7-408 名前: 乳母を目指すミアの大冒険 牧場編 [sage] 投稿日: 2007/09/18(火) 21:45:26 ID:O5Mzzhmy

「ねえ、ミア。あなた乳母になりたいのよね」
 それは達哉が月での留学を終えて地球に帰った直後。
 フィーナに問われ、ミアは即座に頷く。
「は、はい! 母のような立派な乳母がわたしの目標です」
 だから達哉に抱いてもらったのだ。妊娠して母乳が出るようになるために。
無意識に手がお腹に伸びる。そうすると自然に笑顔が浮かんだ。このお腹に達哉の子がいるかもしれない。
そう思うだけで幸せな気持ちになれる。
 だがミアは気付かなかった。お腹に手を当てるミアを、フィーナがどんな眼差しで見ているか。いや睨んでいるか。
 達哉はフィーナの婚約者。生涯初めて愛した男性。
「ええ。あなたのお母様、クララはとても素晴らしい乳母でしたわ」
 懐かしそうにフィーナは目を細める。忙しい女王だった母に代わってフィーナを育ててくれたのは、ミアの母親だった。
 母を褒められ、ミアも素直に「えへへ」と笑みを浮かべる。
「それでねミア。私も子供を授かったら乳母にはミアになってほしいの」
「え!?」
 ビクンとミアは背筋を伸ばす。憧れが、夢が目の前に近付いたのを感じて。
「ひ、姫さま……」
 思わずその目が赤くなっていく。
「ほらほら。今からそんなことでどうするの」
「す、すいません……」
 はうっと頭を下げるミアにフィーナはくすくすと微笑んだ。
「だからね。ミアが立派な乳母になるために私もお手伝いしたいの」
「は、はぁ……」
「ついていらっしゃい」

 と、フィーナに連れてこられたのは牧場だった。
 緑の牧草が生い茂る牧場。まだ家畜は一匹もいない。これから入れるのだ。
「さあ。今日から頑張ってね」
「あ、あの。姫さま?」
 よく分からないミアにフィーナはくるっと振り返り、いつもの高貴な笑みを浮かべ、
「ねえ、ミア。乳母になるには何が必要だと思う?」
「え、ええと。それは子育てに必要な知識と……母乳でしょうか?」
「そうね」
 フィーナは手を広げ、牧場を示し、
「それで、牧場は何をする所かしら?」
「えと……牛さんを育てて、ミルクを搾ったりする所です」
「そうね。ミアは賢いわ」
「あ、ありがとうございます」
 褒められて、またミアは「えへへ」と素直に笑う。大好きな主人に褒められて、
メイドとしてこれほど嬉しい事はない。
「それじゃあ、頑張ってね」
と頑張ってと繰り返すフィーナ。と言われても何をどう頑張ればいいかまだ分からない。
「決まってるじゃない。はい、これ」
 ニッコリ笑ってフィーナが差し出したのは、
「鼻輪、ですか?」
「ええ。牛には鼻輪が付き物よね」
「え……?」
 ようやくミアは合点がいった。
 この牧場で牛になれというのだ。母乳を出すためだけの牛さんに。
「そ、それって……」
 震える眼差しでフィーナを見、ミアは「ひっ!?」と怯え、尻餅をつく。



