7-424 名前: 翠の冒険 投稿日: 2007/09/24(月) 23:06:19 ID:FmZIhLb/

「おはよう」
 朝。ぱちっと目を開けると麻衣が横に寝ていた。
「…おはよう」
 するするとベッドから降りようとすると、麻衣が襟首をつかんで顔を近づけてきた。
「わ、わわっ」
 慌てる達哉の額に自分のを合わせ、ニコッと微笑む麻衣。
「うん。熱引いたね。もう大丈夫」
「ああ……うん」
 昨日は達哉は熱を出して寝込んでいた。そもそも麻衣から伝染されたカゼなのだが。
そして看病しにきた菜月と交尾したりいろいろあったわけだが。
「じゃ、今日は学校行くでしょ。下で待ってるね」
 いつもと変わらない麻衣の様子に、ホーッと安堵の息を吐く。最近の麻衣は、
なんというか妹から抜け出そうとしてる気がするから。
「あ、お兄ちゃん」
 部屋を出る直前、麻衣は口元から白い液を滴らせ、
「朝立ち、て言うのかな。苦しそうだったから抜いてあげたね」
 紅い顔で言うとくるっと背中を向けて駆け出す。
「へっ?」
 下を向いてようやく達哉は気付いた。パジャマがずり降ろされ、ちんこがぷらぷらと飛び出ていることに。
朝はいつも元気な息子が、今はしょぼんと萎れ、なんだかすっきり爽やかな気分。
「ま、麻衣〜」
 へなへなと崩れ落ちた達哉は、とりあえず学校に行く支度をしました。

「お…おはよう」
 家を出ると菜月が待っていた。
「お…おはよう」
 顔を合わせると達哉と菜月は真っ赤になる。今にも蒸気が出そうなほど。
昨日の情事を思い出したらしい。
「あ〜〜〜〜〜〜〜〜。もう二人して朝っぱらから!」
 見てるほうが恥ずかしくなっちゃうよ〜、と麻衣は達哉の手を引いてすたすたと行ってしまう。
「ねえ、お兄ちゃん」
 そして後ろを付いてくる菜月に聞こえるように大声で、
「今度の日曜日、デートしようか」
「ぶっ」
 噴き出す達哉。後ろの菜月はボンと顔を爆発させている。
「デ、デデデデ、デートって、お前」
「えー。いいじゃない」
 麻衣はきゅっとつかんだ腕を胸まで引き寄せる。自分のものと見せ付けるように。
「もう……したんだし」
「わー! わー! わー! アッー!」
 急に叫びだす達哉に菜月は唖然としてしまう。
「ま、まままま、麻衣。とりあえずその話はあとで」
「…うん」
 小声で呟くと、麻衣は紅い顔で自分のお腹を見下ろし、
「赤ちゃん……できるといいなー」
「あわわ」
 泡くったように、麻衣に腕をつかまれたまま頭をぶんぶん振る達哉。
 麻衣だけではない。ミアや菜月も孕んでいるかもしれないのだ。自分の子を。
それをフィーナが知ったら……。
 ゾッとする思いで達哉はカテリナ学院に登校した。



「おはよー」
 自分の机に着席して、一息つく間もなく今度は翠が来た。
「お、おはよう」
 つい緊張してしまう。昨日の菜月との交尾は翠にも見られていた。
「カゼのほうはもう大丈夫みたいだね」
「あ、ああ……。ありがとう」
 そういやお見舞いに来てくれたんだっけ、と達哉はようやく気が付いた。
「…菜月のラブパワーが効いたのかなーなんて」
 ふふふと笑う翠に、何も言い返せず下を向いてしまう。隣の席の菜月も顔を真っ赤に爆発していた。
今日何度目だろうか。
 と、達哉は気付いた。翠が紙片を手の中に渡してくるのを。
 受け取った紙片を机で隠してコソコソと開くと、次のように書いてあった。

