SS投稿スレッド@エロネギ板 #11
196 名前: 夜明け前より瑠璃色なSS『お酒は禁物!?』(1/6) [sage] 投稿日: 2006/11/30(木) 09:04:01 ID:+p131Tss0

8月下旬のある日。
懸案の王立博物館の展示会も無事終わり、片付けや後始末も一段落したので、
今日は左門で久しぶりにみんな揃っての夕食会にしよう、ということになった。

夏いっぱいで月へ戻ってしまうフィーナやミアとの一緒に食事をできる貴重な時間でもある。
俺自身、準備に参加するつもりだったが、なぜか菜月から「7時になるまで来ちゃダメ」と
釘をさされてしまった。

姉さん、フィーナ、ミアは博物館に行っていたので今、家にいるのは俺と麻衣の2人きり。
「ふ〜ん、来ちゃダメって言われてるんだ」
俺の隣に座っている麻衣がちょっと難しそうな顔で考え込んでいた。
「え、お兄ちゃん?何でこっちをじっと見てるの?」
気がつくと、俺は麻衣の顔をじっと見ていた。
「うん、考え込んでる麻衣の顔も悪くないなって、ね」
夏の麻衣とのあの出来事以来、俺はすっかり麻衣に魅了されてしまった。
麻衣の一挙一動全てが可愛らしく見えてしまう。恋は盲目ってやつかな?
「もう…/// 恥ずかしくなるからやめてよ…」
「はは、ますます可愛くなった」
「うう…ほ、ほら話を戻すよ。さっきの話の続きなんだけど…」
あんまりイジめるのも麻衣がかわいそうなのでこの辺で切り上げておくか。
「それって、サプライズパーティーみたいだよね」
「でも、サプライズされるのはパーティーの主賓のはずだろ?
今日は姉さんの慰労会も兼ねてるんだから、主役は姉さんのはずなんだけど…」
「それじゃ、わたしたちが主役ってことなのかな?」
そう言われると何か嫌な予感がした。



7時になった。姉さんたちはまだ帰ってこない。どうしよう、と2人で悩んでいると
携帯電話のバイブが振動した。菜月からのメールだった。
「さやかさんたちを含めてみんな来てるよ。準備も完了したから早く来てね」
微妙に解説チックな文章。
「そうなんだ。もうみんな来てるんだ」
メールを見せると麻衣も少しばかり訝った。何かあると思いつつも2人で左門に向かう。

左門はこれまたなぜか真っ暗で中が見えなかった。
「お兄ちゃん、不気味な感じがするよ」
そう言って腕に絡み付いてくる。もう店の前まで来てしまった。引き返すのも後味が悪い。
「早く入ってきて」
またメールが来た。こうなったら行くしかない。
「よ、よし行くぞ」
麻衣を半ば引っ張るようにして中へ入っていくと…



ピカッ
パァ〜ン!
中の照明がついたと思う間もなく、クラッカーの音が鳴り響く。
「2人とも、カップル公認おめでと〜!」
クラッカーを片手に、菜月が声をかけてきた。いや、菜月だけじゃなく
みんなが勢ぞろいして俺たちを迎えてくれていた。しかもカレンさんまで…
「で、これってどういうことですか?」
「決まってるでしょ。あんたたちが公認カップルになったんだから、そのお祝いよ」
菜月が楽しそうに答える。首謀者はコイツだな。
「結婚…おめでとう…お幸せに…」
リースまで来ていた。しかも微妙に勘違いしてるぞ。
「はぅぅぅ…恥ずかしいよぅ…」
すっかり顔を真っ赤にした麻衣が俺の背中で小さくなっている。
「あらぁ、恋人同士になるんだったら、これくらいのことは覚悟しなきゃ。
そんなことも考えないで付き合ってたのかな〜?」
菜月は俺たちをイジめる気満々だ。
こうして、ある意味、悪夢のような夕食が始まった…



