7-444 名前: 外伝 ◆9QlRx9nooI [sage] 投稿日: 2007/09/29(土) 21:43:37 ID:YbOTuJqU

「留学?」
「ええ」
 菜月から聞かされた話に、達哉はしばし唖然としてしまった。
翠が突然転校したという。
「音楽の勉強の為に、海外に留学だって」
 淡々と語る菜月だが瞳が揺れている。無理もない。大の親友だったのだから。
「そっか……。それで、あんな事…」
「あんな?」
「い、いや、なんでもない」
 誤魔化すように、達哉はちゅっと菜月の唇を奪う。ベッドの上で。二人とも全裸。

 トラットリア左門でのバイトを終えた後、達哉はそのまま菜月の部屋に寄っていた。
誘ってきたのの菜月から。達哉は遠慮することなく、幼馴染と甘い一時を過ごし、
そして聞かされたのは翠が急遽転校していった事実。
 菜月と肌を重ねながら、達哉が思い出すのは翠との学校での交わり。
(そっか……。あれは最後の思い出作りだったんだ)
 今ならそれに気付く。いつもの翠らしくなかったのも、それが原因だろう。
 そんな事を考えながら、達哉は菜月のナカで果て、膣内射精していた。別の女の事を考えながら。
「……はぁ」
 深々とした甘い吐息。ぎゅっと抱きつく菜月の身体が硬直して、絶頂を伝える。
「ふー」
 出すものを出すと、達哉は早々に菜月から離れてベッドから上がり、汗を拭いた。
これからすぐ家に帰らないと。麻衣が待っているから。
「それじゃ菜月。また明日」
「うん。またね」
 ちゅっと唇を重ね、しっかり衣服を整えた達哉はトラットリア左門を後にする。
 外に出ると月が綺麗に輝いていた。

「お兄ちゃん」
 家に帰ると、早速麻衣が玄関で迎えてくれる。
「今日はね。お姉ちゃん仕事で徹夜だって」
 つまり家には達哉と麻衣の二人きり。
「で、そんな格好か……」
 ハァと達哉は深くため息。胸をドキドキさせながら。
「えへへ」
 くるっと回って見せる麻衣はエプロンのみを身に付けていた。裸エプロン。
小さな丸いお尻が丸見え。
 麻衣は小首を傾げ、
「お仕事、お疲れ様でした。お風呂から先に入る? ご飯? それとも……わ・た・し?」
 ハァともう一度深くため息。だがもう達哉は決めていた。
「きゃっ」
 麻衣をエプロンの上からぎゅっと抱きしめ、唇を奪う。
「んっ」
 舌を挿れて深く吸う。口を離すと唾液が垂れていた。
「麻衣を……台所で食べたい」
「はいっ」
 きゅんと胸を高鳴らせ、舞い上がるように麻衣は兄の腕に飛びついた。
 そのまま抱き合いながら台所に移動していく。



