8_5-360 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2010/09/28(火) 07:11:17 ID:BCgScl1z

「・・・・・・また、持ってきちゃった」
自室のカーペットの上へペタリと座り込み、麻衣は手にした布を広げて呟いた。
それは男性用の下着だった。
水色とミディアムグレイのチェックの柄。
兄である朝霧達也のトランクスだった。

朝霧麻衣は、近所でも評判の良くできた妹さんだったが
実はというと、一つだけ人には言えない趣味を持っていた。
それがこれ。
兄の使用物の蒐集である。
もちろんのこと、現在使っているものを頂いてくるのではなく
ちびて書きにくくなった鉛筆や、年度末で不要となった
授業のノート(これは自分の勉強にも使う)など。
主にいらなくなったものを拝借しているのだが、
しかしながら本日麻衣のコレクションに加わったものは、現在進行形で達也が使っているものだった。

脱衣所で入手したそれは、脱ぎたてのほやほや。
洗濯機の中で水と洗剤で清潔にされる前の、本人の温もりすらも仄かに残っているピチピチの漁れたてだった。
名前が書いているわけではなかったが、この家でトランクスを履く人物は一人しかいないので
もちろん兄のものだろう。
畳み終えたタオルの束を脱衣徐に持っていったおりに発見してしまった、それ。
気が付くと、いつの間にやら麻衣は自分の部屋へと持ってきてしまっていたのだ。

現在の時刻は夜中の12時15分。
日付が変わってから少し経つ。
姉である穂積さやかは明日もまた仕事なので、もう床に就いている頃合い。
とっくに夢の中だろう。
兄である朝霧達也も受験生ではあったが、バイトが疲れたので早めに寝ると言っていたし
壁越しの隣の部屋からは物音一つ聞こえない。