『放課後、音楽準備室で』

 見上げると、翠はニヤッと笑っている。

 特に何事もなく(普通はそうだ)放課後。
 紙に書かれていたように、音楽準備室に達哉が向かっていると、
「お兄ちゃん」
 ついビクッと震えてしまう。いつもの可愛い妹の声なのに。
「どこ行くの?」
 そう。いつもの可愛い麻衣だ。
「あ、ああ……。ちょっとな」
 視線を逸らし、頭をかく達哉を、麻衣はふーんと見上げていた。
「ねえ。お兄ちゃん」
 不意に身を寄せ、麻衣は囁いた。
「今日はその……しないの?」
「お、おい……学校で」
 こちらを見上げる麻衣を見て、達哉はごくっと息を呑んだ。潤んだ瞳、
紅く染めた頬で見上げる麻衣。鼻腔をくすぐる甘い香り。
 つい下半身がむずむずと反応してしまう。
「ねえ……」
 学校の廊下で、妹に迫られた兄はドクンドクンと鼓動を高め−

「朝霧君」
 声にハッと我に返る。
 翠が声をかけ、身を寄せる兄妹をニヤニヤと見ていた。
「ほらほら。急がないと間に合わないよ」
 何が間に合わないのか分からないが。助けに船とばかり、達哉は麻衣からそっと離れ、
「じゃ、じゃあ。先に家に帰っておけよ。今日、部活ないんだろ」
「う、うん……」
「ごめんね。朝霧君ちょっと借りるから」
 せかせかと廊下を進む達哉と翠。麻衣はいつまでもじっと二人の背中を見ていた。
いつまでも……。

 様々な楽器が置いてある音楽準備室。普段なら吹奏楽部が使っているのだが、
今日は部活はない。
だから翠はこの場所に呼び出したのだろう。
「これでよし、と」
 達哉と一緒に音楽準備室に入った翠は、中から鍵を掛けた。
「……その鍵どうしたんだ?」
「いいから、いいから」



 クスッと微笑んだ翠は手近な椅子に座ると、ニヤニヤと達哉を見上げてくる。
「それで……何の用だよ」
 憮然と達哉は尋ねる。どうせろくでもないことだと思っているから。
「朝霧君はさ。フィーナと結婚するんだよね」
「あ、ああ……」
「ビックリしちゃったなー。まさか朝霧君が月のお姫様をゲットしちゃうなんて」
 急に何を言い出すのかと、達哉は内心ヒヤヒヤしながら、次の言葉を待った。
「でもいいのかな。菜月とあんなことしちゃって」
 来た! 予想通りの展開に、達哉の冷や汗は全開になった。
「あ、あれは……その…」
 予想できても対応が思いつかないのが我ながら情けない。そう思いながらも、
達哉は必死に思考を巡らす。だがどう言えば翠が納得する?
 その思考はクスクスという笑いにかき消された。
 必死に言い訳(そう。言い訳だ)を考える達哉を見て、つい翠は噴き出してしまった。
ぱたぱたと手を振りながら、
「いいのいいの。下手な言い訳はしなくても」
「へ?」
「菜月がしたかったから、したんでしょ? 朝霧君優しいから」
 うー、と黙り込んでしまう達哉。優しいと言われるとちょっと照れる。
「菜月はね……ずっと好きだったんだよ」
 急にしおらしい声で翠。何かがズキンと達哉の胸を突いた。
 翠がじっと視線を注ぐ。その潤んだ瞳を見て、また達哉の胸が疼いた。さっきの麻衣と同じ熱い眼差し。
「ねえ……」
 しゅるっ、制服の胸のリボンをほどき、腰を浮かせ翠が顔を寄せてくる。
「菜月とのことは黙っててあげる……」
 間近に迫る翠の顔。いつも顔を合わせる同級生に、達哉はドキンドキンとときめいていた。
いつもは感じた事のない色気がそこにはあったから。
「だから……わたしにも……」
 それから後は言葉が続かなかった。達哉の胸に顔を埋め、そっと抱きついてくる。
ふわっと被さるような熱い体温に、ごくっと生唾を飲み込んだ。
「お、おい……」
 目の前で揺れる翠の髪。無意識のうちにその頭を優しく抱え込む……頭がボーッとなり、
体が勝手に動いていた。
「いい……のか?」
 こく、と腕の中の翠が頷く。
「でも……」
 胸をよぎるのはフィーナの顔。あの美しい銀髪のいい香りが甦ってくる。
「今は……忘れて」
 胸中を察したかのように翠がぎゅっと胸を掴んでくる。そして再び上げた瞳からは涙が一筋こぼれていた。
 こぼれる涙をぺろっと舐め取る。塩辛い味がした。そのまま頬に唇を寄せ、
ちゅっとキスしたまま横に動かす。
「あ……」と言った唇に達哉のが触れ、吸った。甘い汗の味。
「ん……」
 閉じた瞳からまた涙。でも今度は甘い味。飲まなくても分かる。
だって想いが叶った涙だから。
 ちゅーと唇を吸い、ぽんっと離す。唇を尖がらせた翠はクスッと笑い、
「この浮気者」
 はにかむような笑顔で達哉はキスして言葉を塞いだ。女に口では勝てないから。