 にっこりと口元に笑みを浮かべるフィーナ。だがその瞳は笑っていなかった。
その瞳に爛々と暗い炎を燃やしてミアを見下ろしている。それはミアも初めて見るフィーナの表情。
「あ、ああ……」
 膝が震える。立てない。そのミアにフィーナはすいっと歩み寄り、鼻をつまみ上げた。
「ひっ…!」
「さあミア。牛さんは鼻輪をつけなくちゃね」
と強引に、鼻輪を鼻に挟みこむ。鼻血が出るのも構わずに。
「い、いたい……姫さま痛いです……」
「あら駄目じゃない。牛さんなんだから、もーと鳴かないと」
 鼻輪を付けると、鼻血をぽたぽた流すミアを牧草に倒し込み、フィーナは頬にハイヒールの踵を乗せて踏みつけ、顔をさらに草に沈み込ませた。
「い、いた……!」
「もー、でしょ? 二度も言わせないで」
「も、もー」
 頬にハイヒールをめり込ませ、反対側に草を感じ、ミアは反射的に言われるまま鳴いていた。
フィーナの言葉には素直に従う。それは長年に渡って染み付いた慣習のようなものだった。
「ふふ。物分りがよくて助かるわ」
 ようやくフィーナは足をどけ、ミアは涙目でゆっくりと顔を上げた。それでもまだ四つん這いのまま、
「もー」と悲しげに鳴く。フィーナに許しを請うように。
「でも。まだね」
「きゃっ!」
 不意にフィーナが脚を振り上げ、ミアの胸を蹴り上げる。そして再び倒れ込むミアの薄い胸元にじっと視線を向けた。憎々しげに。
「その胸……まだ母乳は出ないのでしょう?」
「は、はい……もー」
 フィーナにキッと睨まれ、ミアは咄嗟にもーと鳴く。小刻みに震えながら。
「では、私が手伝いましょう……。まさか、嫌とは言わないわよね?」
「い、いえ、決してそのような……がっ! も、もー! もーもー!」
 いきなり顎を蹴り上げられ、ミアはまたももーと鳴く。口端から血が流れていた。
「もー。もー」
 鼻輪をつけられ鼻血を出し、口を切って血を流しながら、ミアは四つん這いで潤んだ瞳を向けて鳴き続ける。敬愛するフィーナに。
 ミアには信じられなかった。フィーナがどうしてこんな酷いことをするのか。
「もー。もー」
 だから必死に訴える。涙を流す瞳で。泣き声で。
 その必死の訴えを超然と聞き流し、フィーナはぱんぱんと手を叩いた。
すると、

 ぼんっ

 ミアの目の前の牧草から一本の太い枝が飛び出す。
「きゃあっ!」
 思わず目を閉じ、その場に丸まってしまうミア。
「大丈夫よ」
 クスクスと聞こえてくるフィーナの笑い声。
「この子はとても大人しいから」
 恐る恐る目を開けたミアは、やっぱり腰を抜かした。
「ヒ、ヒイイィィィ!」
 そこには未知の生物がでーんとそびえたっていた。幾本もの触手を持つ粘体生物である。



「な、なななな、なんですかそれは!?」
「もーでしょ?」
「も、もーもー!」
 こんな状況でも律儀にミアは返答してしまう。
 白っぽい触手を手に取ると、フィーナはすりすりと頬を寄せた。
「ふああぁ……」
 ミアはあらためてその触手生物を見上げる。
 表面は白っぽい。地球で見たイカという生物に似ていた。
 体長は横に立つフィーナの約二倍。三メートル中頃だろうか。形はこれまた地球で見たタコに似ている。ただし頭がない。
 色はイカで、形は頭がないタコ。ミアにはそんな感じに見えた。そしてうにょうにょと伸びる触手は全部で16本。イボイボの吸盤が付いている。
「どう? 気に入ったかしら」
 その触手の一本に腰を降ろし、持ち上げられながらフィーナが言う。触手の太さは大の男の腕程度。
フィーナを一本で軽々と持ち上げてる事から、見た目よりも力がありそうだった。
「な、なんでしょうかこれは? もーもー?」
 同じ質問を繰り返すミアに、フィーナは楽しそうに語りだす。説明したくてしょうがないように。
「これはね。ロストテクノロジーの一種なの」
 ロストテクノロジー。今をはるかに超えた古の技術。その技術で作られたものが今でもたまに見つかる事がある。
満弦崎中央連絡港市で見つかった軌道重力トランスポーターのように。
「安心して。兵器ではないわ」
 触手に腰掛けながら、四つん這いで震えるミアを優雅に見下ろし、フィーナは続ける。
「まあ兵器に使えなくもないけど。でも本来の役目は別」
 フィーナは牧草に満ちた牧場を見渡し、
「この子はね。ここで見つかったの」
「ここで? もーもー」
「ええ。草を育て、牛を育み、乳を搾り取る。この子はその機能を備えていたわ。
月を人の住める土地にするのに、この子もたくさん働いたのね」
 真空の不毛の大地を切り開いた祖先を想い、フィーナは遠い目をする。それこそ今では不可能なテクノロジーが必要だったのだろう。
「それでね。また働いてもらおうと思うの。私のために」
 ニィ、とフィーナの唇が大きく横に歪む。そして瞳に映る暗い炎がボッと燃え上がった。
「さあ触手さん。あなたが育てる牛さんはあの娘よ」
 にゅるーんと触手が伸びる。「きゃああぁぁぁっ!」と悲鳴を上げるミアに。
「立派な牛さんに育ててね」
 フィーナを主として認識し、その命令に従うようになっているのだろう。ミアと同じ様に。
 フィーナの座っている一本を除いて、触手が一斉にミアに襲い掛かる。
「イヤアアァァァーッ!!!」
 腰に触手が巻きつき、うつ伏せのままミアの小柄な体を宙に持ち上げる。
じたばたと手足をバタつかせるが、そこにも触手が巻きついて動きを止めた。
しかもまだまだ触手は余っている。
「きゃっー!」
 宙に持ち上げられて拘束され、目前に触手の吸盤が迫り、ミアはぎゅっと目を閉じた。
顔にぺたんとヌルッとした触手が張り付き、顔を吸う。
「ひいっ……! あ、あれ?」
 顔に貼りついた触手。鼻と口から出る血を吸い取り、さらに痛みまで消えていた。