30分後…
夕食会のはずが、祝い酒としてビールが出てきて、そこから恐ろしい方向へと進みだした。
食事の最中はまだ大丈夫だったのに、どうやら食後になってアルコールが回ってきたらしい。
「でさぁ、2人ともすごいのよ」
お酒の入った菜月が話を明らかにアブナイ方向へと持っていっていた。
とはいえ、おやっさんと仁さんが後始末に厨房へ戻っていったのを見て切り出すなど
微妙に心配りを忘れていない。
「私の部屋って達哉のと隣みたいなもんでしょ。だからさぁ、聞こえちゃうのよね〜」
「…///」
何のことかすぐに分かった俺と麻衣は二人して真っ赤になる。
「お、お願いだから止めてくれ」
「だ〜め。確か1週間くらい前のことかしらねぇ。達哉の部屋のカーテンが少し開いてたから、
声をかけようとしたら、何と二人が抱き合ってたのよ。それでね、こうやって…」
ま、待てよ。その先って…
菜月がどこからともなく、バナナを取り出すとじっとそれを見つめる。
『お兄ちゃんの…おっきい…』
『麻衣のそういう顔もすごく可愛いよ』
あの時の麻衣と俺の声を忠実に再現している。
「わぁーっ、わぁーっ!」
何とか妨害しようとするも間に合わない。
「全くアツアツよねぇ。困ったものだわ」
姉さんは酔いながらも、そっち系の話題にはあまり触れないでくれている。本当にありがとう。
「それが男女の営みというのね。随分と激しそう」
お酒が入っているせいか、フィーナは対照的に興味津々といった様子だ。
頼む、酔いが覚めるとともに忘れて欲しい。
「??男の人の何を舐めてるんでしょうか?…ってええっそんなのを舐めるんですかぁ?」
ミアはまだそういったことの知識がないらしい。リースも何だか分からないといった表情。助かった。
「ふむふむ、そのようにすると男性に喜んでもらえるのですね」
カレンさんはこの聴衆の中で一番熱心に聴いていた。うわ、メモまでとってるよ。
お酒が入ると人はここまで変わってしまうものなのだろうか。



一方、麻衣はというと…
お酒はほとんど飲んでいないが顔を俯けたまま、動こうとしない。何とかしてあげたいんだけど…
「ほら、麻衣。あなたも飲みなさい。主役がしょぼんとしてるとつまらないぞ〜」
「ちょ、ちょっと待ってよ〜」
麻衣の制止も聞かず、余っていたビールを麻衣のコップに入れる。
「お、おい」
「まぁまぁ、達哉くん。女の子はこうやってお酒に強くなっていくものなのよ〜」
姉さんが俺に絡みついて、俺の動きを阻止した。
「う、うぃ〜〜」
菜月の強気に押され、飲んでしまったたしい。あ、二杯目まで…
「達哉も飲みなさいよ〜」
菜月がこちらにやってきた。強引にビールを注がれ、飲まされる羽目になる。
「飲まないと。もっと話を続けるぞ〜」
飲むしかない。何とか飲み干すと二杯目、そして三杯目まで来た。
「ほらほら、麻衣は二杯飲んだんだから達哉はその倍は飲みなさいよ〜」
もうダメだ。こっちの意識が飛ぶまで飲まされるだろう…と絶望していると。
「こらぁ〜〜菜月ちゃん、何してるの〜」
真っ赤な顔にしかめっ面の麻衣が、こちらに割り込んできた。
「お兄ちゃんに手を出しちゃ、だ〜め〜」
「あ〜、麻衣ったらヤキモチ妬いてる〜。かわいい〜」
全くその通りだ。酔っ払ってしかもヤキモチまで妬いてくれてる麻衣は可愛いぞ。
菜月と麻衣が乱闘(?)を始めたスキを突いて姉さんが隣にやってきた。
「そういえば、達哉くんと飲んだことってなかったわよねぇ〜」
姉さんがこちらに身体を預けてくる。何だかすごく色っぽい。ドキドキしてきた。
「あ〜っ、お姉ちゃんまで〜!お兄ちゃんも嬉しそうな顔しないの!」
姉さんの身体を強引に引き離そうとする。
「もう〜、私たち家族なんだからこのくらいいいじゃな〜い?」
姉さん、性格が豹変してるよ。
「でもこういうのが認められるのは恋人同士だけなんだからぁ〜」
もうどうしようもないな。酔いが覚めるのを待つしかない…



こうして、地球側女性陣がすっかり酔っ払っている様子を、フィーナ、ミア、カレンら
月側女性陣は苦笑しながら見ている。リースは初めてのお酒で寝てしまったみたいだ。
1時間後、男性陣と月側女性陣が協力して、眠り込んでしまった女性陣と会場の後片付けを行い、
ようやくお開きになった。

その後、俺が夜は必ず、部屋の窓とカーテンをきっちり閉めるようになったのはいうまでも無い。
(続く?)