7-293 名前: ハッピーウェディング!? (にられば) [sage] 投稿日: 2007/06/22(金) 01:58:01 ID:3IuZRzNq

盛大な結婚披露宴から数日が過ぎた。
これから達哉とフィーナは新婚旅行に向かう為、宇宙船に乗り込んでいた。
定期航路の連絡船ではなく、チャーターしたものだ。
宇宙船がふわっと浮き上がるとゆっくりと月面から離れていく。
行き先は無論、地球。
満弦ヶ崎中央連絡港に降り立ち、地球の主要国へ訪問する。
およそ1月の旅になる。
新婚旅行といいつつもプライベートな時間は殆ど無い。

月の重力圏を抜けると目の前に澄みわたった水色の地球が目の前に広がる。
「姫様、達哉様、もう直ぐですね」
二人に近侍するミアが言う。
「ミア、その様付けは止めてくれないかな」
「もう、いい加減に慣れてください。唯でさえ、達哉様は爵位の授与を
お持ちでないのですから………」
達哉には次期国家元首の伴侶として爵位を授与される話があったのだが、
本人がこれを固く固辞した。
調度、爵位に一つの空きがあったのでフィーナも一応、勧めてはみた。
貴族が存在する身分制社会では爵位が無いと発言権は極めて低い。
例えそれが国家元首の伴侶であっても………
確かに箔付けが必要だったのかもしれない。
一応、貴族達は表面上穏やかではあるが達哉を種馬と見ている者が存在
するのは仕方の無い事だ。
だが達哉は爵位を得る事で貴族からの反発や妬みを抱かれると思い熟慮
の結果、これを断ったのだ。
自分はフィーナの黒子たらんとして、その後も達哉は生涯、表向きに政治の話はしなかった。
秘書の様に甲斐甲斐しく彼女を影に日向にサポートしたという。
因みに達哉が授与を固く拒んだとされるのはエディンバラ公爵という爵位だったとされている。

そうしている間にも地球が大きく目の前に広がっていく。
大気圏突入の為、皆が座席に着きシートベルトを締める。
「久しぶりね」
「そうだね………」
やはり、心が逸る達哉。
久しぶりの故郷なのだ。
フィーナと契りを交わした八年前のあの日、帰ることが叶わないとさえ考えた地球に帰れるのだ。
そして、遂に着陸。
フィーナとタラップを降りていく。
「御苦労様です」
待ち受けていたカレンが出迎える。
各国訪問の準備の為に先行して地球に上がっていたのだ。
「これからの御予定ですが、この後、大使館内での各国大使を招いての晩餐会があり………」
淡々と予定を説明するカレン。



全ての予定を終えた二人。
裸で寝室のベッドの上で寄り添って横になっていた。
フィーナは達哉の胸の中に顔を埋めている。
そして先程の晩餐会を回想する。
「フィーナもよくあれだけの言葉を覚えれたね」
「達哉のお陰よ」
実は二人共、これから訪問する国の言葉を話せるようにレッスンを受けていたのだ。
各国大使にちゃんと相手の母国語で会話していたのだ。
当の達哉は日本語と英語でのみ、会話していた。
「英語とドイツ語はなんとかだけど………フランス語は殆どさっぱりだよ」
そう言いながらフィーナの長く美しい髪を梳いている。
「じゃあ、これからレッスンしないと………」
フィーナは体を起こして達哉を見下ろしながら、笑顔で言った。
その一言で達哉の理性は一瞬で蕩けた。
「Je t'aime.(ジュテーム)」
そう呟いた唇が夜の闇の中、達哉の唇を塞いだ。