「はわわ……」
 触手が顔から離れると、血だらけだったミアの顔はすっかり綺麗になっていた。
 牧場管理用触手。家畜の世話もばっちりです。痛めつけるなんてことはしない。
と、一本の触手がうにょうにょとミアの口まで伸び、細い先端がぱっと開く。
「きゃっ」
 それはあたかも男の人のちんちんのようで。その触手の先端がミアの唇をつんつんと突付く。
「えと……これ口に入れるんですか?」
 こくこくと縦に上下する触手。頷いてるように見えた。
「は、はい……どうぞ」
 素直に口を入れると、触手さんは優しく優しく口の中に先端を入れた。
(あっ……柔らかい)
 口の中に入った触手はストローのような感触で、嫌な感じはまるでしない。「んっ!」
 不意に先端からちゅるちゅると汁が流し込まれる。
「甘ーい……」
 まるでジュースのように甘い白濁液に、ミアはうっとりと頬を染めた。
 なんだろう。体がふわふわ軽くなって、お腹がきゅっと熱くなる。そして胸がジンと甘く痛んだ。
「はっ……あぁ…」
 無意識のうちにすりすりと太股が擦り合わさる。なんだか切なくなっちゃう。
「やだ……姫さまが見てるのに…」
 触手に腰かけたフィーナは、ミアの変化を見て取り、うっとりと美貌を和ませていた。
「さあ、ミアを立派な乳母にしてあげて。よく母乳が出るように」
 すぐに理解した触手さんは、ミアの薄い胸元へと先端を伸ばしていく。
「ふぁあっ?」
 ぼんやりした頭でミアはビクッと跳ねる。触手が服越しに胸をぺろっと撫でたのだ。
「だ、ダメですよぉ……。そこはぁ」
 触手は意外に器用にエプロンを外すと、メイド服のボタンを外して胸を空けさせる。
「だめっ……だめですってばぁ……」
 ジンジンと痺れる頭でミアは必死に呼びかける。だが触手はフィーナの命令でミアを家畜にすることしか考えていなかった。
母乳をたくさん生産する牛に調教することしか。
「はあぁぁ……」
 純白のブラジャーが外され、薄い乳房が直接外気に晒され、ミアの口から甘く嬌声が漏れる。
ピンクの乳首がもう痛いほどに勃起していた。
「はあっ!?」
 ミアの背筋がビクッと仰け反り、極度に硬直した。
 スカートの中まで触手が伸び、パンツをずり下ろしたのだ。脱がしたパンツとブラジャーを丁寧に畳み、割れ目に触手を這わせ、ちゅーと吸盤で吸う。
「ヒイイィィィィっ! あはああっっ!!」
 電流を直接脳に流されたような刺激に、ミアは宙ぶらりんのままガクガクと腰を振って飛び跳ねた。
「い、イヤアアァッ! やめて、やめてくださいぃぃぃっ! こんな、こんなの強すぎますううぅっ!!!」
 いきなりの凄まじい刺激に泣き叫びながらも、なお腰を振るのは止められなかった。
「ヒイィッ!」
 ミアの股間からじゅーと黄色い液体が漏れた.
「あらあら。粗相をしてしまったのね」