 ちゅっ、ちゅっ、と淫らな音が音楽準備室に響く。最初は小さく、やがて大胆に大きく。
「んっ……んっんっ」
 達哉の手が腰に回り、しっかりと抱きしめて何度も口を重ねてくる。時にぶつけるように、
時に優しく、そして甘く。
「ふぁ……」
 いつしか二人の口を唾液が結び、潤んだ瞳が熱を帯びていた。
 リボンを解いた翠のブラウスに腰を支えていた手が伸び、ボタンを一つずつ外していく。
「慣れてるんだ……」
 ポーッとした頭でぼんやりと翠が呟く。キスといいボタンを外す手付きといい、
達哉は何だか熟練者のような赴きがあった。
 その言葉をまたキスで塞ぎ、純白のブラジャーの上から手を覆い被せる。
「んっ」
 ビクッと手の中の胸が跳ねた。程好い大きさの柔らかい膨らみ。
 いつも見ている同級生の女子の胸。その下にこんな良いものが隠されているなんて、
なんだかずるいと思った。
 むにと揉むと抵抗なく受け入れ、指が食い込んでいく。見た目よりずっと柔らかい。
「あ……あぅ……」
 翠の吐く熱い吐息が直に伝わってくる。でもそれは達哉も同じだ。
 胸を愛撫しながら、もう片手で翠の手を股間に導いてやった。
「きゃっ!?」
 慌てて離れようとする手をしっかりと押さえ、達哉は直に伝えてやる。自分の興奮を。
「ほら……。ここ、熱くなってるだろ」
「う、うん」
 ごくっと息を飲む翠。触れた股間はズボンの上からでもはっきりと膨らみ、
そして熱かった。
「これが……朝霧君……」
 恐る恐る指を這わせると、ビクンビクンと鼓動が伝わってくる。
「うん……分かるよ。すごく興奮してる……」
「翠がこうさせたんだよ」
「う〜」
 恥ずかしさで真っ赤になってしまう。菜月のように爆発することはないけど。
でも嬉しい。好きな人が自分でこんなにも興奮してくれるなんて。
(好き)
 言葉には出さず、自分から「えい」とキスしてやる。
(好き。好き)
 指をくるん回すと、股間の膨らみも一緒に回転。なんだかおかしい。
 お返しとばかり、達哉もぎゅっと乳房を掴んできた。
「はあぅん!?」
 ビクッと飛び跳ねた翠は達哉の肩に顔を乗せ、ハァハァと息を整える。耳元の息遣いが妙にくすぐったい。
「ブラ……外すよ」
「うん……」
 密着したまま手探りでブラジャーを外す達哉に、翠は「やっぱり慣れてる」と毒づいた。
「椅子に座って」
「うん……」
 勧められるまま椅子に座ると、腰を落とした達哉がじっと胸を注視してきた。
膨らみの頂点に咲くピンクの乳首につい目がいってしまう。
「やだ……見ないでよ」



