによりも大事」 投稿日:2012/09/11(火) 20:43:21.70 ID:UdKhBjzP

 結婚式を挙げ、妻となった月の姫と夫となった男は当然、閨を共にする。しかし
ながら、閨には御付きの者たちも数名同伴する。ふたりが直に結びつく前に、彼女
たちによって準備が為される。
 姫のヴァギナは御付きの女の舌により、ほぐされる。あくまでも準備である口唇
愛撫に姫がはしたない声をあげることはない。
 夫のペニスも別の御付きの女の舌にもてなされ、硬く太く、熱くなる。仕事に忠
実な女は肉根だけでなく睾丸もこってりと愛撫し、放たれるべき精を運ばせる。
 姫の準備ができ、男も準備が整って、ようやく結合のときを迎える。姫は四つに
這い、男は後ろから挿入する。
 膣と陰茎がひとつになって、男は数度腰を振っただけで射精してしまう。姫の持
ち物が名器であることを差し引いても早すぎる。それだけ御付きの者に高められて
いた。
 結婚した姫に求められるのは、なによりも女児を出産することだ。王家を未来に
つなげることだ。四つん這いになるのも、精が奥深くまで染み入るのに最適な体位
だから。
 早すぎる射精で姫はほとんど快感を得ていない。受胎するには、分泌液がほどよ
い状態であふれるだけでいい。御付きの者がそのようにきちんと整えている。そも
そも、下手な快感は肉体に不要な疲れをもたらすだけだ。
 男は絶頂させられるが、あくまでも射精のため。放つのにわざわざ時間をかける
こともない。御付きの準備はそのため。
 陰茎が膣穴に深く刺さって射精がはじまれば、御付きの女たちがここでも睾丸を
揉みほぐし、会陰を刺激する。アナルに指を突き刺して前立腺を刺激する者もいる。
それらにより、元気のいい精子を含んだ濃厚スペルマをすべて吐き出され、子宮に
流れこむ。あとは卵子に結びつくことを神に祈るだけ。
 長い射精の終わりが、ふたりの夜の終わり。姫と男は別々のベッドに入らされる。
明日の政務に備えて、余計な行為は許されない。



「……ぞっとするな」
「ええ」
 ずっと昔に王家が行っていたことを知って、達哉はぶるっと身震いした。フィー
ナも隣で肩をすくめている。
 戦役の起こる遙か前、月と地球が友好的だったころの歴史を調べているうちにフ
ィーナが捜し当ててしまった、王家が存続していくために取っていた手段。
「そりゃ、子供は大事だ。宝だ。産むために最善を尽くすという狙いはわからなく
はないけれど」
 達哉の憤慨混じりの声をパートナーである女が引き継ぐ。
「こんなやりかたは間違ってる」
 妻であり王女であるフィーナの力強い言葉に達哉も大きくうなずいた。
「王家の人間だからこそ責務があって、束縛を受けることだって確かにある。けれ
ど、こんな管理はおかしい。私は自由よ」
“フィーナは自由奔放すぎるかもしれないけどな”
 鼻高々な妻に達哉は心中で苦笑する。八年前、ホームステイに訪れた月のお姫様
は自分を選んでくれて、夜にひとりで部屋へ、契りを結びに来た。今にして思えば、
とんでもないことだ。若かったから、まだ少年と少女だったからこそできたこと。
 それからの彼女との交わりが走馬灯のように頭をよぎる。カテリナ学院で、朝霧
家の風呂場で、トランスポーター内で、そしてウェディングドレスでの忘れられな
い初夜がくっきりとよみがえった。
「だから私たちは、正しい子作りをしましょう」
 緑色の瞳に妖しい光を帯び、艶笑したフィーナを、
「きゃ」
 達哉は荒々しく押し倒し、覆いかぶさっていく。
「子作りだけじゃないよ。俺がフィーナを愛する、性の営みだ」
「愛して、気持ちよくなる、ね」
 くすくすと笑うフィーナへ顔を重ね、唇をふさいだ。ねっとりと絡みあうディー
プキスが繰りひろげられ、妻の体温も夫の体温も急激に上昇する。汗混じりの官能
臭がひろがりだす。
 達哉はナイトドレスの上から手をねちっこく這わせる。脱がす前にもいくらだっ
て愛せる。子作りとは関係ない、愛したいからこそ愛する手技をほどこす。
 キスがほどけたとたん美しい妻が愛技に敏感に反応して、なんとも悩ましげな声
を迸らせる。媚声に煽られ、達哉は唇で首筋に吸いつき、手をドレスの内へ潜らせ
た。感じる女の声はいっそう高く、悩ましげに、切なさまでも響かせた。
 くだらない歴史を頭から追い出し、達哉はフィーナを愛する行為に没頭していく。
ふたりで自由な交わりを謳歌し、男は股間を大きくふくらませ、女は股間をびっし
ょり濡らしていた。

(終)