 おしっこの流れる太股にすぐさま触手が貼り付き、同じくちゅーと吸い取る。
さらに尿道に直接吸盤が貼り付き、ちゅーと出る側からおしっこを吸い取る。
「はううんっ!? はわわわっ!!?」」
 鼻にかかった甘い声。ミアはおしっこを吸われ、恥ずかしさで紅くなり、それ以外の何かで腰をくねらせた。
「だ、ダメ……ダメーッ!?」
 嫌々と頭を振り、短い黒髪が揺れ、涙が乱れ飛んだ。
その間にも触手はおしっこを全て吸い取ってしまう。
 触手さんは糞尿の処理も完璧。こうして吸収した家畜の糞尿を栄養に変えてしまうのです。
何と合理的なシステムか。
「う、うう……」
 ポロポロとこぼれる涙。そこにも触手が伸びてきて、ぺろっと涙を吸い取る。
「ふえっ?」
 それは単なる命令通りの行動なのだが。ミアには触手さんが自分を慰めてくれているように感じられた。
「う、うう……もう許してください…」
 一縷の望みを込めて訴える。だがまだ始まったばかりだ。
「ふえっ!?」
 薄いミアの乳房を包み込むように触手が一本ずつ包む。デコボコの吸盤がなんだかむず痒い。
「はわっ! はわわーっ!?」
 むず痒くで済んだのも一瞬。触手は吸盤で乳房を吸引し、外に引っ張ろうとした。
「ひ、ヒイッ! いたい、痛いですぅ!」
 胸が千切れるかのような激痛にミアは、信じられない思いだった。痛いことはしないと思っていただけに。
「があああっ……んぅ!?」
 悲鳴を上げ続ける口に触手が押し込まれ、
「んんぅ!」
 そして股間を愛撫していた触手も、肉ヒダを分け入って膣内に侵入してくる。
「んんーぅ!」
 上下で触手を受け入れ、ミアはピンと背筋を伸ばし、そして硬直した。
口と秘肉に侵入した先端から、ドバッと白濁液が放射される。
「んっ!」
 ドクドクと熱い液体が喉を流れ、飲み切れない液が口端からこぼれた。そして膣内にもドクドクと熱い液体が溢れ、ミアの股間を今度は愛液が伝う。一気に潮を吹いたのだ。
「はぁ……あぁ……」
 口から触手が引き抜かれると、ミアはうっとりと熱い吐息を吐いた。相変わらず胸は吸われ、引っ張られている。
しかし痛みはもうない。いや痛みは感じるが、それが甘美なものに感じられた。
引っ張られるごとに感じるジンと甘い痛みに歓喜が走る。
「あ、あああっ……」
 そして膣に挿入された触手はまだそのままに、ミアの膣道を擦り上げていた。
「ああぁ……アアぁ……はうっ!」
 胎内の触手に合わせてミアも腰を振っていた。
 ミアに注がれた液体には、栄養剤と媚薬、そして母乳促進剤が含まれている。
これも家畜を育てる触手に必須の能力。
「あ、ああぁ……はああっ!?」
 腰をくねらせ、じんじんと痺れる官能がミアから思考を奪っていく。
「ああぁ……はああっ……」
 口から漏れる涎もすぐに触手が拭き取ってくれた。びっしりとかいた汗も服の内側に潜り込んだ触手が吸い取っていく。
「あァ……はあっ……」
 熱い吐息。霞んだ瞳に映るのはこちらをじっと見下ろすフィーナ。