「手を付いて、こっちに向けて」
 台所に手を付けた麻衣は、言われるままお尻を上げて兄に向けた。ふるふると丸いお尻が揺れている。
「なんだ……もう濡れてるじゃないか」
 すっと指でお尻の下のピンクの割れ目をなぞると、ビクッと跳ね上がった。
「だって……」
 うっすらと頬が紅潮し、ふりふりとお尻を揺らしながら、
「お兄ちゃんが……待ち遠しかったんだもん…」
 待っている間、我慢できずに一人でしていたらしい。
「麻衣はスケベさんだな」
「お兄ちゃんがいけないんだよぉ」
 早くぅ、とお尻をぐいぐいと麻衣は押し付けてくる。
 苦笑しながら達哉がズボンとパンツを降ろすと、もうギンギンに膨らんでいた。
……さっき菜月としたばかりなのに。
「いくぞ」
「うん……早く、早くぅ」
 ふるふると揺れるお尻をしっかりと掴んで固定し、達哉はぐいっと突き上げる。
「アーッ!」
 麻衣の嬌声が台所に響き、お腹の兄を一気に締め上げた。
「くっ……すごい、凄いよ麻衣…!」
 いきなりの締め付けに達哉はぐっと歯を食い縛る。しかも締め付けながら腰を縦横無尽に振り回すのだ。
「はぁ、はぁぁ……はぐううぅ! お兄ちゃん、お兄ちゃん!」
 甘く激しい喘ぎに胸を締め付けられながら、達哉はただ下半身を振り回され、
完全にペースを麻衣に奪われている。
「ああぁ……ああ……。いっぱい、いっぱい、もっといっぱいしてぇ」
 こぼれる唾液が床に落ち、肉と肉が擦れ、脳内に絡みつくような赤と白の爆発を生んでいった。
「麻衣……麻衣!」
 俺の可愛い妹。小さな頃からずっと一緒の守ってきた妹。血が繋がらないとはいえ、
その妹と結ばれている。抱いている。穢している。
 その事実が達哉をさらに昂ぶらせ、連続の情事に萎えた体に精力をもたらしていた。
「あぐううぅ……はぐううぅっ!」
 目の前で麻衣の白い背中が揺れている。腰を支える手を達哉はエプロンに包まれた胸に回し、小振りの乳房をぎゅっとつまみ上げた。
「はああぁぁーーーっ!」
 ビクンと背筋が仰け反り、硬直し、同時に達哉も達した。
 ドクッ、ドクンと注がれる熱い射精を感じながら、麻衣は何度も何度も絶頂の波に浚われる。
「ああああっ! がああああああああーっ!!」
 そして出し終わった達哉は、ふーと息を吐き、脱力して台所に倒れ込む麻衣の頬にキスした。
それでも二人の下半身は離れない。
「お、お兄ちゃん……今日はずっと……」
「ああ。ずっとだ」
 明日は学校だが関係ない。今はただ麻衣と一つになっていたかった。
 それからテーブル、お風呂、ベッドと場所を変えての四連戦と続く。
 腰が痛くなるまで腰を振り続け、膣が抽出を繰り返した。

 だが達哉も麻衣も気付いていなかった。
 家中に設置された隠しカメラが二人の情事を全て映していることを。そして
それを見ている者がいることを。



 次の日の放課後。
「うー。いたた」
 まだ痛む腰をさすり、達哉はふわぁと欠伸する。腰の痛みと眠気で今日は授業どころではなかった。
 それに引き換え、麻衣は全然平気そうだった。今日も吹奏楽部があるので学校に残っている。
正直、麻衣のタフさが達哉には羨ましかった。
 そして麻衣は部活、菜月はもう少し勉強するとかで学校に残り、達哉はひとりで下校していた。
「二人とも頑張ってるんだな」
 吹奏楽部で頑張る麻衣、獣医を目指して大学進学を決めた菜月。ひたむきに頑張る姿に、達哉もまたやる気になる。
 歩きながら空を見上げる。青い空のさらにその先にある月。
「俺も……頑張らないと」
 フィーナの夫としてふさわしい男になる。それが今の達哉の目標。
 自分を信じる恋人のことを思うと胸がちくりと痛み、同時に股間が疼いた。
 麻衣や菜月も悪くない。だがやはりフィーナのあの高貴な美しさも忘れたが買った。
 凛々しく気品あるお姫様が、自分の腕の中だけでは淫らに悶える。それは何とも言えぬ優越感と愉悦となって愉しませてくれた。
「はぁ……」
 今はフィーナのことは考えても仕方ない。
 家に近付くと、わんわんと鳴き声が聞こえてきた。いつもより元気なイタリアンズの声にホッとさせられ、頬が緩む。
「はなせー」
 か弱い声が聞こえ、達哉はすぐに駆け出した。
「リース!?」
 自宅の庭を見ると、金髪の少女がイタリアンズにみみくちゃにされている。
間違いない。リースだ。
「こ、こら。お前たち」
 すぐさま達哉が止めに入ると、今度はこっちに甘えてきた。そのおかげでリースは抜け出す。
「ほら。お座り」
 なんとかイタリアンズを引き離し、達哉はリースの手を取った。
 小さく暖かい手。
 何故かドキッとしながらも、玄関に引き入れていた。
「ご、ごめん」
「いい」
 達哉の手をほどき、ぱんぱんと埃を払いながら、いつもの淡々とした調子でリース。
「あ、うん。ごめん」
 なんだか上擦った声でもう一度謝る。
 それにしてもリースは本当にひどい有り様だった。ドレスは誇りまみれになり、
可愛い顔も輝く金髪も同様に黒く汚れている。
「うあわわ……。リ、リース、家のお風呂使ってよ」
 言ってから何言ってんだ俺はと、混乱する頭で自己ツッコミ。
「い、いや……その、変な意味じゃなくて、汚したお詫びに……」
「うん……」
 何やらこくっと頷いたリースは、顔を上げ、朝霧家の中をじっと見た。
 幼いながらも神秘的な顔に、達哉はボーッと見惚れてしまう。
「この家……」
「え? 何?」
「……何でもない」
 リースの手がそっと達哉の腕を取る。そして顔を見上げ、
「お風呂……入る」