 手で隠そうと思っても体が動かない。なんだか痺れちゃう。それに今更だ。
「こっちも……いいよ」
 お行儀悪く、椅子に座ったまま股を開いて見せた。
「へー」
 スカートの中を見て思わず達哉はにやけた。

 パンツ穿いてない。

「も、もう……。恥ずかしかったんだから……」
 どうやら最初からこうするつもりでパンツは脱いできたらしい。
 脚の付け根、割れ目を薄い陰毛が覆い、中にはピンクの肉が垣間見えた。
 そっと指をスカートの中に入れ、割れ目を押し込むと腰全体がビクッと振動し、
椅子を揺らした。翠の中心はもうしっかりと濡れている。
「あうっ…やだ……」
「可愛いよ」
 触れた指をぺろっと舐める。翠の目の前で。
「あぁ……」
 ただそれだけで身体がきゅっと熱く疼いた。火が付いたように。
「うううぅん……はぁあ……あ…」
 我慢できない。疼く。熱い。体が熱い。
「熱いよ……」
「俺も」
 ジャーとズボンのチャックを開く。と同時、ぷるるんと黒ずんだ肉の塊が飛び出した。
「きゃっ!?」
 根元に黒々とした陰毛を生やした達哉の分身。赤黒い先端を出してビクビクと揺れている。
「後ろ……向いて」
「オ、オッケ」
 いよいよだわ。緊張しながら翠は達哉にお尻を向け、椅子にしがみつく。下を向いた乳房がぷるっと揺れた。
 翠の尻を覆うスカートを捲れ上げ、すっと割れ目をなぞる。
「ひゃああっ!?」
 ビクッと震える尻。そのまま指をしゅしゅっと 走らせながら、もう片手を胸に回した。
「あうっ」
 乳房を覆うように包んだ手が下を向いて尖る乳首を手の平に、くりくりと回転して刺激を与える。
「はぁ……あぁ…」
 はっきりと眉をへの字に曲げ、翠は乳首を手の平で転がされるまま、一緒に腰を回していた。
指を走らせる秘所もじゅっと熱い液を滴らせ、達哉の指と目を愉しませる。
「ああっ……はぁ……はっ!」
 ゆらゆら揺れる同級生の背中を見ながら、達哉はそろそろ限界が近いのを感じていた。
「遠山……そろそろ…」
「あ、はあぁ……んぅ……」
 官能に身を委ねながら、翠はきっぱりと頷く。汗がぽたぽたと流れ落ちていた。
 胸と秘所から手を離した達哉が腰に手を回し、しっかりと抱え上げた。
「ゆ、ゆっくり、ね……」
 翠も自らさらにお尻を上げ、椅子にしがみついてその時を待った。
「はううぅ!」
 それはいきなり来た。
 メリメリと肉を引き裂き、達哉が己を捻じ込もうと入れてくる。



「は、ああぁ……ぐっ……」
 何かが侵入してくる異物感。痛みよりも真っ先に感じたのはそれだった。
 爪先が自然に浮き上がり、腰が一層上がる。腰に達哉の手が食い込み、ピンクの秘肉には灼熱の棒が突き刺さろうとしていた。
「あ、があぁ……」
 こぼれる涙がしがみつく椅子に落ち、視界が霞む。
 自分以外の誰かを受け入れるということが、こんなにも衝撃的だとは想像もつかなかった。
「あ。……はあぁ、あ、ちょっと、ちょっと待って……」
 翠のやや早口の声が耳に届いているのかどうか。達哉はゆっくり慎重に、己の先端を肉の割れ目へと押し込んでいく。
抵抗は感じる。だがそれは心地よい肉の快感となってさらに達哉を昂ぶらせるだけだった。
「だ、だ、ダメ……まってまって、ちょっと待ってよ」
 涎を垂らす口からは哀願の声が漏れる。ただ自分でも何を言っているかよく分かっていない。
そして視界が真っ赤になった達哉は腰をズンと突き出した。