 その唇が言葉を結ぶ。
「大好きよ。ミア」
「はあああーっ!」
 ドクンっ、と心臓が大きく跳ね、触手が胸を限界まで引っ張り、そして離した。
真っ赤に腫れた乳房から、ぴゅっと白い液が飛ぶ。ミアの初めての母乳。この短時間の間に、母乳が出るように体質を変えられていた。
「ああ……アがアーッ!」
 同時。膣がぎゅっと絞まり、驚いたように触手が白濁液を放ち、すぽっと割れ目から抜け出す。
そして漏れ出る愛液をずずっと啜っていた。
「ああぁ……はあぁ、あ……」
 泡を吹くミアを、触手は優しく抱いて地面に横たえた。牧草の上に。
 霞んだ視界に何本もの触手が蠢いている。その向こうには青い地球。
「頑張ったわね。ミア」
 同じく触手から降りたフィーナが、ミアの側に立つ。そっと手袋を付けた指を伸ばし、ぴんっと尖った乳首を弾いた。
「あっ……」
 歪に膨らんだ乳房にはさっき出たばかりの母乳が残っている。それを指でス掬うと一口舐めた。
「ん……良い味だわ。私の子の乳母として申し分ないわね」
「あ、ありがとうございます……もーもー」
 茫然自失となりながらもミアも笑顔を浮かべる。大好きな主人に褒められる。
こんな嬉しい事はない。
「それじゃあ、後は任せたわ」
 にょろにょろと折れ曲がる触手(頭を下げている?)に背を向け、フィーナは牧場から去っていった。
その口元はうっすらと微笑んでいる。
「思った以上に上手くいったわ……」
 でも。何だろう? この胸にぽっかり穴が開いたような寂しさは。
「姫……さま……」
 ミアの掠れた声に振り向くことなく、フィーナは牧場を後にした。

 フィーナの長い銀髪の後る姿を見送りながら、ミアはすっと目を閉じた。
 疲れて眠ったのだろうか。これ以上の調教は無理と判断し、触手は眠ったミアを優しく抱き上げ、牛舎へと運んだ。
そして藁のベッドに寝かせると、汗で濡れたメイド服を器用に脱がせ、自身の巨体で包んでやる。
 密着してると体温管理ができ、しかも体まで綺麗にしてやれる。家畜の飼育係として完璧なまでに優秀だった。
 触手に抱かれ、すやすやと眠るミア。彼女が触手さんと仲良くなるのにそう時間は掛からなかった。

「うん……きゃああっ!」
 目覚めるとミアはまず巨大な触手さんに驚いた。でもすぐに落ち着く。
「お、おはようございます」
 返事をするように触手ははもごもごと折り曲がる。挨拶のつもりらしい。
「ふふ……。何だか可愛いです」
 触手がうにょうにょとメイド服を差し出す。そこでミアは自分が裸ということに気が付いた。身に付けているのは鼻輪のみ。
触手と一緒だと全く寒くなく、気付かなかったのだ。
「あ、ありがとうございます……。いえ、一人で着れますから」
 着替えを手伝おうとする触手に丁寧に断り、ミアは一人でメイド服を着た。下着はない。
すると触手は何だか寂しそうに萎れていた。やっぱり可愛い。
「あ、あの。これでいいんですか?」