 何でこんな事に?
 見慣れた我が家のお風呂を見ながら、達哉は頭が「?」でいっぱい。
「ん」
 見下ろすと、後ろを向いたリースが丸くなって待っている。裸で。
 白い背中、それを覆う緩やかにウェーブがかった金髪。裸の金髪少女の背中を前に、
達哉は「なんで?」と固まっていた。もちろん全裸で。

「いっしょに……」

 リースにそう言われた瞬間、達哉はボッと火が点いたように顔が赤くなり、
頭の中が真っ白になり、気が付いたら服を脱いで、全裸のリースと一緒にお風呂にいた。
 麻衣よりもミアよりもさらに小さなリースの背中。ごくっと生唾を飲み込む。
「ん」
 催促するようにリースが声をかける。そうだ。体を洗いにきたんだ。
 熱いシャワーを背中にかけてやりながら、スポンジを手に持つ。
「熱くないか?」
「大丈夫」
 淡々とリース。複雑な想いを抱きながらも、リースの金髪を掻き揚げる。
スポンジ越しでも彼女の柔らかさとスベスベの肌がはっきりと感じられた。
「流すよ」
 泡だらけになった背中をシャワーで流す。と不意にリースがこちらを向いた。
「わわっ」
 金髪に包まれているはいえ、いやだからこそリースの裸体は扇情的だった。
 あからさまに動揺する達哉をいつもの平然とした眼差しで見つめ、リ−スは下を指差す。
「それ」
 指差した先にあるものを自分でも見て、達哉は慌てて股間を隠した。
「うわっ」
 達哉の性器は見事に勃起していた。正直に。
「隠さなくていい」
と言われても。逆に達哉が「うー」と小さくなる。
「ん」
 リースの手が首の後ろに回る。そして顔にムニッと触れた。小さなリースの膨らみが。
「むはっ」
 未成熟どころではなく、まだ膨らみはじめのリースの淡い乳房。顔に押し付けられたそれは、しっかりと柔らかい。そして、
「好きにしていい」
 その言葉に達哉は理性を遠い場所に投げ捨てた。
 リースの華奢な腰に手を回して抱きしめると、ふにふにと顔を振って乳房をさらに味わう。
そのまま小さなピンクの蕾を口に含んで、カリッと甘噛んだ。
「あっ……」
 リースの胸が震える。そして反射的に漏れる声。
 歯でカリカリと刺激を与えてから、今度は舌で優しく包んでちゅーと吸った。
「やっ……んっ……いい……」
 達哉の顔に抱きつきながら、リースの口から切ない声が漏れていく。
 ちゅっぱ、ちゅっ、ちゅっ……。
 華奢な乳房を吸う度に、ぐっと頭を抱える腕が震える。胸の鼓動が高まる。
それを直に感じながら、達哉は両手をお尻へと回す。
「きゃっ」
 小さな丸いお尻もふるふると震えていた。太股に指を走らせ、そのまま脚の付け根までなぞる。
まだ毛も生えていない縦筋を。