「はぐううぅぅぅっ!!?」

 衝撃に翠の背中が仰け反る。そしてはっきりと感じていた。お腹に彼が入ってきたのを。
「はあぁ、はうっ! は、入ってる……入ってるよぉ……」
「あ、ああ……」
 いきなり根元まで埋め、達哉はぐっと歯を食い縛って動かなくなった。いや動けなかった。
翠のナカは暖かくて狭くて、気持ちよくて。こうしてジッとしているだけでも限界が来そうだ。
二人の結合部からは血がドクドクと溢れていた。盛大に噴き出した鼻血のように達哉の足元まで流れていく。
「く……んんっ」
 前を向いたままの翠は出血には気付いていなかった。痛みよりも圧迫感が強かったから。
まるでお腹の中の半分以上が彼のちんこで埋まったような気分になる。
「くくうぅぅ……うううぅん……」
 椅子にしがみつき、切ない喘ぎを漏らす翠に、達哉はビクビクと暴れ出しそうになる腰を必死に抑えていた。
まだだ。まだ早い。
「……うううぅ……はああぁ……」
 本当は思いっきり叫びたかったがなんとか翠は我慢した。外に聞こえるかもと思ったからだ。
だがかろうじて残ったその理性もすぐに吹き飛ぶ。
「くっ、キ、キツイ……」
 翠のナカはあまりにキツくて熱くて。達哉はあっさりと達した。
「だ、だす……からな」
「……んぅ……んあああああああーっ!」
 我慢していたものが一気に解き放たれ、翠のナカで達哉の精が爆発する。
「はあああーっ! アアアアアアアーッ!!」
 誰かいたら聞こえるだろうな。と頭の隅のどこかで考えながら、翠はあられもない嬌声を上げ、
仰け反らせた背中をピンと硬直させ、ガクッと椅子に倒れ込んだ。
「はあぁ……あぁ…」
 射精するだけした達哉も、息を整えながら倒れ込んだ翠から分身を引き抜く。
ぱっくり開いた穴からゴボゴボと白濁液がこぼれ、血と混ざって流れていった。
「おわっ」
 そこで達哉は気が付いた。ズボンを伝って血が流れている事に。



 それからの後片付けは大変だった。
 二人でせっせと血を拭き、汗が乾くまで待つ。
「うー。痛いよー」
 しっかりとパンツを穿いた翠だが、ひょこひょこと内股を庇うようにぎこちなく歩いていた。
行為中は夢中で気付かなかったが、今になって痛くなったらしい。
「そんなに痛い?」
「そりゃーもう。見事なビッグマグナムでしたわ」
「おーい」
「ま、さすがお姫様を射止めたモノってとこかな?」
「そういうことは言わない」
「ははは」
 何故か。達哉もおかしくなって、釣られて笑ってしまう。
「ねえ、朝霧君」
「ん?」
「また……たまったら抜いてあげるから」
「こら」
「じゃあね」
 くるっと背中を向け、翠は部屋を出ようとする。その顔が今にも泣き出しそうなのは達哉からは見えなかった。
「ふふ。赤ちゃん出来るかなー」
 それでも翠は笑顔で扉を開けた。泣いてるのは、らしくないと思ったから。
 部屋を出た翠は横を見て、
「ごめんね」
と言って、痛む内股で駆け出していく。
 誰かいるのかな? と思った達哉も部屋を出ると、
「ふんふふーん♪」
 扉の前で麻衣が座り込んでいた。口ずさむはデスマーチ。
「るんららーん♪
 たらりらったらーん♪」
 ゆらりと立ち上がった麻衣は、手にフルートを構えていた。その先端からしゅっと針が飛び出す。仕込みフルートだ。
「わー! 待て! 待て麻衣!」
「どいてお兄ちゃん! あの女殺せない!」
「いやいやいや。は、早く家に帰ろう! 落ち着け!」
「たらりらったらーん♪」
「とりあえず帰ろう! な!」
 デスマーチを口ずさむ麻衣を抱えるようにして、疲れきった達哉は帰路に着くのだった。

 だが達哉は知らない。フィーナが地球に来ている事を。

(つづく)