 メイド服は昨日まで着ていたものとほとんど同じだった。ただ一つ異なるのは胸が大きく開いている点。
大きく膨らんだ乳房が丸見えになってしまいます。
「なんだか……変です」
 自分の大きな胸を見下ろし、たぷんたぷんと揺らし、ミアは複雑な表情をした。
大きな胸に憧れたこともあったが、いざこうして巨乳になってみると、小さな体躯とのアンバランスばかりが目立つ。
 にゅるっと触手が伸び、その胸をぺろっと持ち上げた。
「きゃっ!? も、もう……」
 慌てて紅い顔で胸を隠すミア。だが触手は家畜の健康状態を診ただけだ。
 今度はミアの口元に触手が伸び、先端が開く。中には白濁液が溜まっていた。
ミルクのような良い匂いがする。
実際、良いミルクを出すしてもらう為の餌だ。
「これ……飲むんですか?」
 こくこくと別の触手が上下に揺れる。
「んっ……」
 思い切って一口飲んでみると、体の芯からほわっと暖まる。
「甘ーい」
 ふわふわと浮かぶような良い気持ちになって、ミアは触手の与えてくれるミルクをちゅーと飲んでいった。
その度にジクジクと胸が熱くなり、お腹の奥が疼いてくる。
「ふわぁ……」
 ようやく口を離したミアは頬を紅く染め、涎を垂らしていた。ぽかんと開いた口からこぼれる涎を素早く拭いて、触手はミアを抱えて外に連れ出す。
家畜には運動も必要だ。
「わーい」
 触手に高い高いしてもらってミアは満面に笑顔を浮かべて、両手を広げていた。
触手の大きさは3メートルほど。いつもより遙かに高い視界に空を飛んでるような気分になってくる。
「わーい。わーい」
「ふふ。ご機嫌ねミア」
「あっ、姫さま」
 触手に降ろしてもらうと、フィーナが待っていた。
「おはようございます姫さま」
 返事の代わりに飛んできたのは平手打ち。
「はうっ!?」
 パチンと叩かれた頬が赤く染まり、ミアは牧草に倒れ込んだ。
「駄目でしょう、牛が人間の言葉を喋っては」
「は、はい……。もー。もー」
 慌てて四つん這いになり、ミアはもーと鳴く。口元からは血がこぼれていた。
すぐに触手が伸びてきて、血を拭き取る。痛みも引いた。
「もー。もー」
 すりすりと頬を寄せ、ミアは触手にお礼を述べた。もう怖くはない。
「あらあら。すっかり仲良しね」
「もー。もー」
「それじゃあ、今日の成果を見せてもらいましょうか」
 ミアには何の事か分からなかったが、触手は手早く動いた。
 四つん這いになるミアの胸の下に瓶を置く。牛乳瓶。そして乳房をぎゅっと捻った。
「はううぅんっ!?」
 顔を上げてミアが喘ぐと、乳房からじゅーと飛び出した母乳がたちまち牛乳瓶に溜まっていく。
「はああっ、あああぁっ……!」
 触手に乳を搾られながら、ミアはただ官能によじり、そして達した。



「はぁ…・・・・アアアーッ!」
 横に倒れ、ビクンと振動するミア。母乳が溜まった瓶を器用に包み、触手は恭しくフィーナに差し出す。
「ありがとう」
 腰に手を当て一気飲み。フィーナはふーと息を吐いて牛乳瓶を触手に返し、
「美味しかったわミア」
「も、もー」
 ハァハァと息を整えながらも、ミアの顔に喜びが浮かぶ。フィーナに喜んでもらえたのだから。
 ミアの様子を見るとフィーナはすぐに去り、また触手さんと二人きりになった。
 うにょうにょと蠢いてミアの周囲を回る触手。何故だか励ましているようにミアには感じられた。
「えへへ。ちょっと寂しいけど。姫さまのお役に立てるなら嬉しいです」
 言うと、四つん這いになってミアは「もー。もー」と鳴く。楽しそうに。その頭を触手はよしよしと撫でてやった。
「もー。もー」
 牛になったメイドのミアと、世話をする触手さん。だがその生活も長くは続かなかった。