「はあっ!」
 ビクッ、とリースが硬直し、そして脱力した。顔を抱える力も緩む。
「ふぅ」
 達哉はようやくリースの腕から抜け出して、ホッと一息つき、すっかり紅くなったリースの顔にキスした。
くちゅ、と小さな唇に。甘い味。
 口を離すと、リースはぽーとぼんやりした表情をしている。彼女にしては珍しい。
「初めてだった」
 頷くリース。キスが初めてなら、当然この先も初めてだろう。
「脚、広げて」
 ぼんやりしたリースは言われるまま、細い脚を広げる。達哉の膝の上で。
「よし」
 リースの顔が自分よりも下に来る。その金髪に鼻を寄せ、少女の甘い香りを愉しみながら、
指はくちゅっと股間を弄んでいた。
「んんぅ」
 腕の中で悶えるリースを感じ、達哉は優越感に浸っていた。普段はクールなリースが、
今は甘い声で喘ぎ悶えている。
 もっとだ。もっと。
 熱い割れ目に触れる達哉の手が肉のヒダを左右に押し広げていく。
「ひっ」
 ピンクの膣肉を晒されるのを感じ取り、リースに一瞬恐怖が走った。その表情も達哉の劣情を刺激する。
「リース……ほら」
 達哉がつんつんと腰を上げた。リースのお腹に下から硬いものが触れる。男の象徴が。
「これが……リースのナカに入るんだよ」
 じっくりと愉しみたいが、もう我慢できなかった。最近どうも堪え性が無くなっている。
「あ……はぅ……」
 リースはただぱくぱくと口を動かすのみだった。何か言いたくても言葉にならない。
幼い肢体は極度に緊張していた。
「いくよ」
 リースの緊張を肌で感じながら、達哉はリースの小さな身体を抱えて、下に降ろした。
「ひぎいいぃ!」
 ぐっと食い縛った歯から嗚咽が漏れる。
 突き刺さった幼膣からは血が滲んでいた。
「ひいいっ! ぎいいいぃっ!」
 がくんがくんとリースが揺れ、それが衝撃となって達哉の肉棒に伝わる。痛いほどに。
だが止めるわけにはいかない。
「ほら。ほらっ。リース!」
 がっと肩を抑え、一気に押し込む。
「ひぎゃあああぁぁぁぁーっ!」
 ギリリッと幼肉が裂け、溢れる血が二人の股を濡らしていった。
 同時に強烈な締め付けが達達哉を襲う。今までの誰よりも窮屈な肉。
それは痛みとなって達哉を襲い、同じ痛みをリースも味わう。
「ぐっ…! これは……!」
「はがああぁぁぁーっ! あぐうううぅ!」
 葉を食い縛って何とか達哉は耐えたが、リースは何度ものた打ち回り、
それがさらなる衝撃となって男根が突き刺さる膣に伝わった。
「くっ。もう」



「はぐうううぅっ! わあああああああああーっ!」
 リースの叫び、涙を受けながら、達哉は下から腰を突き上げ、膣内に放つ。
「はあっ……あぐううアアーッ」
 精を受けた事も気付かず、叫び続けるリースの声が狭い風呂場に反響した。

「はぁ、はぁ」
 ようやく達哉から解放されたリースはぐったりとその場に崩れ落ちる。乱れた金髪が何やら痛々しい。
「シャワー流すよ」
 じゃーと流れるお湯が血と汗を流していった。リースの股間からこぼれる白濁液も。
「ふー」
 自らの体もシャワーで荒い、達哉は崩れたリースをよっと抱えた。
「ほら。体拭くぞ」
「うん…」
 リースは内股がヒリヒリ痛み、歩く事もままならない。達哉に抱かれながら、
何故か安堵した表情になっていた。
「タツヤ……」
「ん? なんだ?」
 体を拭いてもらいながら、リースが唐突に告げる。
「フィーナが地球に来ている」
 ピタッと達哉の手が止まる。
「本当?」
「往還船で。ワタシはトランスポーターを使ったから一足先に来れた」
 物見の丘公園の軌道重力トランスポーターは今は封印中のはずだが、リースだけはフリーで使えるらしい。
「そっか」
 話を聞いた達哉は満面の笑みを浮かべていた。フィーナと逢えるのを単純に楽しみにしているように。