 数日後。フィーナは唐突に地球に向かった。
「待っててねミア。お友達を連れてくるから」
 そのフィーナの言葉はよく分からないが、一緒に牧場で暮らすお友達が増えなら嬉しかった。
今は触手さんしかいないから。だがその触手さんも連れて行かれる。
 フィーナが地球に出発した日の夜。夜空には青い地球が輝き、明るく牧場を照らしていた。
その牧場を横切る黒い影が一つ。
 ミアはいつものように牛舎で触手さんに包まれて寝ている。こうして寝るとぐっすりと安眠でき、しかも体の汚れまで取ってくれる。
「もー。もー」
 寝言まで牛の鳴き声が定着してしまった。
 そんなミアと触手は無言で見つめる。
 触手には侵入者発見用に各種センサーが搭載している。寝ている今もセンサーは働いているが、人影には気付かない。
「……起きろ」
 人影が不本意そうに声をかける。触手まで起きるが、このままではミアも巻き込んでしまう。
「ふぁぁ……?」
 目を開けたミアは側に立つ小柄な人物に目を向ける。そしてすぐに覚醒した。
「あ、リースさん。こんばんわ。もーもー」
「ワタシには普通の言葉でいい」
 ミアよりも小さい金髪の少女が応える。黒を基調とした動き易そうな衣装を着ていた。
 背後の地球の輝きと相まって、まるで妖精のようにミアには見えた。
「どうしたんですか? こんな所まで?」
 鼻輪をかちゃかちゃと鳴らしながら、ミアが呑気に言う。今は裸。寝る時はいつも裸が習慣になっていた。
リースを前にしても羞恥心はほとんどない。もう感覚が麻痺しているのか。
「ワタシの役目はひとつ」
 起き上がり、そびえたつ触手をリースは見上げる。厳しい眼差しで。
「ロストテクノロジーの回収」
 ぶん、と触手がその先端を振るう。リースはさっと飛び退き、外に出た。
「きゃっ!」
 いきなりの事に叫ぶミア。触手は巨体に不釣合いな俊敏な動きで、リースの後を追う。



 リースを侵入者として排除しようとする触手。牧草の上で地球の光を浴びて立ち尽くすリースの周囲に触手を伸ばし、ぐるんと囲む。
そうして四方を囲み、吸盤を向けて一斉に距離を縮めた。あとは触手で絡んで、捕らえるだけ。なんならミアと同じく家畜にしてもいい。
「はっ!」
 リースはぱっと上方に飛んで触手の包囲から抜け出す。触手よりもさらに高くリースは飛んでいた。
まるで背中に羽が付いているように自在に宙を舞う。
 そして触手の真上を取ると、手を向け、
「その『たん』禁止!」
 リースの手からぴかっと放たれた電撃が、触手の全身をビビビッと駆け巡る。
効果は抜群だ!
 ドシーンと触手が倒れると、つかつかとリ−スが歩み寄る。
「リ、リースさん!?」
 その時、ようやくミアが外に出てきた。メイド服を着ていたので手間取ったらしい。
外に出るときはメイド服を着るぐらいの常識は残っているようだ。もっとも胸が丸出しなのはもう気にしなくなったが。
「……ロストテクノロシーは全て回収する」
 痙攣する触手にモンスターボールを向け、カチッとスイッチを入れると、触手の巨体はその中に収まっていった。
触手ゲット!
「あ、ああ……」
 触手が回収されたのを見て、ミアはへなへなと崩れ落ちる。何も出来ない自分が悔しかった。
いや。何か出来たとしても、リースを傷付けるような事は出来ない。
 任務を終えたリースは今度はつかつかとミアに歩み寄る。
「ここから……逃げたいか?」
 そして唐突に聞いてきた。思いもかけないことを。
「え?」
「逃げたいなら逃がしてやる」
 ハッと気付き、ミアは鼻の鼻輪に手をかけた。ここから逃げるのなら、これを外せる。

 フィーナに逆らい、ここから逃げて人として生きるか。
 フィーナに従い、このままここで牛さんとして生きるか。

「わたし……わたしは」
 鼻輪に手を置いて考える。これを外すかどうか。
「わたしは……フィーナ様の従者です」
 ここに残る。ミアはフィーナの乳母という名の牛として生きる意志をはっきりと伝えた。
「そうか」とだけリースは言った。
 ミアが決めたことなら他人が口を出す事ではない。それにリース自身も任務に縛られているから。
 夜空に輝く地球を見上げ、リースは呟く。
「フィーナは……地球か」
 放置はできない。今のフィーナは何をするか検討もつかない。
「さようなら」
 鼻輪をかけたミアに別れを告げ、リースは姿を消した。
「リースさん……」
 消えたリースにミアは頭を下げる。
 どうか姫さまをお願いします。
 そしてミアは四つん這いになると地球に向かって鳴いた。
「もー」

(つづく)