 それから埃を払ったドレスを着て、リースは朝霧家を後にする。
まだ内股の痛むリースを達哉は引き止めたが、リースは固辞した。もう目的は果たしたから。
 あの家に隠しカメラが設置され、監視されている事にリースはいち早く気付いていた。
それを承知で、リースは達哉を誘い、抱かれた。カメラの向こうの彼女を挑発するように。
「さて。どう出るか」
 触手の他にも、あのお姫様はロストテクノロジーを発掘したはずだ。
それを回収するのが今度の任務。
 痛む内股を引きずるように歩きながら、リースはお腹をさする。平坦なお腹。
「赤ちゃん……できるかな……」

 フィーナが地球に来ている。その事をリースから聞かされた達哉はいてもたってもいられなくなった。
自分から大使館に逢いに行こうかとも思ったがやめた。本当に地球に来ているなら、
向こうから逢いに来てくれる。無条件でそう信じていた。
 ベッドにごろんと横になりながら、股間の疼きを我慢する。疼く。股間が。
熱い。下半身が。
 フィーナの美しい裸体を回想しながら、達哉はひたすら待った。
 遅い。まだか。まだなのか。フィーナ!
 待望のその時が来たのは、夜中だった。午後10時。不意に携帯電話に一本のメールが届く。
『あの場所で−       
        フィーナ』



 はぁ。はぁ。
 ただがむしゃらに達哉は夜道を走る。
 夜の物見の丘公園。人気の全くない夜の公園を。
 達哉とフィーナによって、そこにある塔が軌道重力トランスポーターと確認されてからは、
地球と月の合同調査団が入り、周囲は閉鎖され誰も入れないようになった。
その危険度を考えれば当然だろう。
 だが今は警備の人間すら一人もいない。フィーナが手配してくれたのだろうか。
 そして彼女はそこにいた。
 塔の真下。祈るように両手を前に組んでいる。見慣れたドレス姿で。
 風になびく長い銀髪が月の光を浴びてキラキラ輝いている。

 ああ……やっぱりフィーナだ。

 淡い光に包まれた銀髪のお姫様。まるで御伽噺からそのまま飛び出たかのような。
そして俺の恋人。
 数歩手前で止まり、そっと呼びかける。
「フィーナ」
「達哉」
 フィーナもそっと呼ぶと、自ら飛び込んできた。懐かしい恋人の胸へ。
「お久しぶり……」
「そうでもないさ」
 達哉が月留学から帰ってからまだ何日も経っていない。だが達哉もずいぶんと久しぶりに感じていた。
いろいろあったから。
 再開、そして抱き合う恋人を、月と塔が静かに見下ろしている。

 いつまでそうして抱き合っていただろうか。
「ねえ。達哉」
「ん?」
 顔を上げ、フィーナがきりっと睨むような視線を向け、
「私の質問に答えて。正直に」
「ああ。もちろん」
 どんな質問だろうと思っていると、
「浮気していない?」
「は?」
 いきなりの質問に面食らう。
 ミアと、菜月と、麻衣と、翠と、リースとの交わりが思い出される。いやミ
アとのことはフィーナも承知していたはず。
 ドン、と不意に達哉はフィーナを突き飛ばす。
「きゃっ」
「なんだよ……それ」
 ぐっと拳を握り、達哉は語気を荒げた。
「俺が……俺が愛した女はフィーナだけだ!
 それなのに、フィーナは俺が信じられないっていうのか!」
「達哉……」
「ああ、そうか! フィーナは、俺が浮気するような男だと思ってたのか!
信じてなかったのか!」
「違う……それは違うわ」
「謝れ! 今すぐ謝れ!」
「……ごめんなさい……」
 深々とフィーナは頭を下げる。一国の姫が頭を下げるなど滅多にないことだ。
「私が悪かったわ……。本当にごめんなさい」
 顔を上げたフィーナの瞳は揺れていた。涙で。



「俺の方こそ……怒鳴って悪かったよ」
 歩み寄り、その肩に手を置くと、達哉は再び抱きしめる。月の姫を。
「フィーナ以外の女性には指一本触れてないよ……。安心して」
「ええ、そうよね……。疑って悪かったわ」
 目を閉じて、フィーナが顔を上げる。達哉はそっと口を重ね、自らも目を閉じた。
 月光の下での仲直りのキス。
 唇を合わせながら、フィーナが先に目を開ける。

 その瞳は怒りに燃えていた。

(つづく)